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スイミングと初恋 完結編

長い暗黒時代を超えて、ヨシタロウの恋は花開いた。

その喜びを記しておこう。

前回、父との日々の入浴における猛特訓により、ヨシタロウはミオちゃんと同じ級に上がることになったのだが、「クラス人数の関係で引き続き別クラス」運用だった。それが1月末くらい。

しかし、その後 無駄にコツを掴んだヨシタロウはさらに進級し、2月にはミオちゃんを追い越して、正式に別グループになる。「ごうかくしたら、おもちゃかってくれるんだよね?」うんまあ、それは小さいやつなら良いけど、君は本当にミオちゃんと一緒になりたいのか?父はそう思った。

離れ離れの時は続いたが、スイミングの60分のうち最後の10分の自由時間がある。
束の間の逢瀬。私は目を細くして眺めていた。尊い。そんな風に思いながら。

しかしどうだろうか、4月末の試験でいよいよミオちゃんが合格。不合格が続くヨシタロウと合流した。

合格したその日、更衣室で着替えているミオちゃん、「ごうかくしたからアイスたべていいんだよね?」と、芳川家より財布の紐キッチキチの父に懇願しているミオちゃんの顔は嬉しそうだ。

そこに、コーチが近づいてくる。

「ミオちゃんおめでとう!次から違うグループになるけど大丈夫?お友達とかいる?」

そしたらミオちゃんはこうだ。

「おともだち、ヨシくんがいるから!」

なんと晴々とした笑顔だろう。いつの間にこんなに仲良くなっていたのか。

「ミオちゃん、けっこんしようね」

うちのヨシタロウはなんてことを、なんてタイミングで言うんだろうか。ひきつるミオちゃん父。これでますます親同士はギクシャクである。


そうして、男ばかり4人でやっていたヨッくんたちのグループは、今田美桜ちゃんのごとき派手な顔をしたミオちゃんが5月から加入。ミオちゃんをめぐる骨肉の争いが起こるかと思ったらそんなことなく、他の男子3人はあまり浮ついた様子もなくスイミングに没頭しており、一方でうちのヨシタロウは終始ミオちゃんを突っついてケラケラ笑うなどめちゃくちゃいちゃついており、なんだろう、こうなるまでの彼の苦労も努力知っているし、父として息子の恋が実ることも、子どもの戯言とはいえ今田美桜ちゃん級の義理の娘ができるのであれば、喜びしかないはずなのだが。


なんか、段々腹が立ってきている。

息子のリア充ぶりが眩しすぎて、つい自身の青春と照らし合わせてしまうのだろうか。

チャラチャラしてむかつく。


あいつの何が良いのだろうか、誰か教えて欲しい。こうして思ってもいなかった形でスイミング恋愛リアリティショーは盛り上がりを見せているのだが、恋自体はいちおう成就したと思われるので一旦完結とする。

ちなみに男同士でミオちゃんを取り合うような揉め事は見る限りないのだが、ヨッくんと前のクラスで一緒だった女の子、私の観察ではおかずクラブのゆいPさん似の女の子もなにげにヨッくんのことが好きなようで、みかねたのだろうか。仮にゆいちゃんとしようか。

先週ゆいちゃんがミオちゃんに突然蹴りを入れるという事件があった。

いったいなぜとコーチ陣が慌てていたが、このスイミングスクールをおそらく唯一恋愛リアリティショーとして観ている私だけが答えを持っている。

それは嫉妬。痴情のもつれである。

今後、バトルロイヤル編として進捗があれば、またご報告します。

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