テレビの趣味 男性育休記39/68
2歳児を幼稚園に送ってから帰宅し昼食を作るまで、2時間程度自由時間がある。この間、掃除と洗濯が終われば、妻と一緒にNHKの朝ドラの録画を見ている。
妻とは、テレビの趣味が合わない。
妻はまず、重度のジャニーズオタクである。嵐を皮切りに、NEWS、KAT-TUN、キスマイ…と来て、現在は目下デビュー直後の「なにわ男子」に夢中である。GUとコラボしたらしいトレーナーを毎日着ている。いま挙げた以外のグループにも、各グループに推しメン、ジャニーズ界隈だと「担当」と言うようだが、それを持っている。
いまの朝ドラは、SixTONES(これでストーンズと読ませることに、今でも納得いかない)の松村北斗さんが出ているので見始めたという側面が強い。ちなみに妻の母も熱狂的な北斗さんファンである。だから彼が表紙の、ノンノだったかananだったか忘れたが、義母のために私が買ってきたこともある。
話を戻そう。
「妻とはテレビの趣味が合わない」
というより、エンターテインメントに対する向き合い方そのものが合わない。私はストーリーを見ていて、妻は「画」を見ているといった感じだろうか。
2021年のドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」を例にとろう。非凡な苗字を持つ大豆田とわ子さんが、平凡な苗字の佐藤、田中、中村さんという3人の元夫とてんやわんやする話で、会話の一つ一つがウィットと示唆に富む傑作であった。
ただ、画が強いわけではない。妻視点であけすけに言えば、要は美少年が出てこないので、妻は集中して見ない。悪意があるのでなく、本当に集中できないのだと思う。だから洗い物をしながら見ようとしたり、洗濯物を予約で回す設定をしながら見ようとしたり、やっと座ったと思ってもスマホをいじりながら話しかけてきたりして、「音」を、つまりセリフを全然聞いていない。だが時折画面を見て、話が展開しているのはなんとなく理解したようで「あれ、なんでこうなったの」と私に説明を求めてくる。聞くならちゃんと見ろよ、などと思うのは早計だ、そのような忍耐力ではこの妻の夫はできない。私は自身で画面に集中しながら、できるだけ簡潔な言葉で、端的に、要約して説明する。これだけ丁寧に紡がれた物語を要約するなんて冒涜だな、と内心思うがそれは言葉に出さない。「で、どうなったの?」「死んだの?」と、物語そのものに対しては結論だけ求める小学生のような感性である。私はそれに答えたり、答えなかったりする。
妻を非難しているのでない。むしろある意味信頼している。というのは、妻が面白いと判断する場合は必ずその作品はヒットしている。大豆田とわ子も、最終回まで完走できた、妻が見ることができたのは、これは珍しい部類なのだ。たとえジャニーズが主演だとしても、1話で興味が無くなって見なくなることは多々ある。辛辣な、現代的な視聴者なのであろう。ちなみに、妻に顔と名前を覚えられたお笑い芸人は例外なく売れる。また妻は、暴力と性描写NGなのでほとんど全ての洋画を観ることが不可能である。一方で私はアメリカのパニック映画とかホラー映画が大好きだ。長年「BONES」という、死体を解剖して死因を突き止める法医学ドラマを追いかけて見ている。冒頭に必ず死体が出るので、妻には見れない。一生分かり合えないだろう。分かり合えないことが、分かるのも素晴らしいことである。
ともあれ、今期の朝ドラ「カムカムエブリバディ」は今のところ妻の心を捉えている。
私はとにかく物語に飢えているので、ジャニーズが出てるとかはどうでもよく、ストーリー、見せ方、キャスト、照明、その他いろいろ考えながら見ている。妻に非難されずにドラマを見られるなら文句はない。主人公が、3代入れ替わって続くこと、終わりにto be continuedと出るところが、ジョジョっぽいな。そう思いながら、奇跡的に2人で見られるドラマを楽しんでいる。
朝ドラを楽しんだ後は、リングフィットで運動して汗をかき、シャワーを浴びてからパスタを作り、2歳児を迎えに行き、プラレールで遊び、夕食は圧力鍋でタコの柔らか煮を作った。また少し、義父に持って行く。
そんな穏やかな1日である。
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