朗読劇二人芝居『ファンレターズ』矢野優子5通目

矢野優子「ティーンズハート編集部、滝田様。
殺してやる。
おまえを殺す。
必ず殺す。
ブチ殺してやる。
串刺しにしてやる。
だが、その前におまえの大事な人を誘拐してやる。そして、おまえの家に電話だ。
身代金の要求だよ。
それは絶対におまえなんかが払える金額じゃない。
おまえみたいな生まれの卑しい貧乏人が一生かかったって払い切れる金額じゃないんだ。
おまえは自分の力のなさに涙するんだ。
だが、おまえがどんなに嘆き、悲しもうが、おまえの大事な人は生きて帰ってはこないんだよ。
私がメッタ刺しにして、バラバラにして燃えるゴミの日に出してしまうからね。
滝田弘幸に悲しみと苦しみを与えたまえ。
バカヤロウ、夢野先生につまらない助言をした罰だ。
おまえは蛇だ。おまえがいるだけで、世の中の空気が汚れるんだよ。
死んでくれ。死ねよ、バカ。おまえの腐った脳味噌から吐き出される毒ガスが夢野先生を惑わせるんだからよ。
わかんねーのかよ。このボケが。わからないなら、私が思い知らせてやるよ。
だがわかってから後悔しても遅いんだからな。
これは警告だ。最後の警告だ。
おまえの住んでいる、臭いマンション 田端コーポ203号室の合鍵は既に入手してある。
観念したまえ。
大家の川崎善二郎というジジイを騙して、マスターキーを借りて作ったよ。
住んでる奴もバカなら、大家も大バカだったよ。
人をキチガイ扱いしてんじゃねーぞ。
私は自分が何をやっているのか充分わかっているんだよ。
私はこれで逮捕されても、全然後悔はしないもんね。
夢野先生とは運命の糸で固く、固く結ばれているんだからね。
刑務所でもどこでも喜んで入るよ。
でも、きっと私のことだから、そんなところにブチ込まれても、ずっとずっと夢野先生のことを考えて、恋焦がれちゃったりして、出てきた時は、前よりもパワーアップしてたりするんだろうな。
やられたらやり返す、倍返しだ!いや、十倍返しだ!
土下座したって許さないよ。
覚えておけ、バカヤロウ。
なお、今日中に同じ文面のメールとファックスが少なくとも、五十通は届くと思います。
矢野優子」

(夢野愛 五通目)


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