ガンダム外伝アーサー・ドーラン戦記 第拾弐話「揺り起こされしもの」 U.C.0083②

戦場に現れた異物、ニュータイプと人工知能。
ある者は星視の力を宿し、またある者は運命を知った……。

ジム・ピオニア マモル・ナリダ機 学習型コンピュータ “CHLOROS”

 中波したジム・ピオニアだがシステムは生きていた。バランサー不調、姿勢制御に障害、機体温度上昇、排熱機能フル稼働、電力供給トラブル……ピオニアが損傷状況を把握し、パイロットの応答を待たずに帰艦機動を開始している。

 被弾直前、アーサー機からCHLOROS解放命令を受信していた。限定解除されかけていたCHLOROSが、システムの間隙を突いて目覚めてしまう。不安定な機体はCHLOROSの解放とパイロット保護を同時に処理しはじめた。

――――コクピットキャビン安全確保、CHLOROS解放、機体損傷再チェック、強制冷却続行……
――――強制データリンク、僚機行動予測、戦況分析……
――――パイロットバイタル確認、ビーコン送信、損傷箇所電力カット……
――――遷移軌道調整……
――――tactical proposal (戦術提案) α 起動
――――ビームライフル投棄提案……
――――パイロット応答待機……
――――
――――
――――
――――提案拒否、ビームライフル再起動
――――tactical proposal α 強制起動
――――パイロットバイタル異常、tactical proposal α 要求基準値再確認……
――――tactical proposal α 実行

 パイロットが目を覚ました。僚機に抱きかかえられながらマモル・ナリダ曹長は攻撃を試みている。味方機、母艦ケセンマのリンクデータから間接射撃を行うつもりだった。

 マモル曹長が戦術提案αの力を認めている。生命維持装置によって命に別状はなかったが機体は半死半生である。排熱がまるで追いついていない。ビームライフルなど使おうものなら最悪のケースとして熱暴走、爆発の恐れさえあった。


ジム・ピオニア マモル・ナリダ機 コクピット

 機体は、オートパイロットで帰艦軌道へ乗っていたところをホス少尉に拾われた。大きな地声に倍する叫びが接触回線から轟いて、マモル曹長の意識を繋いでくれていた。

 マモル曹長は操縦桿から手を放し、ジム・ピオニアへある命令を下すべくコンソールを叩いていた。上昇した機体温度は、ホス少尉の消火剤により一時的に下がった。ビームライフル、伝送系、射撃管制は生きている。ジェネレーターの出力低下を鑑みても一、二射は撃てるだろう。

 戦術提案αなる機能が未来予測であり、敵機の行動を予測したのなら、味方機の行動予測も可能なはず。高度な未来予測を行えるシステムが、連携戦術を考えないのは不自然だった。その為のプログラムが必ずあるはずなのだ。ピオニアの正体が何であれ、使うなら今をおいて他にない。

 パイロット権限でOSのエキスパートシステムを呼び出す。単機でザクの回避先を完璧に撃ち抜いたのだ、複数機を連携すればそれ以上の力が出せるはず――――見つけた。自律同期型戦術、その名も――

――――forced date link(強制データリンク)……sighting device systems synchronization(照準システム同期)
――――Astrolabe(アストロラーベ)online

 5kmも離れずに接近飛行する僚機とデータリンクする。先を行くヤスコ機がハブになり、ホス機、追いかけるマリアンナ機と同調している。各機に搭載されたCHLOROSがリアルタイムに同期し、一つの目的のためにパイロットの意思を介さず動き出した。

 戦術提案αが起動しているマモル機とヤスコ機、二機からの命令で限定解除されたホス機、マリアンナ機。状況を正確に把握できているパイロットは一人もおらず、何をすべきかシステムだけが知っていた。

