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"君"とは… Episode 1

新学期が始まって約2週間。

今日はクラスで遠足。

うちの高校は新クラスの親睦を深めるべく、遠足でバーベキューをする。

全員、行く場所は同じなのだが、クラスごとに分かれて活動する。

空き時間にふと井上と会った。




井上:どうなのクラスは?過ごしやすい?




こんなにもクラスを気にかけてくれるのは、去年のせいだ。

先生にもクラスメイトにも恵まれなかったので、居場所を失っていた。

…もっとも、クラスが離れた喪失感もあった。

7クラスあるうち、3組までが文系。井上も文系だ。

1年は文理共通なので、確率で言うと2年以降の方が一緒になれた…はず。




●●:去年よりは全然。楽しいから大丈夫。

井上:そっか。●●、私とは絶対に違うクラスだと思ってた。でも咲月ともなんて…。今度は私の方が居場所がないかもね。

●●:2組は他にいるでしょ。中西とか。

井上:あの頃のアルノとはもう違うからなぁ。自分の利益ばっか。

●●:…そっか。まあ俺が1で井上が2、菅原が3だし、全員違うから逆にいいんじゃない?笑

井上:何それ笑 まあ、特に別に変わらないかな。呼ばれたし、じゃあまた👋



菅原咲月。

井上と同じ部活でお互いが全てを曝け出せる唯一の相手…らしい。

遠慮なく言いたい放題な現場もよく目にする。自分とも仲が良い。

自分も菅原も、お互いが井上に"依存"していることを知っていて、よく会話を交わす。




中西アルノ。

かつて付き合っていた人。

井上とよく一緒にいたが、最近距離を置いているらしい。中西は気にしていないらしいが。

自分はその一件以降、会話を交わしていない。

君の周りには君を必要としている人がたくさんいる。

だからこそ…何も動けないんだ。



川﨑:やっほー。元気してる?

●●:うるさいな〜笑。洗ってるの。うちのメンバーが誰もしないから。

川﨑:ごめんって笑 さすが"元"会長さん。それよりさ、クラスレクどうするの?

●●:レク担当は山口だから、そっちに聞いてほしい。あー、あともう30分ぐらいしたら片付け完了させないといけないってみんなに伝えといて。

川﨑:さすが学級委員。了解!じゃあまたあとで!


2年のとき、何かの間違いで生徒会長になった。

生徒会に参加していた自分にとっては、当時会長だった先輩に「しないか?」と言われたのが大きかった。

川﨑桜・山口郁也は生徒会の時のメンバー。

いくらクラスが良くても、レクなんて本当はしたくない。自由時間でいい。

その方が自分は都合がいい。


遠足は思ったよりあっという間だった。

クラスに恵まれたということの証明なのか。

帰りのバスで、ふとスマホのカレンダーを見るとGWというものが大きく見えた。

あと1週間。

1日だけ元生徒会の数人でカラオケに行く予定は入っていた。

それ以外に特に予定はない。

何かあれば幸せだなと憐れな期待してしまう。




ーーー




そして迎えたGW。
結局のところ、この1週間は特段何もなかった。

期待し過ぎると疲れてしまう…とあれだけ身を持って感じたはずなのに。

また…期待してしまう自分には形容しがたい失望を感じた。


GWの学校からの解放は、同じくして孤独を意味する。

そして、君の存在も消えてしまうがため、逆説的に君を忘れることができる…という意味も含む。

相反する現実は心を眩ませる。


2日目ともなると平常、あれだけ騒がしいとも思われる賑やかさは完全に忘れさられ、孤独はやがて心を憂鬱で支配していく。



そんな時だった。LINEの通知がなる。




井L:突然ごめん、今日空いてる?




ああ、本当に君は天使であり、悪魔だ。




●L:空いてるけど、どうした?




すぐに返事を送ってしまった。

まるで逸る心を写すが如く。

君は何を考えているのか?

そう思う間もなく、僕は着替え始めてしまった。

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