"君"とは… Final Episode
迎えた卒業式。
山口:〇〇、大丈夫か?笑
●●:人生で1番緊張してる。
川﨑:●●がそんなこと言うなんて珍しいね笑。
●●:あ〜…なんか動いてないとやってられない笑。
池田:●●が変な人になってる。
担任:お〜い、みんな準備はできてるか?
クラスメイト達:(口々に)はい!
担任:高校生、最後の大舞台だからな。先生も名前呼ぶ時に噛まないように気をつけるからな笑。
山口:それだけはやめてくださいね笑。
担任:もちろん笑。よし、じゃあ廊下に並ぼうか。●●、頑張れよ!
●●:先生、今それプレッシャーになりますって…笑。
この緊張はきっと卒業生代表だから…だけではない。
ここでカッコいい姿を見せたいし、その後のことも頭にあるから、ここまで緊張するんだろう。
コサージュを付けて。
いつもよりも綺麗な制服で。
ようやく卒業してしまうんだという実感が湧いてくる。
教頭:卒業生が入場します、拍手でお出迎えください。
主任:じゃあ1組から行こうか。
●●:ふぅ…。
池田:●●なら大丈夫だって。応援してるから。
●●:ありがと。
胸を軽く2回叩いて、歩き出す。
たくさんの人の拍手の中を通る。
もう泣いている保護者の姿もあった。
前に立った担任も潤んでいる気がしたのは気のせいか。
教頭:ただいまより、卒業式を挙行いたします。
いよいよ、最後の"青春"が始まる。
ーーー
卒業生代表の言葉は式典の最後。
時間があるからこそ、緊張状態がずっと続いてしまう。
教頭:卒業証書、授与。
返事が変にならないように、静かに咳払いを何度もする。
その返事すら、緊張するもの。
担任:●●〇〇。
●●:はい。
安堵して、ちらっと隣のクラスを見る。
いつもよりも、綺麗な井上の姿が目に入る。
緊張している様子が伝わる。
少し、緊張が解けた気がする。
教頭:卒業生答辞。卒業生代表、1組、●●〇〇。
●●:はい。
いよいよだ…。
礼をするときに、また…目に入る。
少し安心して、舞台へ上がる。
ーーー
担任:みんな、3年間お疲れ様。よくここまで頑張ったよ。
無事に卒業式は終了して、最後のHR。
始終あんなに好きでなかった担任が、今は何とも言えない感情にさせてくる。
山口:〇〇、良かったぞ!
川﨑:流石、私たちの会長!
●●:いや…だからもう会長じゃないってば…笑
池田:良かったよ、●●。さすがだね、良い言葉だった。
●●:みんなにそう言ってもらえるなら、良かったよ。
クラスメイト達:みんな、写真と寄せ書きしよ!
川﨑:分かった!ほら、●●達も早く。
●●:おう。
クラスはまた活気のあるいつもの姿に戻っていた。
今日でそのクラスも無くなってしまう。
掲示物が風に揺れている。
あらかた皆んなとのサイン会も終わる。
川﨑:そろそろ?
●●:…うん。
菅原:よ!●●!
●●:おう、菅原。
菅原:ふふ、そんなに緊張しないで大丈夫だよ。
●●:ありがと。じゃあ…行ってくる。
川﨑:頑張れ。
ーーー
井上:あ、●●。
●●:ごめん、わざわざここまで来てもらって。
井上:ううん、なんか懐かしいね。
●●:そうだな…。
選んだのは、1年生で使っていた教室。
高校で唯一、一緒になれたクラス。
井上:答辞、良かったよ!●●らしい良い答辞だった。
●●:ありがと。
井上:…●●。
●●:…?
井上:私も流石に馬鹿じゃないからさ…何で呼ばれたかは分かってるよ。
●●:…!
井上:よく考えれば、悪いことしてたなって…ずっと。
●●:井上は…悪くなんかないよ。
井上:だってさ、男女の友情なんて中々、成立も理解もされないじゃん?
●●:…うん。
井上:って言ってる私も…その1人。正直、●●は私にとって何なんだろうって。もう終わっちゃう高校生活の中でそう思ってた。でも、今日…●●から呼んでくれて良かった。私もちゃんと…覚悟を決めなきゃね。
初めて聴いた井上の言葉。
緊張なんてとっくに忘れていた。
早咲きの桜の花びらが、風に吹かれて机の上に乗る。
●●:井上。
井上:うん。
●●:ずっと…井上のことが好きだった。
井上:私も…きっと…ずっと好きだったんだよ。
●●:考えれば考えるほど、解らなくなって。井上という大切な人を、この一言で失うのが怖くて…。
井上:…。
●●:でも…もう覚悟を決めた。これからどうなっても、良いように。区切りを付けなきゃいけないから。
井上:うん。
●●:井上和さん。僕と付き合ってください……!
ーーー
あの日から数年後。
〇〇:お。
和:久しぶり、〇〇。
〇〇:別に久しぶりでもないでしょ笑。
和:確かにね笑。
向かう先は居酒屋。
もうお互い、お酒が飲めるようになった。
〇〇:じゃあ…乾杯。
和:乾杯。
〇〇:…ふぅ。
和:うん、美味しい。
〇〇:最近はどんな感じ?
和:元気にやってるよ。単位もバッチリ👍
〇〇:"彼氏さん"とはどうなのよ?笑
和:郁也って呼べば良いのに…笑。この前はアニメ映画見に行ってきたよ。
〇〇:アニメ好き同士だもんな。
和:そっちこそ、どうなの?
〇〇:瑛紗?日帰り旅行にちょくちょく行ってるよ、絵描いてる。
和:ふ〜ん、いいじゃん!
想いを伝え切って、ようやくお互い踏ん切りがついた。
それからというもの、自分は同じ街の大学に入った瑛紗、和は同じ大学に入った郁也とそれぞれ付き合うことになり、順調に過ごしている。
そんな中、和とは月に1回ほど必ず会うようになった。
それが何故なのか…分からない。
でも、お互いに必要があるから会っている。
"君とは、自分にとって一体何なんだ?"
そう考えては答えがずっと出なかった。
友達や恋人という関係を超越している。
そしてあの日…気づいた。
"君"とは…僕の最高の"相棒"なんだって。
きっとお互いにお互いが居なければ、最高のパフォーマンスを発揮することはできない。
けれども必要のない時だってある。
相棒は…時に強力な味方にもなり、時に強力なライバルにもなりうる。
和:そうだ…今度ちょっと動画編集教えてよ。〇〇、得意でしょ?
〇〇:良いけど、なんで?
和:サークルで動画作ることになったから。
〇〇:良いよ、日と場所言ってくれたらいつでも。
和:ありがと、なんかお礼するね。
〇〇:いいよ、そんなの笑。
側から見れば恋人のように見えるし、付き合わないのか…?と思われるかもしれない。
が、自分達はこれ以上を望まない。
これがお互いにしか分からない、ちょうど良い温度感なんだ。
周りの人には分かりっこない。
部外者に理解されたくもない。
紆余曲折あったからこそ生まれた、最高の関係なんだ。
グラスに入った氷が音を立てる。
和:〇〇。
〇〇:どうした?
和:出会ってくれてありがとね。
〇〇:…こちらこそ。
…これが自分なりの答えだ。
ー長編『"君"とは…』完結ー
hkyの初作品として、初長編としてここまで読んでくださりありがとうございました。この物語は「フィクションとノンフィクションの狭間」をテーマに作ってきました。2023/11/23の初投稿からここまで沢山の方々に読んでいただきました。改めて感謝申し上げます。これからも投稿を続けていきますので、よろしくお願いします!
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