「ホス少尉、ヤスコさん、マリア、数秒後に射撃指示があります。ピオニアに従ってください」

「待て、マモル何のことだ」

「ピオニアには未知の射撃管制システムが搭載されています。ゲルググだけを撃ち抜けるはずです」

「マモル君、それはあなたがやっていることなの?」

「そうですヤスコさん。僕を信じてトリガーを合わせてください」

「わかりました。マリアちゃんもいいわね」

「おいヤスコさん! マモル、何する気か知らんがお前は撃つな。ジェネレーターがもつか分からん」

「少尉のおかげで温度は下がりました。撃てますよ」

 全員がマモル曹長の提案を理解したわけではない。ヤスコ曹長はマモル曹長の態度から、ホス少尉は膨大なデータリンク流量から朧気に想像を働かせているに過ぎない。
 
「戦場のど真ん中で非常識に洪水みたいなデータリンクしてるの、あんたの仕業なわけ?それにぶっつけのアドリブなのよ?」

「大丈夫、ピオニアに任せて。マリアのスナイパーライフルが要なんだ。信じてくれ」

「……いいわ。その代わり私に任せなさい。あんたの機体に負荷をかけられない」

 会話の最中、アーサー機を除く全機のコクピットモニターに戦術提案αのオートマチック射撃管制が現れていた。


 CHLOROS計画の前身、頓挫した無人機開発プロジェクトが目指した複数機同調攻撃 “Astrolabe(アストロラーベ)” 。CHLOROSの未来予測とピオニーユニットが持つ高解像度復元通信を合わせた自律同期型戦術パターン。
 リアルタイムに変動し続ける繊細な射撃管制を、複数のMSが分散しながら独立して行う複雑な機構は、ミノフスキー粒子が存在しない戦場ならば可能かもしれない。
 前大戦以前なら当たり前に行われていた戦術だが、ミノフスキー粒子の登場と機動兵器の運動性向上により、今となっては不可能な話である。

 月管区開発工廠がピオニープロジェクトから手に入れたのは、高精度予測技術だけではない。ミノフスキー粒子影響下にある双方向通信の欠損データを、高解像度に予測復元するAI系技術も含まれていた。

 人の手を介さない機械同士の対話の先に導かれる結論。人の意思が介在しない機械による意思決定こそ、無人機開発が越えるべき最大のハードルなのだった。

 月管区工廠のシミュレーションによれば成功率は三割を切っていたが、マモル曹長は知る由もない。人の助けを借りながら、人ならざる意思が戦場に現れた。


回廊地球側 出口付近 ムサイ艦近傍 ゲルググ&量産型アクト・ザク vs ジム・ピオニア

 アーサーのジム・ピオニアがザクに接近する。自由に見えた大型ガトリングの射角だが、よく見れば制約があるようだ。反動抑制の都合だろう、射撃中は腕部と胸部の角度が固定される。
 自由に動けるのは撃ち始めまで、射撃が始まれば3、4秒間上体は動きを止める。その際の姿勢変更はスラスター頼みとなっていた。

 短い観察ゆえ確信とは言い難かったが弱点は見えた。問題は、ゲルググがビームライフルを担いでいる事実。どういうつもりか知らないが、アーサーの動きに合わせザクを挟んで点対称の位置に付こうとしていた。ザクを盾にしている間は、弾速の速いビームライフルといえど誤射の危険を冒してまで撃ってこないだろう。
 だが高機動型と思しきゲルググの加速力に二対一の状況、ジムの背後を取れるはず。敵の視線がジムに向いているのが明らかな上、構えるだけで撃ってこないのが気になった。

――何が狙いだ、鬱陶しい奴め。

 しかし撃ってこないのは好都合。撃てない理由があるやもしれず、機体の稼働限界が迫っている以上、ザクを処理した直後ゲルググの一撃を“どうにか出来れば”後の先を取れる。

 アーサーの咄嗟のカウンターがクェイカー大尉に接近を躊躇わせていたのだが、当の本人にその自覚はなかった。後方のムサイ撃退にも気付かない有様だ。ライフセーバーの異名をとるアーサー・ドーラン少尉といえど、ジム前期生産型のレッドゾーン並みの加減速を繰り返して、とっくに飽和していた。敵艦大破を見逃していてはパイロットとして三流だ。高機動戦闘はアーサーの神経を擦り減らし、命を縮めていた。

