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北海道から世界へ 東京2025デフリンピックを目指して デフ卓球・木村亜美選手

はじめに

聴覚障がいの方の国際的なスポーツ大会「デフリンピック」をご存じでしょうか?デフリンピックとは、「デフ」+「オリンピック」のこと。 デフ(Deaf)とは、英語で「耳が聞こえない」という意味。デフリンピックは国際的な「耳が聞こえない人のためのオリンピック」です。ルールはオリンピックとほぼ同じですが、耳が聞こえない人のための様々な工夫がされています。

2025年には、日本で初めてデフリンピック夏季大会が開催されることになりました。東京2025デフリンピック大会に向けて、もっともっと盛り上げていきたい!!

北海道でも、デフリンピックでの活躍が期待されるアスリートが世界を目指し、日々頑張っています。今回は、そんな障がい者スポーツに取り組む道産子アスリートをご紹介するシリーズ!初回はデフ卓球の木村亜美選手にインタビューしてきました。
(インタビュー日:2023年8月29日(火))


デフ卓球・木村亜美選手プロフィール

デフ卓球・木村亜美選手

~木村亜美選手公式ホームページより~
木村 亜美(きむら あみ)
北海道小樽市出身 1997年生まれ・25歳(取材時)
<出身校>
 小樽市立朝里中学校~札幌龍谷学園高等学校~北星学園大学文学部
<所属>
 ドコモグループ所属
 札幌unity所属
<趣味>
 おいしいものを食べること・ドライブ・温泉・Netflix
<将来の夢>
 すべての人が生きやすい社会になるように貢献していきたい

デフ卓球との出会い

ーーまずは、木村選手とデフ卓球との出会いを聞かせてください。

木村 卓球は4歳から始めたんですけど、デフ卓球は20歳からです。それまでは、デフ卓球のことは知らなかったんです。大学までは一般の卓球をやっていました。自分の聞こえは先天性のものなんですけど、補聴器をつければ聞こえる状況だったので、デフ卓球と出会うまでは、聞こえる状態で一般で競技を続けていました。

ーーそうだったんですね!では、デフ卓球を知るきっかけは?

木村 同じ大学の同期で、バドミントンをやっている聞こえない男の子がいたんです。その子に『デフの大会には出ないの?』って聞かれたことがきっかけで、デフ卓球のことを知って。じゃあやってみようかなと、そこから始めることになったんです。

デフ卓球ならではの難しさ

ーー木村選手がNHK北海道の番組で特集されているものを拝見しました。デフ卓球では、聞こえないことが一般の卓球とは大きく違うという部分を取り上げられていて、わかりやすく解説されていましたね。

木村 そうですね。一般でやっていた時は補聴器を付けていたので、音が聞こえている状態で競技をしていましたが、ラケットの芯に当たる音や、こする音などの違いがあって聞き分けられていたんですね。それが聞こえないというのは大きく違いますね。卓球のルール自体は一般の卓球と全く一緒なんです。

ーーなるほどー。デフ卓球への転向は、一筋縄ではいかなかったんですね。

これまでの戦績、これからの試合スケジュール

ーー20歳でデフ卓球を始めたということですが、直近の戦績はいかがですか?

木村 直近1年でいうと、2022年10月に全日本社会人卓球選手権大会に出場しました。2023年2月には全国ろうあ者卓球選手権大会に出場して優勝。この大会の成績で、日本代表になりました。そして、2023年7月に、世界ろう者卓球選手権大会に出場し、女子団体優勝、女子ダブルス優勝、女子シングルスベスト8という結果になりました。

ーー素晴らしい成績ですね!今後の大会の予定は?

木村 まず、2023年9月9日~10日に全国ろうあ者体育大会があります。10月7~8日には全日本卓球選手権大会(一般の部門)予選会があります。この予選会で1月の全日本卓球選手権大会の出場権が得られます。全日本は一般の大会なんですけど、この予選会で勝ち上がると、デフ枠から1人推薦で出場できるんです。2024年11月のアジア選手権の選考会も入ってきます。2月24~25日は全国ろうあ者卓球選手権大会がありますね。

ーーすごいスケジュールですね!休む暇なし…。2025年の東京デフリンピックまでは、まだ2年ちょっとありますけど、デフリンピックへの出場が決まるのはどのタイミングになりそうですか?

木村 そうですね、これまでの国際大会を参考にすると、だいたい半年前くらいに決まっているので、デフリンピックも2025年11月の開催の半年前くらい。2025年5月くらいになるんじゃないですかね。

デフリンピックを目指して

ーー木村選手は、2年後の東京デフリンピックへの出場を目指していますか?

木村 もちろん。

ーー力強いお言葉!これまでの戦績を踏まえて、東京デフリンピック出場に向けては、どのように取り組んでいこうと考えていらっしゃいますか?

木村 先月(7月)の台湾の世界大会は、初めての国際大会出場だったんです。初めての国際大会としては、自分としてはまずまずの出来だったと思っているんですが、自分の力を精一杯出し尽くしてこの結果、特にシングルスでベスト8に終わったというのは、正直悔しいですね。

ーーそうなんですね。

木村 デフリンピックでの目標としては、おそらく4種目(女子シングルス、女子ダブルス、女子団体、ミックスダブルス)に出場することになると思うんですけど、4種目で金メダルを獲ることです。そのために自分に足りないところは、体力面だと思っています。この間の世界大会では、シングルスの試合に1時間かかったんですね。自分はほんっと体力がないんですけど、1時間かかるようなハードな試合を1日に何試合もこなすためには体力が必要だと思っています。自分は今、仕事をしながら練習をしていて、そこに加えて体力面のトレーニングをする時間も調整しなくてはいけない。どこまでできるかわかりませんが、頑張りたい。卓球自体については自信があるんです。この間の世界大会でも負けてなかったと思っています。今は体力面を克服することが必要だと思っています。

ーーそうですよね、お仕事もされながら競技に取り組むのは、並大抵のことではありませんね。デフ卓球でのライバル選手はいますか?

