日本感染症学会学術講演会参加報告・補足

前回の報告

で書き残したことがあったので、それを補足しておきたいと思う。

感染症学会では、ワクチンに関しては基本的に積極的な話ばかりだった。次のパンデミックに期待する雰囲気が充満していたのは前回も述べた通りだが、次はもっと早くワクチンを展開しよう、国産で供給しようという話が繰り返されていた。その一方で、次はより安全なワクチンを開発しようという議論は、私が聞いた限りでは一切なかったのは大変残念だった。

感染症学会で私が強く感じたのは、人の命を預かるはずの医師たちの「軽さ」である。たとえワクチンが効いたとしても、副反応で600人以上の人が命を落としている(予防接種健康被害救済制度認定数)ことは重く受け止めて当然である。次のパンデミックを論じるなら、そのときは副反応による被害も防ごうと考えるのが人命を救う立場の医師ならば当然だと思うのだが、なぜかそういう議論をする感染症医はいない。

忽那賢志教授は自らの講演で、西浦博教授が医師としてワクチンを人に接種をしている写真を見せて、珍しいだろうと自慢げに話していた。そういうところにも、彼らの「軽さ」が滲み出ていた。

以下の論文(プレプリント)や動画解説の通り、西浦氏の感染症モデルの研究には数理解析の基礎の部分で大きな問題がある。

西浦教授は、東京五輪開催で新型コロナ感染者が激増するという予測も、5類への移行で新型コロナ感染者や死者が激増するという予測も、いずれも大きく外している。その失敗を重く受け止める雰囲気が全くないのは残念であった。この状態で彼らが期待する次のパンデミックが起きたら、感染症学者はまた誤った感染者数予測を繰り返すだろう。

私が感染症医にお願いしたいのは、人々の命や生活に対して最低限の敬意はもっていただきたいということである。自らの理想とする感染症対策を遂行するためなら多少の人命の犠牲は当然だと考える思想には、私は一ミリも賛同することができない。