[読書感想文]岩田さん
「岩田さん」は任天堂の元社長だった故岩田聡さんのインタビュー記事をほぼ日刊イトイ新聞のスタッフがまとめた本である。インタビューを通して語られる岩田さんのエンジニアや社長としての考え方に触れるにつれ、エンジニアであったりサービスを作る人は読んでおいてもいい本ではないかという気分になる。わたしごときが本を切り取ってあれやこれや言うのもあれなのだが少し紹介してみよう。
岩田さんのインタビュー自体は170ページくらいの本なのだが、読んでいて思うのはよく”言葉”に落とせているなというところだ。超人的なエンジニアって言葉に落とすのが苦手な人も多いのでそこだけでとても尊敬できる。その中にマネージャーとしての観点、エンジニアとしての観点、ゲーム好きとしての観点がちりばめられている。
社長だったのだから、ということもあるかもしれないが、それにしても語り口が優しい。伝説的なMother2やりとりも優しかったのだろうか。
わけのわからない横文字がほとんど出てこない。自分の考えを何か(輸入された)既成の概念に預けて説明したつもりになるのじゃなくてこういう説明の仕方ができるのは常に頭がフル回転してるんだろうな、と感じる。
全編を通して感じるのは自分の使命、ミッションというものをしっかりと持ち、自分自身を何かに任じて突き進む、覚悟というか胆力を感じる。語り口が優しいし気負いも感じないのに「逃げ」がない。Wii,3DSといった世界最高のゲーム会社、任天堂の起こした革命はこういう人たちが支えているのだということがよくわかる。ちょっと上っ面でうまいことやってみました、というのではないだ。
自分自身の持つ使命感やエンジニアとしての覚悟が薄っぺらに見えて仕方がないが、プログラムやプロジェクトの経験が別の分野でも役に立つという岩田さんの経験談はちょっと心強い話である。
各章毎に岩田さんの語録がショートにまとまっているのだが5章のクリエイティブに関する語録から気に入ったのを少し引いておく
- ゲームの中に意味もなくおかれている石ころがある。「どうしてこれを置いたの?」と訊くと「なんとなく」とか言うんですけど、「なんとなく」は一番ダメなんですよ
- 仕事を決める時に、ほんとうに大事なことは、「何を足すか」じゃなくて、「何を捨てるか」「何をやらないと決めるか」だというのを凄く実感しました
- 「制約はクリエイティブの母」なんですよね
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