朗読劇二人芝居『ファンレターズ』矢野優子1通目

『ファンレターズ』
  作 じんのひろあき
  登場人物

  夢野 愛(本名 山川智子)
  矢野 優子

(矢野優子 一通目)

矢野優子「東京都千代田区神田神保町2の32 キノビル4階、
永幸出版ティーンズハート編集部、夢野愛様。
前略。夢野愛先生。
いつも先生のお書きになる小説を楽しく読ませていただいていました。
先生の作品は、女の子のなにげない感じとかが、
すごくよく書かれていて、
どうしてこんな事までわかっちゃうんだろうと、
いつもどきどきしていました。
ですから、最新刊の『夢で会えたらハッピートリップ』を読むまでは、全然先生の本心に気がつきませんでした。
私は、もうずいぶん前から、ものすごく漠然とですけど、
いつか私の事を小説に書く人が現れるのではないかと思っていました。
でも、それが夢野愛先生だったなんて。
もうおどろきです。
ズバリ言います。
あの作品の中に出てくる東ケイという女の子は私ですね。
時々、頭痛に襲われ、その後に様々な夢を見るなんていう設定は、
私を密かに取材して書いたとしか思えません。
本当に、驚きました。
ただ、そのまま書くと、私の事だと世間にばれてしまい、
下手をすると民衆に迫害されかねませんから、
内容だけは変えて下さったわけですね。
そうです。
私の見る夢は、ボーイフレンドの自転車に轢かれて
おでこに怪我をするような夢ではありません。
私は夢の中ではいつも別の名前で呼ばれ、
私の本当の使命のために闘っています。
先生なら、これ以上書かなくてもおわかりと思います。
最後に、私のこちらの世界での個人的な情報を書いておきます。
私が生まれた日は、太陽と月と火星、金星、土星が、黄道十二宮の獅子座に集まっていました。
この形に星がみんな並ぶのは非常に珍しいことで、
現に私が生まれた日も、ベネズエラで大きな地震が起きています。
私は生まれた時から、きっと何かある人なのですね。
今日はこれから渋谷へ行きます。
渋谷にあるトライアングルというお店は、もちろん先生はもうご存知の事と思いますが、そこに今度、オーラを写すカメラが入りました。
これから私は自分のオーラを撮影してきます。
私のオーラがどんなものか、たぶん先生はとても興味があると思うので、結果が出たら、またお手紙します。
矢野優子」


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