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父のための寝かしつけ入門 男性育休記30/68

寝かしつけ、大変である。今日は本気を出してそれを語ってみたい。
私にとって本気とは、すなわち目次をつけることである。

ネバーエンディング絶望

寝かしつけとは絶望との戦いである。毎日ある育児の最後のタスクなのに、終わり時間が見えない。10分の時もあれば、3時間のときもある。5分で寝ても30分後に起きることもある。そして、これが何歳まで続くのか、つまりあと何年やらないといけないのかという意味でも終わりが見えない。短期長期双方の絶望を備えた強敵、それが寝かしつけである。

うちの場合は2体のキッズがいるので、絶望も倍。いや、倍どころか、どちらかが泣くか騒ぐかするともう片方も起きるのでその相乗効果たるや倍以上である。もし3体だったらと考えただけで叫んでしまいそうだ。ただ絶望を嘆いても仕方がない。毎日夜は来る。一つずつ、問題を分解して解決策を考えたい。それが大人の戦い方だ。

2歳児の場合

2歳児の寝かしつけは、始まった時に既に大勢が決まっている。
どういうことかというと、寝かしつけが始まるまでの朝から夜までに、「どれだけ2歳児の体力を削れているか」。ここにかかっている。
ちょっと前にネットの記事で、スイミングに通わせるお母さんの目的が、「子どものHP(ヒットポイント、体力)を削るため」だというご意見を見た。私の少ない寝かしつけ経験に照らし合わせても、良策に思える。HPを削る、なるほどすげーわかりやすい。水泳技術が身につく、肺活量が鍛えられるなどはむしろ付随的な要素なのだろうなと思う。
だが我が家には現状、スイミングの送迎とかをする時間的余裕が無いのが残念だ。そんな我々が取っている戦略はシンプルに「遅い時間に昼寝をさせない」だ。彼が小さい頃は、それこそ第一子で勝手が分からなかったのもあるが、たとえば17時くらいに唐突に遊び疲れて寝てしまったとして、「見て、寝ちゃった」「寝顔可愛いね」「うふふ」「あはははは、写真撮って"みてね"に上げちゃお」みたいな、アホのようなことを、アホの顔をして言っていた。そのまま19時とかまで寝かせておいて、いざ21時過ぎに本格的に寝かせようという時に「なかなか寝ない」とボヤキ始めるのだ。そりゃそうである。今思えば完全にアホの所業、狂気の沙汰である。

今は違う。17時とかに寝そうになったら、全力全開で2歳児の気を引く。秘蔵のお菓子を出して食わす、好きな番組を見せるし、劇場版トーマスのdiscだって引っ張り出す。肩車だってしてやるし、早いけど風呂に入れてもいい。とにかくこんなハンパな時間に寝かせて良いことは何もない。全力全開で彼の眠気を覚ましておく。逆に、この時間に眠くなるなら、早めにメシ風呂を片付けて、さっさと寝かせる。こういう場合寝かせる時はスッと寝る。むしろラッキーだと思うくらいになった。アホを脱した。学んだのだ。

というわけで、2歳児の寝かしつけは始まる前に大勢は決していると、もう一度書いておく。その上で、仕上げとして実際の寝かしつけの動きはをどうなのかも詳細を説明しておく。
我が家の場合は「かくれんぼ、しよか」と言ってまず寝室に連れて行く。そして2ターンくらい、布団に隠れる、カーテンに隠れるなど実際にかくれんぼに興じてから、「じゃ、テレビ見よっか?」「みるー」という流れになる。ここでいうところのテレビは、正確にいうとスマホで見るYouTubeのことである。見せながら消灯し、ここでだいたい2-3本、時間にして15-20分くらい動画を見させて、「おしまいにしよっか」と言って終わる。スムーズに行く場合はこんな感じである。

これが体力の削りが甘い場合、「えほんよむの」といって4-5冊読まされるとか、YouTubeが1時間以上終わらないとか、「のどかわいたの」と突然ジュースを飲みたがって取りに行って飲ませてもう一度歯磨きするとかある。スムーズに行かない方のバリエーションはほとんど無限だ。あまり思い出したくない。