「推進剤残量26%、ヒートゲージ90……酷いもんだな」

 気合でも入れるべき場面なのだろうが強がり一つ出てこない。シールドはなく、マシンガンの残弾はザクに叩き込んでお釣りがあるかどうか。ジリ貧だった。仕掛け時は今をおいて他にないと思い込み、後方へ一瞬注意を向けた時、思わず声が漏れた。

 僚機が固まって接近している。一機は損傷していた。ゲルググに手間取っている間に何かまずいことが起きたようだ。仕掛けるどころではない、下がらなくては。

「データリンクサイン?」

 プリセットにない暗号通信が翻訳されヘッドアップディスプレイに投影された。

『一撃離脱せよ。MS-14任されたし』

 マモル曹長からだ。よく見れば被弾したのは彼だというのに、ゲルググを任せろと言ってきた。アーサーは初めて自分の状況に気が付いた。ゲルググ、ザクを相手に一機で深追いしている。傍から見れば身勝手な戦闘。頭に血が上って一人よがりになっていた。自分は隊長で部下を率いる立場だというのに。

 それに比べてなんと頼もしい仲間達か。酷いのは機体じゃなく己自身だ。
 隊長の資質に問題あり、月管区工廠で言われた通りではないか。前を見て飛ぶしか能がない己が恥ずかしく、そんな自分を守ってくれる仲間達がザクを墜とせと言ったのだ。
 期待されている。任された。やってみせねば。

 視線を敵機から戦場へと拡大する。サブカメラ映像からヘルスチェックモニター、計器類からサイドパネルまで大きく首を動かしてぐるりと見渡した。久しぶりに息を吸えた気がする。ジグザグ回避機動でにじり寄るマニューバーを鈍角に直し、ザクと並走した。

「任せたぞ。こっちも任された!」

 ガトリングの砲口がぴったりついてくる。直撃してもおかしくない。急減速して真下に潜り込めばガトリングの餌食、ゲルググのビームライフルも飛んでくるだろう。確信があった。ならば追い越して切り伏せる。温存していたマシンガンを前に突き出し、ザクの逃げ道が左に限定されるよう連射しながら、右上方へ駆けあがった。


 ザクはガトリングの砲口を合わせるべく機体を仰け反らせる。機体正面をジムへ向けなければならない理由があった。アーサーの見立ては当たった。

 巨大なガトリングは水平方向に比べ上下角、特に仰角を狙う際に動きが制限される。下向き、俯角に構えれば肘関節の先、肩関節と胸部の接続系まで使って反動を受け止められるのに対し、仰角に構えるとマニュピュレーター基部と肘関節に多大な負荷がかかってしまう。
 人体を模倣した機械ならではの不自由さだ。

 アーサーがベテランパイロットだからこそ気付けた弱点。量産型アクト・ザクを駆る少年兵はジャイアントガトリングの癖を掴んでいた。武器の欠陥を補う動きをするのは当然だが、ベテランパイロット相手に何度も同じ攻撃が通用する訳はなかったのだ。

 少年が量産型アクト・ザクを素早く旋回させたとき、ジム・ピオニアの脚部スラスターが一際強く輝いた。右脚が見えない壁を蹴って進行方向左・内側軌道へ機体を押し戻す。左膝を屈曲させて脚底部スラスターを噴射すると、機体は前方宙返りをしながらザクの頭上を飛び越え背後へ迫る。
 マシンガンを握る右手をゲルググへ振り向けた反作用で前方回転を加速させている。だがマシンガンの銃口は当てずっぽう、明後日の方角を向いているからコケ脅しにもならない。背後はがら空き。自分がゲルググのパイロットなら誤射を覚悟してビームライフルを放つかもしれないタイミング。

 ジム・ピオニアの視線は来た道を振り返り、ザクの背中を見つめている。メインカメラが接近する仲間達の存在を捉えアーサーに教えてくれた。

 アーサーの正面から閃光が迸り、機体ギリギリを飛び去った。誤射すれすれの援護射撃。普段なら肝が冷え硬直したところだが、決して当たらない気がした。恐怖はなかった。
 ゲルググからはアーサー機が影になって射線が隠れている。ニュータイプだろうと躱せまい。背面モニターは見ずに、やせ我慢半分、誇らしげに正面を見据えた。

――背中は任せた。 迷いはない!

