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羊のホゲットと羊をめぐる冒険

愛逢月の出来事②羊のホゲットを味わう。
20日渋谷タロスに立ち寄った時、近谷シェフは「白糠産の美味しい脂の乗った仔羊、ホゲットがある」と言う。生後12ヶ月以内の「ラム」、生後24ヶ月以上の羊肉らしい「マトン」、その間に位置づけされるのが「ホゲット」。だが、胃が荒れているようで食欲がない、ならば「お持ち帰りください」とホゲットをいただいた。22日夜に自宅で焼いて食べたが、実に濃い羊の味がして、昨年書いた「旅空マルセイユ記=羊をめぐる冒険」を思い出した。
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2019年5月<旅空マルセイユ記=羊をめぐる冒険>
①「美味しいと、味わい深い」
 最近「美味しい」という言葉がつかえなくなっている。美味しさには<ラベルとレベル>がある。<レベル>は高級とか町場のレストランとかで判断が付き、食べていくうちに比較出来る。<ラベル>は単に自分の好き嫌いで判断して貼ろ、知らず知らずのうちに「美味しい」と言っている現象だ。
 自分が味わい時、その感想を言う時に必ず心がけていることがある。「個人の好き・嫌い」と「ある程度普遍の美味しい・不味い」を理解し、きちんと区別するかである。さらに、素材から出る旨み味と出汁を取る引き算が出来ているか、勿論、器や盛り付けなどの眼での味わいもある。さらに「味わい深い」が非常に気になり、その舌の判断に立ち止まることが多くなった。
 豚カツが無性に食べたい。フランスの豚肉は脂身が無く、日本のパン粉を以てしても手に負えない。フランス人はBBQだけで食べているのか、さらに最近、スーパーでも豚挽肉が少なくなっている。

②羊は我がソウルフード?
 1950年代から60年代、北海道の一般家庭では豚肉と鳥肉が主で、牛肉などはほとんど食べられなかった。幼き頃のたんぱく源はジンギスカン、それも韓国のプルコギの様に成吉思汗のタレに漬けられたもので、食材や鍋を持ち寄っての小学校の遠足もあった。今時の焼肉のようなものは無く、肉だけを食べたら「胃が溶ける」からと言われて、もやしばかりの野菜を食べさせられた。
 「牛のすき焼き」は専門店が釧路に初めて出来てから数年後、高校3年の時に初めて口にした。同じ野菜を使う「豚鍋」がメインだったが、味のコクがまるで違っていた。
 1970年代半ばに就職して「牛しゃぶしゃぶ」を食べた時の感動は未だに忘れられない。
 その後、札幌ビール園で羊の焼肉やジンギスカンを食べ、こんな洗練されたものになっているとは思わなかった。
 2000年代初め、アフリカのセネガルに3か月滞在したが、ダカール郊外の荒れ地に何百頭もいた羊が1週間でいなくなり、アパートの裏庭で見かけた羊が翌朝には消えていた。犠牲祭で生贄になる家畜は家長である男性が捌く役割で、感謝の念を持ち食し、貧者やお祭りの手伝いをした人には施しとして配られる。
 2013年からボスニアヘルツェゴビナの首都サラエボの街には肉市場があったが、イスラム系住民が多く、羊や牛の姿肉が目の前に吊り下がっていた。セルビア系住民の多くは空港の反対側に住み、ここでは豚や仔羊が丸焼きにされており、豚肉が素朴に食べられた。

③ 仔羊肉は理想食材!?
 フランスの春の訪れを知らせる食べ物の一つが「仔羊=agneau」だ。フランスでは今、子羊肉は高タンパクを誇る理想的な食材として、ダイエットにも向いていると言われ始めたようだ。羊肉の脂肪は融点が高いため、体内に入っても吸収されにくいという特質があるが、逆に赤身は消化が早く、栄養を効率よく吸収することが出来るらしい。フランスのレストランでのメイン料理は、仔羊が一番多いと言われている。
 一般的には仔羊のもも肉「gigot」が売られており、骨付きの大きな塊肉を丸ごとオーブンで「rosé」に焼き上げたものをスライスして食べる。羊肉の脂身は臭いが強いが、豚肉や牛肉、鶏肉にもない独特な風味がある。 マルセイユの北部、冬季五輪で有名なグルノーブルとの間に「シストロン」と言うフランスの有名な子羊の産地がある。シストロンの子羊は肉質が細かくて、脂がちょうど良いらしく、あるシェフも「あれほど美味しい子羊はないでしょう」と言っている。
 長年の海外経験や6年に及ぶ海外居住で「食感覚」がマヒしたのであろうか。【希少羊1頭 解体ショー&感謝して皆で残さず食べるよ、の会】を企画したら、熟女子から「血とか苦手、私達乙女なの・・・」とか、冗談とも本音とも思われる返事が返ってきた。どうやら「解体=血」と想像したようであるが、繊細デリケートな女性心理まで分析、解体出来なかった。

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