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ボールロストマップで見る2020/21大学ラグビー<4>:慶応大学

 「ボールロストマップで振り返る20/21大学ラグビー」、今日は慶応大学。実は慶応対筑波のマップを作っていなかったことに火曜日に気づき、今日時間ができたので作ろうと思ったらなんとJSPORTSでの配信期間が終わっていたという落ち(笑)・・・・・。

 あの試合はちゃんと振り返りたかったのだが。

 ということで対抗戦での慶明戦と早慶戦、それと大学選手権準々決勝での早稲田戦を見てみる。本当は帝京戦も面白いと思うのだが、レビューを書くのは見に行った試合だけと決めているのと、ちゃんと見た試合でないとボールロストマップの評価は難しいと思うので加えないことにしました。

 昨年大学選手権出場を逃し、捲土重来を期した今年。最初の筑波戦で躓いたものの、慶明戦で大方の予想を覆して競り勝ったのが大きかった。早稲田には敗れたものの帝京にも接戦の末勝利。大学選手権での早稲田との再戦で再度苦汁を飲まされたものの、帝京、明治に勝利したという意味では成功したシーズンだったと言える。

慶応のベストゲームは慶明戦か

 まずは慶明戦。おそらく慶応の今季ベストゲームだろう。

(略語の説明= DT:ダイレクトタッチ、DO:ドロップアウト、EE:アーリーエンゲージ、HP:ハイパントでのボールロスト、KO:ノックオン、LO:ラインアウト、MUP:モールアンプレイアブル、NR:ノット・リリース・ザ・ボール、NS:ノットストレート、OS:オフサイド、OT:オーバー・ザ・トップ、SP:ショートパントでのボールロスト、TF:スローフォワード、TO:ラックでのターンオーバー)

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 ハイパントでは、相手にボールをキャッチされたもののタッチに蹴り出させたとか、プレッシャーをかけてノット・リリース・ザ・ボールを取った場合はボールロストには入れていない(以下の2試合も同じ)。

 この試合、合計ボールロストは17でやや多い。ただし明治はなんと22回に達するので、これでも慶応の方が少ない。

 際立つのは、自陣でのボールロスト、わずかに2回。このことが明治に得点を与えなかったことの大きな理由だろう。敵陣10mラインと22mラインの間でのボールロストが8回、22mラインを越えてからのボールロストが5回という多さから、慶応も得点機を逃していることがわかる。

 これをみると、この試合が13-12というロースコアの競り合いになった理由がよくわかる。なお、慶応は敵陣22mラインを越えてからもフォワードでのサイド攻撃に固執する傾向があり、そのことがボールロストの多さに結びついている。

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敗れた早稲田との2試合

 では11月の対抗戦での早慶戦はどうか。22-11で早稲田の勝利。

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 この試合もボールロストは18回で多い。特に敵陣22mラインを越えてから7回というのは際立つ。この試合でもまた、5mを越えてからのノット・リリース・ザ・ボールが3回あり、最後までフォワードでゲインしようとする慶応の傾向が現れている。

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 自陣でも6回ボールを失っているものの、22mラインより内側ではボールを失っていない。

 大学選手権準々決勝ではどうか。29-14で早稲田の勝利。

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 これも17回で多い方だ。この試合のボールロストの特徴は、中盤でのリップ2回とインターセプト1回、ラックターンオーバー1回からわかるように、フィールドプレー中にボールを奪われることが多かったことだ。その分、攻撃が寸断されていたということでもある。なお、この試合でも22mラインより内側ではボールを失っていない。

3試合に共通する特徴

 この3試合を比べてみたときの特徴は、自陣22mラインより内側でのボールロストがゼロであること。3試合でゼロというのは凄い。これは危険なエリアでマイボールを取れた場合には、上手くキックでテリトリーを取っていたということだろう。

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 一方、敵陣22mラインより向こう側でのボールロストの多さが目に付く。これも、フォワードを突っ込ませるという、今年の慶応の攻撃パターンの傾向によるものだろう。

まとめ:キック戦術は大学随一

 今年の慶応の特徴はキック戦術。巧妙にテリトリーを稼ぐ試合運びで対戦相手を悩ませた。

 足りなかったのは点を取るオプション。バックスで点を取るときはアドバンテージをもらった後でボールを回すときだけというのが基本で、ファーストオプションはフォワードでゲインを稼いで最後にインゴールに飛び込もうとするものだった。このことはマップでも裏付けられている。

 慶応の最後の試合となった大学選手権準々決勝のスタメンでの4年生は7人。来年は全く違うチームになる。高度なキック戦術に加えて攻撃オプションを加えることができるか、そこが来年の慶応の課題になる。