 ザクの頭上を飛び越えながら、左手のビームサーベルを機体の正中線へ引き寄せ刺突の構えに入る。左肘を引き、コクピットハッチの前に拳を置いた。
 ジム・ピオニアを支配したCHLOROSが未来予測偏重制御の攻撃モーションを瞬時に組み立てる。通常なら衝突を回避するため、直進を要する“突き”モーションは選択されにくい。推論型ナビゲーションコントロールの攻撃モーションを無視した、パイロット追従とでも呼ぶべき“未来予測”が、アーサーの意を汲んでビームサーベルモーションを変更、サーベル出力を上昇させた。

 ザクの回避運動は既に始まっている。しかし一足一刀の間合い。左肘を伸ばし拳を押し出すと、通常より伸びたビーム刃が首の後ろから胸部まで一直線に貫いた。
 ザクの頭部が真上に吹き飛び、血飛沫のごとく火花が立ち昇る。小さな爆発が起こり、動きを止めたザクは下方へ流れていく。暗礁宙域を照らしたザクⅡF2型やドラッツェほどの鮮烈な爆光は無い。

 一刀の下に切り伏せられた機体は、まるで生身の死体のようにただ静かに動きを止め漂っていった。



 暗闇の宇宙空間を幾筋ものビームが切り裂いている。モニターが乱れる。アーサー機の表面温度が僅かに上昇、ビームに反応して警報が鼓膜を叩いた。

――ピーピー喚くな。どっしり構えろ。

 サーベルを引き戻した勢いで、機体を捻ってゲルググへ向き直る。ピオニアは既にゲルググへ照準環を重ね、早く撃たせろと矢の催促を寄こしていた。アーサーは振り向き終わると同時にゲルググへとどめを刺すつもりで踏み込んだ。

 しかし目にしたのは信じがたい光景。ゲルググは大胆にも前進してビームの猛攻を抜けてきた。


 ライフセーバーを囮にした一斉攻撃には肝を冷やしたが、どうということはない。フォーメーションは至極単純、些か精度が上がったところでジムのビームライフルなど恐れるに足らぬ。ビームスプレーガンの頃からゲルググの敵ではなかった。

 とはいえモデレーターからの思考介入と攻撃に大きな差があった事は気にかかる。耐ビームコーティング仕様のシールドがなければ命を落としていた。
 敵の意図を読み違えたのはモデレーターの疲労か、思考を欺瞞できる者がいたか。最後の可能性を捨てきれないまま、ゲルググ・ペルートは必中の間合いへ飛び込んだ。

「さようならライフセーバー。貴方は命を懸けるに相応しい敵でした」

 結局、アーサー・ドーラン少尉と精神感応は起こらなかった。暑苦しい凡夫からは何も感じられず、達観した視線の主が別にいるようで、思考を欺瞞した者かもしれずクェイカー大尉の興味はそちらに移っていた。

――避けて!!!!

 サイコミュ・モデレートシステムの思考介入。少女の恐怖がクェイカー大尉を乗っ取った。右肩スラスターを全開、ゲルググ・ペルートがサイドスリップする。強制噴射の勢いで左へ投げ飛ばされた。

 コクピットブロックを狙った高威力ビームが、耐ビームコーティング仕様のシールドに直撃した。躱しきれず、機体右半身が高温に炙られる。
 フォーメーション射撃を防いだ影響で耐ビーム機能は失われており、さしものシールドも耐え切れず砕け散った。

 貫通したビームが右肩部に被弾し機体温度が急上昇、またも右半身にトラブルをきたしている。肩から先は動かず、命を救ったケンプファー由来のスラスターは沈黙した。

 右腕が死んだ。いよいよ左腕一本となってしまったがゲルググ・ペルートは生きている。

――私が二度も死にかける! この私が!!