しつこいようだが、日中にどこまで体力を削れるかが勝負だ。たとえばこの日、育休30日目は幼稚園が午前で終わる日だったので午後まるまるかけて近所の公園をめぐる散歩ツアーを組んでいる。用なんてない。2歳児が行きたいと希望したわけでもない。ただ体力を削るため、その一点を目指して2歳児は公園に放たれるのだ。

0歳児の場合

0歳児の寝かしつけについて、先に妻の手法を紹介しよう。彼女は必殺技を持っている。
まず赤ちゃんをベッドに横にする。そして妻もその隣りで横になって、授乳しながら寝かす。いわゆる「添い乳(そいちち)」という手法である。乳を飲みながら、赤ちゃんは寝る。えっ?そんなことで寝るの?と素人の方は思うだろうが、結構な確率でこの必殺技は効く。原理は分からない。効くなら、寝るなら、それでいい。

だが私は父親なので、乳は出ない。母親でも、母乳の出が悪い方もいるだろう。乳がでない人間がとれる戦略で、私のおすすめはシンプルなやつだ。

ずばりスクワットである。

  1. 抱っこ紐に赤ちゃんを搭載する。

  2. 寝るまでスクワットする

以上である。

いちおうコツはあって、「寝かしつけをしている」と思わないこと。つまり、「おれはスクワットをしている」と考えることである。スクワットが主、寝かしつけが従である。そうすればどれだけ寝なくても悩まないで済む。

私はリングフィットアドベンチャーをたしなむもので、しかも結構真面目にやっているのでトレーニング後に教えてくれる筋肉うんちくをちゃんと覚えている。(偉くない?)
それによると、「何かひとつだけ筋トレをするとしたらスクワットが最も優れたトレーニング」らしい。いわく、スクワットで鍛えられる大腿筋(ふともも)は人体の筋肉の中で最も大きい筋肉であるため、まずここを鍛えるのが良い。誰だって、まず立ったり座ったりする、歩いたり走ったりする筋肉が重要なわけだ。だからスクワットをしておいて損ということはない。

私の場合は、リング(略)をたしなみ続けた結果、ゲーム内ではレベルが230くらいあるのだけど、そのおかげかただのスクワットなら基本的に無限にできるようになった。

赤子を搭載した場合は、100回を1セットとしてやっている。

先述の通り、別に寝かしつけようとか考えなくても良い。私の場合はスマホでKindleを立ち上げて、unlimitedで適当に固い本を読む。読みながらスクワットをし、頭の中で100を数える。このとき、赤ちゃんのことはこれっぽちも考えていない。
100終わったら、赤ちゃんを見る。明らかに起きている、あるいは寝てるっぽいが脱力が浅いなと感じた場合、続行である。
また、100回スクワットをする。
そしてまた赤ちゃんを見る。
場合によって、また続行する。
肌感覚だが、だいたい300もやると、まず寝る。500やっても寝ないということはあまりない。
で、まあ寝たなと思って、ベッドに静かに下ろす。
この際、私も慣れない頃はゆっくりと水平にして、静かに背中を下ろすなどしていたが、それは神経を使うし時間もかかる割にあまり意味はない。もちろん軟着陸させないと起きるわけだが、動作としてはスッスッと素早く、移動する、水平に倒して置く、抱っこ紐を外す、布団をかける。これを10秒くらいですべてこなせるのが好ましい。「背中センサー」などと界隈で言われる問題はあるが、置いてから多少マゴマゴ動いたとしても、とにかく素早く寝かせてしまえばそのまま寝ることが多い。

だがもし、失敗して起きてしまったら。

あるいは5分後、10分後にうめき始めたらどうだろうか。

それは、「トレーナーがもっとスクワットをしろと言っている」と諦めて、さっさとまた紐と赤ちゃんを装着してスクワットをすればいい。ただ、これも肌感覚だが、2ターン目は100-200くらいで寝ることが多い。「寝かしつけをしている」と思うと苦しいかもしれないが、「筋トレをしている」と思えばきっと乗り越えられる。

以上、長々と語ったが、要点は最初に書いた通り「寝るまでスクワットをする」の1点に尽きる。

これを、「いやいや、あっしは芳川さんと違ってリングもやらないし、頭脳労働者なもんで、スクワットなんてやっても50。ていうかそんなやり方はスマートじゃないよね。もっとKPIの高いスキームがあるはず」などと言うお父さんも世の中にいるかも知れない。

