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2015年9月28日 03:49
図書館から借りてきた料理の本の、右のページばかりにメモの跡が残っている。 私は夕日の差す部屋に煌々と明かりをともし、それを照り返すまっさらな食卓へ、とりとめもないひとりごとを並べていた。その片手間に、ぼんやりめくっていて見つけた。 薄い本の数ページにくっきり写った筆跡は、すべて同じ手によるもののようだった。大きく余白をとった美しい字で、生真面目で優しかった友人のものによく似ていた。 しょ
2015年9月21日 18:18
人通りのある場所に立つその子どもの画用紙には水がいっぱいに吸わせてあって、会うひと会うひとにせがんで置いてもらったどんな色も、置いてもらうそばからたちまち滲んでしまった。 買い物中の女性が隅の方にくれた青緑はじわじわ形を変えながら中央の淡い橙色へにじり寄っていき(それはバス停で老人にもらった色だった)、駅員がハサミを入れた切符のついでにくれた灰がかった赤い色は、滑るように薄く伸びた先で制服の少