 ルイーズの思考介入ではなくクェイカー大尉自身が、アーサー・ドーラン少尉と彼が率いる特務部隊に戦慄した。強がり見下し自らを奮い立たせたところで、先刻のカウンターが脳裏を離れない。

 特にアーサー・ドーラン少尉、この男は危険だ。たった今も、このクェイカー・モウィンを目の前にしながら、背中を晒してザクを墜として見せた。まともではない。異常者だ。

 でたらめな加速で後退しながら、推力低下も顧みずにビームライフルを撃ち放った。コクピットから僅かに狙いが逸れてライフセーバーの右腕を吹き飛ばす。二射目のチャージに約15秒もかかってしまう欠陥ライフルを手にする己が歯痒く、苦虫を噛み潰した顔でジムの一団を睨みつけた。

「まぁ弾避けはまだあります。役に立ってもらいましょう」

 普通なら酸欠と貧血で意識を持っていかれる急加速の最中、努めて冷静に敵集団を舐めまわす。スナイパーが一機、近・中距離が二機、死にかけが一機。恐らくルイーズが使ったスナイパーだろう、なるほど腕は良い。しかしライフセーバーは片腕を失い一機は瀕死である。

「もう一度、ひっかきましょうか。フフフフフフッフフフフフフフフ」

 ライフセーバー率いる改良型ジムは間違いなく強敵だ。手段を選んで勝てる敵ではなかった。劣勢を自覚して尚、勝機を信じたクェイカー大尉は次の弾避けへ向けて飛び去った。
 量産型アクト・ザク二機と……スキウレのスナイパー。ローズウッド少佐の置き土産にも役に立ってもらうとしよう。


ゲルググ・ペルート コクピット

 今日、クェイカー大尉は二度も命を落としかけた。シールドバッシュカウンター、強敵を囮にした高出力ビームの直撃。ニュータイプ研究所が実施した模擬戦以外でこんなことは一度もなかった。

 なんという日だろう。実戦だ、命のやり取りなのだ。人生最良の日ではないだろうか。使命も理想も、今この時、この戦闘へ導くための絵空事だったのではなかろうか。

 ニュータイプは執着を捨て去らなければならない。人類の新たなステージに個人の執着は持ち込めない。しかし……これは酷というものだ。闘争のために作られた命が輝ける場は、戦場をおいて他にない。

 地球連邦からの分離独立を標榜する反連邦組織が拵えた、新世代兵士創造プロジェクト。名前を取り繕ったところで旧世紀技術の産物に過ぎず、フラナガン機関の改良遺伝子も発現しなかった出来損ないだ。優良遺伝子のおかげで選別に残り、強化臓器に適正があったためニュータイプインキュベーションユニットを任されもした。

 しかし、そんなものが生きる理由になるはずはない。当然だ、作り出した者たちの傲慢に従ってやる道理などあるものか。

 だが運命が人を導くのだとしたら、生まれも力も今日の為に与えられたのではなかろうか。人間性を奪われ、命のバトンを繋げない一代限りのひとでなしは、理解を得ようとしていた。手応え、実感、確信、そんな不確かさを排除した言葉が見当たらない。

 戦いの定め。宇宙を駆け命を奪い合う者。それがクェイカー・モウィン。自らを悟った男は、未来に手を伸ばすためジムの一団に背を向けた。

「なるほど、運命ですか。ニュータイプっぽくていいじゃありませんか。
「掴むにせよ死ぬにせよ、今がその時……そうなのですね!フッフフフハハハハハハハ!」

 隻腕のゲルググを駆る男は、生まれて初めて自らの生い立ちに祝福された気がした。




――第壱参話へ続く


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?