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この宣言だけはずっと解除しないから

電話が鳴る。

眠い目を擦り、寒いながらなんとかスマホを取る。




●●:んぅ…もしもし…?

遠藤:おはよ、"〇〇"!寝てた…?

●●:今日、電話早くない…?




幼馴染の遠藤さくら。

小さい頃から日課として毎朝、お互いの家に行っていた。

それは時の流れとともに、電話という形になった。




遠藤:10分ぐらい早いだけでしょ?

●●:アラームより先に起こさないでよ…ふぁ〜。

遠藤:あくび…笑。ちゃんと起きたんだね?

●●:うん、お陰様で。

遠藤:じゃあ、また後でね。

●●:は〜い。




さて、一緒に行く準備をしないと。







ーーー







いつもの曲がり角。

小学校以降、この曲がり角が待ち合わせ場所。

電柱に少しもたれて待っているとやってくる。




遠藤:おはよ、"●●"。

●●:電話早いのに、いつも俺のほうが早いじゃん…笑。

遠藤:いろいろあるの!ほら、行くよ?

●●:ごめんってば〜。




●●と〇〇。

呼び方が違うのは、小学校の頃。

名前で呼び合って、仲の良い自分達を見て、よく居るような奴らがカップルだ〜って囃し立てたから。

それ以降、人前では苗字で呼ぶようになった。





他愛もない話をして学校に近づく。




男1:お、●●と遠藤じゃん。

女1:今日も一緒に?

●●:いやいや、そっちこそ…笑

男1:俺らは付き合ってるもん、なぁ?

女1:うん。いいでしょ〜?

遠藤:私達のルーティンだからいいでしょ。

●●:そうだよ。良いじゃん別に。

男1:なるほどな〜。




幼馴染ほど、壊したくないものは無い。

生まれてからずっと…一緒にいる存在をほんの一言で消したくない。

だから…俺には言えない。

そんな度胸は無い。そんな勇気は無い。

だから…この想いにずっと蓋をして生きている。

そうやって今日も同じクラスに入る。







ーーー







昼休み。

教室でいつも通りご飯を食べていると、遠藤のもとに誰かが来ているのを見た。

遠藤は部活のマネージャーをしているので、多分同じ学年の誰かだろうか。

あまり良い噂を聞かない部活。

と言っても一部の先輩だけらしいが。

それでも好奇心旺盛で、献身的に務める姿を見ると何も言えなくなる。

勘繰っているそんな時。

微かに聞こえた。




男2:…ゃあ、今日の放課後…るから。




嫌な予感がした。

何かを失う…そんな気がした。







ーーー







放課後。

今日は全部活が無い日なので、いつもなら一緒に帰るはず。

でも、あの一件がある。

あれこれと考えているときに遠藤がやってきた。




遠藤:ねぇ、●●。ちょっとここで待っててくれない?

●●:どうした?

遠藤:ちょっと部員に呼ばれたから。すぐ戻ってくる!

●●:分かった、待ってるよ。




そう言って、急いで向かった。

向かった方向的に、恐らく部室だと思う。

本当はいけないかもしれないが…。







ーーー







部室。




遠藤:で、どうしたの?話って。

男2:遠藤さんってさ、彼氏いるの?

遠藤:彼氏…はいないよ。

男2:そっか…。

遠藤:なんで?

男2:ほら、いつも一緒に来てる人いるじゃん。

遠藤:●●のことね。

男2:てっきり彼氏かと。

遠藤:●●はね…彼氏とかそういう枠に収まらないから。

男2:…。

遠藤:彼氏以上に大切な存在だよ。

男2:へぇ…?ですって…先輩。外、行きますね。

先輩:なるほどね?

遠藤:えっ、先輩?!何でここに?

先輩:ここに連れてくるように俺が頼んだから。そっかぁ…そんな大切な存在なのね。

遠藤:ちょっと…まさか…。

先輩:出られないよ?さ、どうする?




許せるか。

もう…覚悟を決めるべきだ。

"彼氏という枠に収まらない"

でも、周りにとってはその称号が必要な時がある。

それが俺にとっても…"さくら"にとっても必要なことだ。




男2:ぐはぁ…!!

先輩:ちっ、うるさいぞ。




ガチャン!!!




先輩:おい!どうしたんだお前?

●●:…はぁ。あなたですか。"例の"先輩って。

遠藤:●…●…。

先輩:お前か噂の●●は。随分と威勢の良い後輩じゃねぇか。何だ?

●●:俺は遠藤の…"さくら"の…彼氏ですけど??

遠藤:…!!

先輩:ふっ、彼氏の枠には収まらないって言ってたけど?

●●:関係ありません。それよりこんなとこに閉じ込めて、何しようとしてたんですか?

先輩:それこそ関係ないだ…

●●:いや、関係ありますから。

先輩:ちっ…そりゃ、俺の女になるって言うまでいじめてやろうってな。

●●:そうやって過去もやってきたんですね?

先輩:だったら何なんだよ?好きにさせろ。

●●:犯罪ですよ、そんなこと。

先輩:うるせえ後輩だな!!

●●:…っ、気が済むまで殴ってくださいよ。"証拠"が増えるだけですから。

先輩:証拠?

●●:録音してますから、ずっと。先輩…お終いですよ?

先輩:何だと…!クソっ!!




なんて情けない先輩なんだろうか。

後できっちり、先生と警察に報告する。




遠藤:●●…!!!

●●:こんなことになる気がしたから…ついてきちゃった。ごめんね。

遠藤:ううん…ありがと。私が不注意なばっかりに…。

●●:…さくら。もうこんな思いして欲しくない。

遠藤:うん…。




だから…宣言しよう。

君は僕のものだって。

はっきり言っておかないとダメだ。




●●:俺の彼女になってくれませんか。

遠藤:……もちろん。よろしくね。

〇〇:ちゃんと言わなきゃダメみたいだね…笑。

さくら:お互い、だいぶ時間かかっちゃったし…こんなことがきっかけになっちゃったけど…これからも、よろしくね!

〇〇:もちろん、これからずっと…よろしく。




もう誰の手にも触れさせないように。

誰にも追いつかれないように。

お互いに怖い思いを…悲しい思いを…辛い思いをしないように。

これからもお互い、大事に大事に1日を過ごしていきたい。

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