木村 日本代表の亀澤理穂選手(住友電設)です。亀澤選手は、次の東京でデフリンピック出場5回目となるレジェンドなんです。自分は2月の全国ろうあ者卓球選手権大会で亀澤選手に勝って、日本代表になったんです。
海外の選手でいうと、対戦したことはありませんが、スロバキアのJURKOVA選手です。この間の世界大会女子シングルス1位の選手です。国内と海外では卓球のスタイルが全然違っていて、海外選手はパワーや回転があってやりづらい。逆に、国内選手はフォームがきれいでやりやすいんです。もっと海外選手と戦う経験が必要だと思っています。そういう意味では、亀澤選手は経験が豊富なんですよね。

ーーコロナ禍があり、世界と戦う場も制限があったと思いますが、これからは海外選手との試合の機会は増えそうですか?

木村 強化試合などの機会はあまりなくて、一般の日本卓球協会ではスポンサーもたくさん獲得していろんなことが出来ていますが、デフ卓球はそうはなっていないですね。

ーーそうなんですね。現在札幌を拠点にされていますが、練習環境はどのようなものですか?

木村 現在自分は札幌unityという社会人チームに入って一般の方と練習をしています。そこには昔、世界大会で銀メダルを獲るなど活躍した人などがいて、チーム内でご指導いただきながら練習に参加しています。あと、今日の取材会場でお借りしている札幌龍谷学園高校も、出身校なんですけど、現在はコーチをしています。生徒達に指導する中で、質の良いボールを出すこととか、丁寧に卓球をすることとかを意識することが出来るので、とてもよい練習になっていると思います。

インタビューは札幌龍谷学園高校卓球部の皆さんの練習場をお借りしました。皆さんレベル高い練習に取り組まれていました。

ーー北海道に居ながら、レベルの高い練習が出来る環境になっているんですね。

木村 あと、もう一つ思っていることがあるんです。2025年の東京デフリンピックでは、せっかく日本・東京で開催されるので、みんなで一緒に盛り上がりたい!って思ってるんです。デフリンピックはパラリンピックに比べても認知度が低いじゃないですか。自分が出場することによって、まずは札幌・北海道の皆さんから盛り上がってくれて、そんな中、自分が金メダルを持ち帰れたらと思っています。東京パラリンピックの開催をきっかけにバリアフリーなどが進みましたけど、デフリンピックの開催でも、同じことになると良いなと思っています。

ーー本当にそうですね。せっかくの日本開催ですし。木村選手はホームページのほかInstagramなどのSNSでも発信されていて、私もフォローさせていただいているんですけど、選手自ら積極的に発信されていて素晴らしいなと感心しています。

木村 うれしいです。

ーー北海道からこんなすごい選手が出てるんだ!って盛り上がりたいですよね。私たちもどんどん発信していかなくちゃと、お話を聞いていて強く思いました。東京2025デフリンピック、盛り上げていきましょう。

すべての人が生きやすい社会へ

ーー今はデフ卓球の選手として、デフリンピックを目指して邁進中だと思うんですけど、その先のことで恐縮ですが、ご自身の競技生活の先に、たとえばこれからのデフ卓球選手の育成だったり、見据えているものはありますか?

木村 選手の育成も考えていますし、マネジメントにも興味があります。さっきも少しお話しましたけど、一般の卓球に比べると、デフ卓球はあまりスポンサーを集めたり発信したりという活動が出来ていないんですよね。もっとスポンサーをつけて支援いただいて、デフの大会や強化試合なども一般の有名選手なんかを呼んで指導してもらうとか、もっとやれることがあると思っているんです。

ーーそこは木村選手を見ていると、出来そうな気がします!ホームページやSNSでも、ご自身でスポンサーを獲得されてフォローもしっかりされている様子が垣間見えて。デフ卓球も、一般の卓球とルールは同じなので、たくさんの人が試合を楽しんでくれるし、応援してくれますよね。

木村 あと、自分のモットーなんですけど、「すべての人が生きやすい社会にする」というのをモットーにしていて、そのための講演活動とか社会貢献をしていきたいと思っています。

ーー木村選手の経験がたくさんの人の力になる活動ですね。

木村 東京2025デフリンピックの先、という話でいくと、さらに4年後、2029年のデフリンピックにチャレンジするかどうかは、まだわからないです。今年で26歳になる年なので、2025年は28歳。その4年後は32歳なので、まだチャレンジできるかもしれないですし。

木村選手の魅力にすっかり引き込まれ、私もお話を聞いていたら感動してしまいました。

ーーそうですね。私たちも、チャレンジする木村選手を応援し続けたいと思います!最後に、道民へのメッセージをいただけますか?

木村 自分のプレーは、見ている人を引き込むプレーだとよく言われるんです。自分としては精一杯やっているだけなんですけど、一生懸命やっていることが見ている人の心に響くんだと思います。WBCでは大谷選手の活躍に日本中が感動しました。私も全国民を感動させたい。なので、是非試合を見に来てほしいです。一緒に感動しましょう!日本人として戦っているところを、みんなで応援してほしい。
意気込みとしては、デフリンピック、デフ卓球を通して社会に貢献していきたいです。4種目でメダルを獲って、みんなで盛り上がりたいです。ハラハラさせちゃうけど、勝つ!魅せるプレーを見てもらいたいです。応援よろしくお願いします!

ーー素敵!全力応援します!ありがとうございました。


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