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端午の節句 男性育休記2-18

ついこないだ来た義姉一家のうち、甥っ子兄弟が両方とも鼻水ずるずるだったのでちょっとアレやなと思っていたのだが、主に相手をしていた私と3歳児が同様に鼻水が出るようになった。二人とも熱はないが、私の方は咳も出ている。

やられたな。そう思ったが、「誰々の風邪をうつされた」という因果関係を証明するのは不可能に近いだろう。ならば受け入れるしかない。私はちょうど薬が切れたのにしぶとくまだある花粉症のために鼻と目から常にツルルと液体が流れ、口からは咳。熱だけはないがはっきりとしんどかった。横になりたい。あなーたに会えたしあーわせー♪感じて〜♪横に〜♪なり〜たい〜♪そんな気分だった。

ところで、これははっきりとした悪口だと自覚しているが、私の妻は勘で生きている節があり、特に「何かを説明する」のがクッソ下手である。「バーンときて、そこからドンよ」みたいな、擬音だけで押し切るため情景もロジックも伝わらない人なので、私もだいたいの説明を意味わかんねーなという顔で聞いているが「なんでわかんないのよ」と伝わらないことにすぐイラつく直情型でもあるので、本当にこの人が仕事仲間とかじゃなくて良かったなあと思う時がある。

で、まあ、端午の節句である。本当は5/5にやるものだが、共に参加する義父母の予定などもあり5/3に合同でやることになっていた。

ところで。遡って3月某日、私からは何も所望してないのだが、義父母からうちの2人の男児達にと、久月のかなり立派な兜だけでなく、なんか鯉のぼりのオブジェみてーなやつ、陣羽織みてーなやつ、のセットを「新たに購入して」いただいてしまっている。つまりいつの間にか「こどもの日、端午の節句フェス」のメインスポンサーになられてしまっているので、なんか分からないがその「合同でやる」のやつを、真摯にこなさないといけないなと思っていた。

なお、スポンサーとの窓口は説明力が死んでいる妻である。「ああなって、こうよ」みたいな妻の説明を、専門家である私が多角的に分析して得た、スポンサーの要求は下記の通りだ。

1.陣羽織を着て、兜の前で記念撮影をする

2.食事と酒は芳川家で用意し、ケーキは義父母が用意する

3.食事メニューは妻は手巻き寿司を提案したが、「この間(義姉一家が来た時)も手巻き寿司だったので飽きていそうだった」とのこと。

この中で何がしんどいかというと、当然「3」である。「飽きていそうだった」という、肝心なところが予想になっているのが微妙に腹立つが、スポンサーとの唯一の窓口であり、実の娘であるので、その勘を信じるしかない。

ああ、手巻き寿司なら楽だった。良い刺身と良い海苔を買う。酢飯を作る。この2手で終わりだったのに。

「体調悪そうだけど大丈夫なの?どうする?ごはん作るのしんどかったら、なんか買ってこようか?」

「全然大丈夫、作るよ」

本当は横になりたい。咳がひどくてほとんど寝ていない。なんだか身体に力も入らない。「1時間だけ寝かしてくれないか」それが言えればいくらか楽だったろう。というかスポンサーの要望は「芳川家が作る」であり調理者の指定が無いのであれば、妻から「私が作ろうか?」という提案があって然るべきなのにおかしい。なぜ、夫が作るor買ってくるの2択なのか。いや、出来合いの料理をなぜか憎む、やたらグルメな義父母だ。実質、作る一択。そして何より、あまり考えないようにしてきたが、あの兜とかの一式は数十万で済めば良いが、全部足したら100を超える可能性が全然ある。

最大限の火力で謝意を示さないといけない。

「とりあえず、買い出しに行こう」

横になりたい気持ちを押し殺して、3歳児と0歳児をダブル抱っこして持ち上げながら、我々一家は買い物に出かけた。

酒だけは、事前に義父から何を飲むのか確認されていて、義父が株主をやっている酒蔵の大吟醸を仕入れてあると妻経由で回答したら「さすがセンスいいじゃん」とホクホクしていたらしい。なので、相性的には魚系であろう。鮮魚スーパーから普通のスーパーを巡り、そして帰宅してから大車輪の活躍で料理をしまくった。

まず、こどもの日、端午の節句らしいご飯とは?というものがある。こどもの日って何食うんやろと考えると、私は寡聞にして「柏餅」くらいしか浮かばない。でも、柏餅で日本酒は飲めない。他にネットで調べると「ちまき」というのもあるらしいのだが、妻情報では二人とも嫌いらしい。

以上を踏まえて、私は下記のようなメニューをこしらえた。

・大人用ちらし寿司
 (ちらし寿司の上に穴子白焼き、錦糸卵、海苔、海老、いくら、絹さや)

・子ども用ちらし寿司
 (ちらし寿司の上に筍、海苔、刺身、錦糸卵などでキャラクター造形)

・鰹のタタキ(スライスオニオンとフライドガーリック添え)

・鯵のなめろう

・蛸の柔らか煮

・春菊とほうれん草のミックスおひたし

・トマトとアボカドのマリネ

・きんぴらごぼう

・ハンバーグ、ポテト(子ども用)

蓋を開けてみれば、得意料理でただ品数を埋めた感があるが、まあ、なんていうか、頑張ったと思う。

食事中、たぶん褒められたと思うが、とにかく咳をしないことに全集中していたので会話内容も、大吟醸の味も、あまり覚えていない。

「手巻き寿司で良かったのに」

義母がボソッとそう言ったのは、はっきりと覚えている。




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