君がわたしの青春
みんなが来るより少し早い朝の教室。
窓から見た君の姿。
●●:しゃあ!もう一本来い!!
クラスでの優しい姿。
クラスとはちょっと違う、君の情熱的な姿。
そんな君を…気付けば好きになっていた。
私は孤立しているわけでは無いし、友達もそれなりにいる。でも目立つタイプでは無い。
そして部活はバスケ部。
練習場所が内と外。中々、交わらないのも…。
だから、こうして。
朝練が無いのに、少し早く学校に来ている。
ーーー
●●:おはよ。
男1:お、今日も朝練か?
●●:レギュラーだけは盗られたくないからさ。
男1:流石だな。
●●:1限は……英語か。
男1:ん、確か時間割変更で6限のHRと変更するはず。
●●:ふ〜ん。何するんだろうな。
遠藤:かっきー、おはよ!
賀喜:あ、さく!おはよ〜。
遠藤:いつもと変わらず朝早いね。
賀喜:…まぁね。
遠藤:そうそう、今日席替えするんだって!先生が言ってた!
賀喜:ほんとに…?
遠藤:さっき係と話してたからHRにやるんじゃないかな。
賀喜:そっか…。
女1:さくちゃん、席替えって本当?!
遠藤:うん、多分ね。
女1:やったぁ〜!!
女2:何それ、私と離れたかったってこと?
女1:あ〜違う違う…!そういう意味じゃないじゃん…。
遠藤:相変わらずだね、あの2人は…笑。
賀喜:結局、いつもサバサバしてる方が実は重いんだよね…笑。
席替えの話は瞬く間にクラス中で話題になった。
ワクワク、ドキドキ。
そんな気持ちがみんなの表情から読み取れる。
かくいう私も…その1人。
隣の席か。前後か。
もしくは、窓際で校庭を眺められる席。
微かな期待が鼓動を早める。
担任:はい、みんな席に着いて〜。朝礼するよ。
女1:先生!HRで席替えするって本当ですか?
担任:話回るの早いね笑。朝礼の後、そのまま係の人に任せるからね。
朝礼はみんな上の空。
誰もが目先のイベントに意識が奪われている。
ーーー
係:…黒板に書いた番号が新しい席です。
担任:はい、じゃあ新しい席に動いて〜。
窓際になった。一安心。
そう、少し落ち着いて新しい席に座った時だった。
●●:あ、賀喜さんだ。
賀喜:…!●●くん。
●●:どうしたの?そんな驚いた顔して笑。
賀喜:もしかして…ここ?
●●:うん、9番だから…合ってるよね。
賀喜:合ってると思う。
●●:しばらく隣、よろしくね!
賀喜:…よろしく//
私は何かしてしまったか。何か起こってしまうのか。
窓際で君の隣。
優しい君と情熱的な君。
2つの姿をしばらく独占できるなんて。
これ以上の席替えは今後ないと思う。
何より…もう変わりたくないとさえ思ってしまう。
先生がHRを進めている。
話を聴いているその横顔を見て、淡い感情が掻き立てられる。
ーーー
昼休み。
私も●●くんも、教室の自席で1人で食べるタイプ。
だから、必然的に隣同士で食べることに。
自然と会話が始まった。
●●:…そういえば賀喜さんってさ。
賀喜:…?
●●:いつも朝早いよね。バスケ部って朝練ないのに。
賀喜:…なんで知ってるの!
●●:いつも朝練の時、教室見上げたらいるから笑。何してるの?
賀喜:…絵描いてるの…。学校で描きたくて。
●●:へぇ…ちょっと見せほしいな。
賀喜:いいよ。ちょっと待ってね…こんな感じ。
●●:え…!めっちゃ凄いじゃん!!
賀喜:ありがと…//
●●:漫画家になれるよ、絶対!そういうレベルじゃん!
賀喜:あんまり誰にも言ってないから嬉しい!//
●●:無理には大丈夫だけど…俺の似顔絵とか描いてくれたりするの?
賀喜:…!もちろん。
●●:ほんとに!?
賀喜:うん。
●●:え〜、嬉しい!楽しみにしてる!!
賀喜:あんまり期待しないでね。
●●:期待しないことは無理かなぁ笑。
賀喜:やめてよ…笑。
バレていた。
でも、結果的に距離がちょっと縮まったなら。
それはそれで良かったかもしれない。
同級生の男子の似顔絵はまだ描いたことがない。
いつもよりも…丁寧に。気合を入れて。
描くことを密かに決意した。
ーーー
部活も終わり、校門をくぐる。
帰り道。今日あったことを思い返す。
隣の席になったこと。
朝早く来ていることがバレていたこと。
似顔絵を描くことになったこと。
自然と口角が上がる。
嫌なことなんて全て忘れて。全てひっくり返って。
日常がキラキラし始めた。
まだ今日が…終わってほしくない。
いつもよりもちょっと遠回りして帰る。
●●:あ、賀喜さん!
賀喜:え!●●くん!
●●:いつもこっちじゃない気がするけど、どうしたの?
賀喜:ちょっと遠回りして帰りたい気分になって。
●●:そんな気分の日もあるよね。せっかくだし途中まで一緒に帰ろう?
賀喜:うん。
たまたま会って。
部活のこと。勉強のこと。クラスのこと。友達のこと。
いろんな話をした。
●●:じゃあまた明日ね、かっきー!
賀喜:●●も!お互い頑張ろ〜ね…!
●●:似顔絵、急がなくてもいいからね。楽しみに待ってる。
賀喜:うん。じゃあバイバイ👋
●●:バイバイ👋
少し先へ歩いて、立ち止まる。
振り返って君の後ろ姿を見る。
少し…見つめて。
また前を向いて家を目指す。
ーーー
似顔絵の下書きを少しだけ描いて。
明日の準備をして。
ベットへ向かう。
賀喜:アラームはセット出来てるよね。よいしょっと…。
ふと、君の姿が浮かんだ。
1日でこんなに仲良くなれるのか。
こんなに距離が縮まるのか。
その事実に嬉しくなる一方で、もっと近づきたくなる。
このままじゃ嫌だ。
だけどこのままでいい。
そうやってまた…明日の自分に期待して。
限りある"青春"に期待して。
今日も私は眠りにつく。
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