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甥っ子達の襲来 男性育休記2-14

4/29(金・祝)、ここから2泊3日で義姉一家が襲来する。義父母側の家に宿泊するので朝と夜間は別々だが、日中はうちの3歳児がその強欲のままに集めまくったおもちゃ部屋に、甥っ子兄弟が入り浸ることになる。

3歳児を見なくていいから楽できるかと思ったらそんなことはない。めちゃくちゃうるさいし、男児3人集まるとケンカが起こるので頻繁に仲裁しないといけない。つまり、面倒を見る男児が2人純増している。ハメられた。楽できてない。

しかも、揉めるのは甥っ子2人だ。すぐに殴り合いをして、殴られた方が信じられない大声で義姉を呼び、義姉はそれを凌駕する声でまた檄を飛ばし、そして甥っ子が泣く。

たまに義姉がなにか食ってるとかのときは、義姉のご主人こと義兄が来るのだが、音もなくヌッと入ってくるので0歳児の授乳のため乳を放り出していた妻が慌てて退散したりして、大変そうだ。

つまり、あらゆる意味で気が休まらないのだが、それでもうちの3歳児は甥っ子兄こと6歳児をめちゃくちゃ慕っていて、「よく見ると会話が成立していないナイツの漫才のように」と言って伝わるのか分からないが、実はうちのヨシタロウの質問を全て流した上でヨシタロウのおもちゃで好き放題してるだけの甥っ子兄なのだが、彼は彼で暴力を振るってこない(※甥っ子弟は、兄に暴力を振るってくる)ヨシタロウのことを存外気に入ってくれており、ひたすら金魚の糞のようにつきまとってきても邪険にすることはなく、とはいえだいたいの会話は相変わらず流しているのだが、それでも憧れの6歳児に会話をしてもらえているヨシタロウの顔面はキラキラしている。片思いでも恋は恋。恋をする人は幸せなのだ。3歳児が嬉しそうなら父も嬉しい。

で、ちなみに、じゃあ6歳児は誰が好きなのかというと、第一にはまず義母(彼から見て祖母)である。優しいし、相手してくれるし褒めてくれる。ご飯も上手だ。2人きりで旅行に行ったりもする、限りなくどうみてもライクじゃなくてラブな関係である。

そしてその次が私である。6歳児は義母のことを「恋人のように愛している」と同時に、私のことを「神のように崇めている」と、彼の母こと義姉から聞いている。

これはどういうことかというと、まず私は怒らない。まあ、私から見て怒る要素も道理もないので怒らないだけだ。私は実子でも、食べ物で遊んだ時と、メガネを殴ってきた時以外は怒らない。6歳児はそんなことをしないから、だから私も怒らない。

の上で。リングフィットである。

6歳児もチョラチョラおうちでやらせてもらってるそうだが、なにせ躾の厳しい家なのでそもそもゲーム時間が短い。レベルは25とかそんなもんらしい。

過日、私の家のリビングでリングフィットを発見した6歳児は、「おじちゃん、これやっていい?」「いいよ」というやりとりを経て起動したところ、私のレベルが227と文字通り桁違いだったことに心底畏怖し、やがて尊敬に変わったらしい。

「こういうのもあるぜ」

私はこの6歳児のために、ニンテンドースイッチでまさに今日4/29に発売された「Nintendo Switch Sports」というソフトをダウンロードしておいていた。

バレーボール、サッカー、バドミントン、ボウリング、チャンバラ、テニス、ができる。

チャンバラとか簡単そうでええんじゃないか、そう思って私は6歳児に一つコントローラーを渡して、共に初プレイをしてみた。

非常にシンプルなゲームで、要は相手の太刀筋を読んでガードをし、そうして相手がふらついたところをボコボコにするゲームだということが初見で分かった。3本勝負で、2本先取で勝ちである。

そして6歳児はガードとかしゃらくさいことは良くわかっておらず、ただただ刀を(コントローラーを)ガチャガチャに振り回すスタイルで遊んでいた。私はガードを使えば容易く勝てるのだが、まぁ、相手は6歳児だから花を持たせましょう。そう思ってガードもせずにひたすらボコボコにされた。

するとどうでしょう。

「おじちゃん、もう一回やろう!」

かつて神と崇めたはずのおじさんは、ことこのチャンバラゲームにおいては圧倒的に弱い。これなら勝てる。おれは天才だ!そう錯覚したのだろうか、みるみる興奮して調子に乗っていく6歳児。

もう一回。もう一回やろう。そんな試合が10回ほど続いた。

ん、いかんかもしれんな。このままでは無限に調子に乗ってしまうかもしれない。

久しく出勤していなかったので加減を忘れていたが、今日買ったばかりのゲームで既に接待プレイをこなしている、自分のナチュラルボーン八方美人スキル、おだてスキル、ジジイキラースキルを6歳児に全開にしてしまった。

ここはある程度、程よい挫折もあった方がいいのではないか。というか、あまりにもストレート負けばかりするのもわざとらしくて、そのうち気づいて逆に傷つくのではないか?そう思った私は、3本勝負の2本目でだけガードを使って相手の刀を弾き、1戦だけ勝つパターンを入れてみた。

「ここを押すとガードできるんだな」

「ガードが決まると相手がよろけるんだな」

わざとらしくチュートリアルのようなセリフを吐きながら私は時々勝ってみせた。もちろん、差し引き負けるようにはコントロールしている。調子に乗らせすぎないというのもあるのだが、そもこの「ガード」を使いこなしてこそこのチャンバラゲームの面白さ、醍醐味を感じるのではないか。そんな淡い老婆心もあった。

「ガードやってみたら?もっと勝てると思うよ」

ダイレクトに進言してみたところ、驚きの答えが返ってきた。

「ガードなんてしなくても、ハッキリ言って俺の方が勝ってるから」

…そうか。せやったな。

どうも過剰に接待してしまったようだ。悔やむ間も無く、「パパーこっちきてよう」3歳児が呼んでいるので私のコントローラーを妻に預けた。


それからしばらく別の部屋で3歳児と遊んだ。1時間くらいだろうか。

またリビングに戻ると、妻と6歳児は同じゲームで、今度はボウリングをしていた。

「すごいね、ボウリング、ゲームじゃなくてホントにやっても面白いんじゃない?明日にでも行ってみる?」

「いきたい!っていうか、俺、やったことないけど、多分1番になっちゃうと思う!」

ここまで有頂天になってしまうと思わなかったが、まあ、とにかくそれはいったん忘れて、皆で焼き肉を囲んだのだった。





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