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エアコン設定温度戦争 男性育休記35/68

この日は寒かったので鍋にした。鍋、楽である。
野菜を切る。全部鍋に入れて煮る、場合によってはアクを取る。
これだけで完結する料理というのはすごい。世の中の料理は全部これで良いんじゃないかとさえ思う。
鍋つゆも、買ってきても良いし、作るのもいいし、なんもなければ全然麺つゆでいい。麺つゆをよく見れば鍋つゆの場合は1:7とか、比率が書いてあるはずだ。簡単が過ぎる。
簡単が過ぎて罪悪感があるので、私は鍋の時によく肉団子を作る。
この日は蓮根をすりおろして豚挽肉と混ぜて肉団子にした。粉山椒を入れてエッジを効かせる。ネギと人参を刻んで混ぜ込む。
それにしても蓮根はすごい。すりおろして入れるだけで劇的に美味しくなる。同じ用途でも、大根ほど水っぽくならないし、長芋ほど粘り気も出ないので扱いやすい。あとなんか、咳とかにも良いらしい。別にすりおろさないで普通に具にしてもいいし、めんどくさくなければ蓮根そのものの穴に挽肉を詰めても良い。
薬味として、切った柚子の皮を添えて完成とする。
義両親の持ち物であるが、庭に柚子の木が生えていて無限にもいで良いそうなので、使わせてもらった。まだまだある。
2歳児は肉団子は食べなかったが、具の人参は食べてくれた。型抜きで花形にしたのが良かったのだろうか。もちろん、型抜きで出た細切れは肉団子に練り込まれている。可食部モンスターの基本ムーブである。他は、ふりかけごはんは食べてくれた。

それにしても夜が冷えるようになってきた。あまり寒いと、夫婦間に摩擦が起こる。戦争が起こる。

妻は極度の寒がりであり、私は暑がりなのだ。私の立場だけから言わせて貰えば、「暑いにも寒いにも強いだけ」という自認なのだが、まあそれは良いとして、とにかく夫婦の温度感覚に大きな乖離がある。

若い頃極端に貧乏だったので、エアコンを使わずに暮らしていたことが原因かもしれない。寒いなら布団から出なければいいし、暑いならコンビニに行くか水シャワーでも浴びてどうにかした青春だったのだ。東京都なのに水道代が込みで家賃37,000円の家で暮らしていたから。水は浴び放題だった。

人並みに収入を得た現在は、日常の間隙をぬってサウナ、水風呂を決めるので、ますます代謝が強くなった。100度のサウナなら10分居るし、10度の水風呂なら3分は入る。
だが、冬場の妻の実家の暑さには長く耐えられない。エアコンはもちろん、別途ガスファンヒーターと、デロンギのオイルヒーターなども付いていて暑い。北海道でなく東京都の話である。なので私はTシャツとスウェット、耐えきれない時は下は短パンになることさえあるが、妻の実家メンバーからは「寒くないの?」と、声をかけられまくる。これは心配されているのではない。見ているだけで寒々しいからやめてくれ、と非難されているのだ。妻の実家の皆さんは、上下しっかり着た上にカーディガンを羽織り、あまつさえユニクロのダウン素材のベストを着ている。全員だ。
そんな家で育った妻も軟弱で、家のエアコンは26℃だ。赤ちゃんはその中で3枚着ている。私からは暑そうに思える。意思表示ができない赤ちゃんに代わり、さすがに暑いんじゃないかと抗弁したが、「こんなに寒いのに何を言ってるんだ」と、お前が異常者なんだよと非難される始末。
2歳児はどうかというと、やはりパジャマでも3枚くらい着せられた上で厚手のベストのようなスリーパーを着せられた上で「ちゃんとお布団かけなさい」と怒られている。彼は彼でまだ「暑い」と文句を言う概念が無いので黙って従う。ただ、布団は蹴飛ばしながら寝る。それを妻は寝相が悪いからだと思っている。私は暑いからだと思っている

どうにかできないものかと思い、子育て情報サイトを一通り閲覧したところ、軒並み「20℃を目指しましょう」書いてあった。これは勝機かもしれないとスマホの画面を示しながら抗議をし、さらにダメ押しで「夏場、夜に25℃を超えたらそれは熱帯夜と呼ばれる。おれは現にこの軽装で汗ばんでいる。26℃という設定はおかしいのではないか」と勇気を出して告発した。
だが妻実家界隈では私がマイノリティ、私が極度の暑がりの奇人として認識されているため話半分で聞かれることになる。ただ、熱帯夜のくだりは多少響いたようで、結局エアコンは24℃の設定ということになった。私はまだ不満だったので「24℃でも汗かくよ」と追訴してみたが、「じゃあ着替えれば良いじゃん」と返され、ほぞを噛む思いだった。

早く息子たちを育てて、代謝を鍛え、過半数を目指そう。政権与党を取って、室温20℃の世界を実現しよう。そう心に誓いながら、Tシャツを着替えた。

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