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記録|夜のピクニック

著者:恩田陸


読書の記録です。作中に出てくる好きな言葉を引用しています。
ネタバレに繋がる記述は避けています。
ネタバレしそうな言葉はページ数と行数で表記します。

人物と言葉


西脇融(とおる)
テニス部
近くにいなければ、忘れられる。忘れられれば、存在しないのと同じだ。
・249ページ 7行目
・424ページ 10行目

戸田忍
水泳部
『しまった、タイミング外した』だよ。なんでこの本をもっと昔、小学校の時に読んでおかなかったんだろうって、ものすごく後悔した。

甲田貴子
小さな秘密の賭け
嫉妬だ。
夜であることに気付くのは、いつも一瞬のことだ。
昼の世界は終わったけれども、夜はまだ始まったばかりだ。
淋しくて、悔しいんだよ。
自分がちやほやされるのは、ほんの短い時間だって知ってるもん。
子供って、疲れてくると不機嫌になって、口きかなくなるんだよね。
繋ぎ留めておきたい、この時間を。このままずっと。
・140ページ 8行目

遊佐美和子
和菓子屋の娘
それとは別。
『どうか、貴子をよろしくお願いします』って。
あたしたちって素敵よねって、一緒に自己満足しあってただけだったの。

後藤梨香
早稲田志望
学者のアイデアがひらめくのは、散歩中のことが多いんだって。

梶谷千秋
慶応志望

榊杏奈
アメリカ
どうして、それだけのことが、こんなに特別なんだろうね。
たぶん、あたしも一緒に歩いているよ。
去年、おまじないを掛けといた。

古川悦子
弁護士志望

高見光一郎
ロック 夜にお目覚め

内堀亮子
融を想う

芳岡祐一
天文部
最初から許してるんだ。
取られても許すよってスタンスなんだ。


・446ページ 5行目



読書中に思ったこと

朝から歩いていて。
本のタイトルが、夜のピクニックなんですよね。

そして、ミステリーによって推進する。

杏奈がね、一番精神的な友人。
いないことによって、言葉が浮き立つ。
これは、ネガチェンのあいつと同じだ。
ひどく忘れていた。

忘れられたくないよ。
忘れられたくないし、忘れたくない。
俺は忘れていないと思っている。
けれど、そんなの強情だ。
忘れているし、忘れているからこそ、そこにあったはずのものを求めることが出来ない。

数ヵ月後に届く手紙。

出来る女、美和子 落雁

小中学生の頃、集合写真に写る自分と他の人の立ち位置をやたらと気にしたこと。

もうすぐ折り返し。本の厚みは、まだ半分近く残っていた。すごい。まだ一緒に歩かせてくれるんだ。

予告されていること、予感していくこと。
この話の終着点、そこにどのように辿り着くのかは全くもって示されていない。だから、期待する。




読み終えて



隣に並んで、歩いていると、語れることがある。
実際に話してみないと分からないことがある。
みんな、平気なふりして、なにかを隠している。

打ち解けるのは難しいことだ。
けれど、それを可能にする場だったり、タイミングだったりもあったりするのだ。

横に並んで歩くって、不思議だ。
普段言えないことが言えてしまう時がある。
面と向かって、じゃないからかな。
前を向いて、同じところを見ているからさ。
歩幅を合わせる必要があるし、逆に言えば、お互いに合わせるから勝手に合ってくるのだ。リズムや、呼吸と言ったものが。

だから、つい、言えることがある。
言いたかった、でも言いにくかった、伝えようとひた隠していたあの言葉を。

別に、無理して話せってことじゃない。
ただ歩くだけでもいいんだ。
意識しすぎて、無言になるときもあるかもしれない。
けれど、歩みは一緒だ。
横を歩いて、そいつの顔を時折ちらっと見てさ。
それだけで何かが見えるかもしれない。

全てを理解し合えって言うんじゃない。
でも、隣で歩いていたらさ。
分かった気になれるかもしれないし、それが真実に近いかもしれないし、求めていた何かだったりするんだ。

そういったものが、丁寧に、綺麗な形を帯びた小説だった。
ただ歩く、それだけのことを、きっと、ずっと覚えているよ。




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