そういうお父さんがもしいれば、私の前に立ってほしい。そして背を向けて下さい。そうそうそう。そんな感じ。もうちょっと向こう向けますか?そうそう。良いですね。

そしたら私はそのお父さんの股下に後ろから左手を差し込み、ぐいと持ち上げて右腕を首にかけて、「T」のような形でホールド。そのままそのお父さんの背骨を折らんべくグイグイと両腕に力を入れる。
つまり、アルゼンチンバックブリーカーである。そして背骨をバキ折ってから、床にお父さんを投げ捨てて、こう言う。

「バカやろう!鍛えなさい!お肉を食べなさい!」

0歳児、我が家の場合は現在6-7キロとかそんなもんである。この程度の「重り」を持って500-600程度のスクワットができないのであれば、この先、育児はできないと思った方がいい。父親が母親に育児で勝てる部分があるとしたら、「フィジカル」ただ一点である。スクワット、やってればいくらでもできるようになるし、その筋肉は絶対に無駄にならない。子どもはどんどん重くなるのだ。

ああ、自分がこんなにマッチョなこと、テストステロン先生みたいなことを言うようになるなんて、昔のヒョロヒョロだった頃を思うと感慨深い。


寝かしつけはチームプレイである

とはいえ、とはいえである。

我が家の現状としては、2歳児も乳児も妻にべったりして眠ることが多く、ほぼ妻が寝かしつけている。2歳児にはスマホで動画を2-3見せて寝かせ、乳児へは、添い乳。本来私だってスマホを見せることはできるのだが、2歳児はすっかり赤ちゃん返りしていることもあり、妻にべったりというか、乳にべったり、乳を触りながら動画を見て寝ることが彼の中で大正義なので、ここも最近、私が代わってあげることができない。妻はとても忙しそうだ。

そのとき私は何をしているかというと、論理的には何もしなくてもいいのたが、やろうと思えばAirPodsProを着けてNetflixを見るくらいのことはできるのであるが、実際は「あえて何もしないで起きている」。美しく言えば、「応援している」。

忘れてはいけない。寝かしつけはチームプレイである。最近の妻頼りの我が家の状況を野球に例えれば、妻がピッチャーでありキャッチャー。私は守備をしているー外野手。

「何もしない」というのは、「寝たりスマホをいじったりしない」ということで、これは野球の試合で外野手がそんなことをしないのと同じで、同じチームとして、ピッチャーが頑張って投球しているのだから、後方からその背中を眺めながら応援しているのである。実際頭の中では妻のことではなく次の日の献立を考えていたりするが、真摯な態度を貫く。そうでないと、ピッチャーがムカつくだろうことはわかるからだ。Netflixなんて見ようものなら、ピッチャーは外野に豪速球というかスマホを投げてくるだろう。

大切なのは、お互いにチームメイトとして尊重し、できるポジションでベストを尽くすことだと思う。

しかも我が家の場合は、敵は二人だ。妻が2歳児にスマホを見せている間に0歳児がグズれば、すかさず私が抱えてスクワットをする。どちらかが泣くとかでうるさいようなら、いったん私が別の部屋に移動してひたすらスクワット続行する。
そして2歳児が寝た頃に、静かにまた寝室に戻る。0歳児が果てるまでスクワットをし、ベッドに置く。そのとき寝かせた振動で、あるいはしばらくして、もし0歳児が起きるようだったら必殺の添い乳炸裂である。これはまず間違いなく、効く。

これらのコンビネーションを、私たちは終始無言で、阿吽の呼吸で行うところまで来ている。そして心の中でハイタッチをして、大人も寝る。

絶望を乗り越えろ

子どもが眠らなくて永遠に思えるような夜もあるだろう。連日寝不足で夫婦共に疲弊してイライラすることもあるだろう。
私が考える、父親にできることはとりもなおさずスクワットである。筋肉は朝が来ても残っている。筋肉は裏切らない。鍛えた大腿筋で、眠れぬ夜を飛び越えろ。絶望を乗り越えろ。パワー!

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