占い師から歯並びをキレイにした方が良いと言われて歯科矯正を決意したら大変だった話し ep20

『ボクサー』

術後10日目。

前回、化膿していると言われた傷口もキレイになり、術後の大出血という恐怖からも解放されヲタクは元気いっぱいだった。
「hakuさん、今日はいよいよプレート外す日ですね!」
ん?初耳だが?
看護師さんは、私の反応など気にもせず処置室へと連れて行く。
もう、慣れたけどね。
「はーい、じゃあここに寝て下さい」
ベッドに横になる。
「こんにちはー!」
ちょっとくたびれたペコちゃん登場。
「いやー手術押しちゃってさー!疲れたー!」
誰もそんな事聞いてない。
「じゃあ、今日はプレートを外します!ちょーっと苦しいかもしれないけど頑張ってね!」
待って、苦しいなんて聞いてないぞ!
抵抗しようとしたが、看護師さんたちに体を押さえられる。
俎板の上の鯉再びだ。
「大丈夫大丈夫!プレート外れたら話せるようになるから!」
ペコちゃんは、グルグル巻きにされたワイヤーをパチンパチン勢いよく切っていく。同時に、これまで締め付けられていた感覚も緩くなっていった。
「はい、じゃあ口開けてー!」
「・・・・・・」
「がんばってー!」
「・・・・・・」
「もう少しー!」

って、開かねぇ!!!!!!!!!

ワイヤーが外されても、口がまったく開かない。
古くなったブリキの人形が、ギギギッと動くようなあんな感じでこめかみ部分がまったく機能していない。
「頑張れー!さっきより開いて来てるよー!」
口蓋に付けられてたチタンかなにかのプレートを取り出したいペコちゃんと、口がまったく開かないという初体験に混乱するヲタクの戦いの火ぶたが切って落とされる。
口の中に指を突っ込まれ、プレートをぐいぐい引っ張られめちゃくちゃ苦しい。暴れたくても身体は抑えられ逃げれない。
「よし、一旦休憩しよう!」
それから、開いたり閉じたり休憩したりを繰り返すこと数十分・・・。
「お!もう少しもう少し!」
痛みはないが、苦しいのとどこまで力をいれていいのか分からない恐怖に涙しながら少しづつプレートが口から出てくる。
そして、いよいよ・・・。

「でたー!」
達成感を味わうペコちゃんと、まるでボクサーのように燃え尽きてぐったりするヲタク。
術後10日も経って、更にこんな苦しみを味わうとは思ってもいなかった。
「みてみてー!こんなのが入ってたんだよー!」
チタン製のプレートを見せてくるペコちゃん。
嬉しそうだな!おめーはよ!

次回、『ごむぱっちん』

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