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鳳凰木と『傾城の恋』

香港では春から夏にかけて、いろんな花が咲きます。その中でも、ひときわ艶やかで盛夏の入り口を告げる花が鳳凰木。気温も30度を超える5~6月ごろ、満開を迎えます。背の高い木の上に咲く朱色の花は、夏の濃い青空とのコントラストがとってもきれい。見るたびに、もう本格的な夏がそこまで来ているんだなという気持ちになります。

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さてこの鳳凰木、張愛玲の『傾城の恋』でも出てくるそうです。香港は張愛玲ファンが多いこともあり、何気にネットサーフィンしていたら、記事が目に入ってきました(笑)。

鳳凰木の登場箇所は、白流蘇が1回目の香港滞在時、范柳原と一緒に出かけたダンスホールからホテルのある浅水湾に戻ってきたシーンです。

「你看那種樹,是南邊的特產。英國人叫他「野火花」。」流蘇道:「是紅的麼?」柳源道:「紅!」黑夜裏,他看不出那紅色,然而她直覺地知道它是紅得不能再紅了,紅得不可收拾,一蓬蓬一蓬蓬的小花,窩在參天大樹上,壁栗剝落燃燒着,一路燒過去,把那紫藍的天也熏紅了。」

「あの木を見てごらん、南方の特産だ。イギリス人は“野火花”と呼んでいる」流蘇が訊ねた。「赤いの?」柳原が答える。「赤い!」暗闇の中、彼女には赤い花は見えなかったが、それがこの上なく赤い花であることを直感したーーどうしようもなく赤い花、そこここで咲き乱れる小さい花、天高くそびえる大木に巣をかけ、バラバラと燃え続け、ひたすら燃えて、あの紫藍色の空も赤く染めてしまうのだ。〜『傾城の恋/封鎖』(藤井省三訳、光文社古典新訳文庫)

「鳳凰木」という名称が出てなかったので、読んでいても全然気がつきませんでしたが、改めて読み直すと・・・野火のように赤く「そこここで咲き乱れる小さい花」「天高くそびえる大木に巣をかけ」なんて、まさに鳳凰木! 

『傾城の恋』の中で、この赤い花は流蘇と柳源の、これから熱く燃え上がる恋の象徴として書かれていますが、鳳凰木の花と知り、よりイメージが湧きやすくなりました。「鳳凰木のような赤く燃え上がる恋」、いいですね〜〜

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今は温暖化の影響で、鳳凰木は4、5月から咲いていますが、『傾城の恋』執筆当時はもう少し遅くて、6月くらいの花だったかもしれません。

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