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詩の穴

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歌詞にならなかった詩をのせています。 「王さまの耳はロバの耳」の穴のような詩の墓場。供養して下さい。
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2021年1月の記事一覧

無題

無題

透き通った冷たい風が
金色の月の上を瞬いて
遠い遠い思い出の
涙のような雪を運んでくるのです

私たちは透明のエレベーターに乗って
上空へと舞い上がり
遥か頭上から
水色の街を見下ろすでしょう

小兎のように揺れる灯りを見て
胸の中にほんのすこしの後悔や
ため息のような安堵
手の届かない憧れを抱くのでしょう

もう誰も訪れることの無い
物語の中の風景を
優しく儚く抱きしめて
私たちは今夜
夢の中で

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無題

無題

冬の眩暈
冷たい空気に肌が驚いて
脳は動きを止める

一瞬の暗転
のち白い世界への転進
しらしらと雪は降りゆく

積もるもののなかに見える
あの光はなんだ
停止した秒の奥へと
柔らかく延びる白昼夢

通りすぎるカラスに気をとられて
その時は過ぎてしまった
目を凝らしても
視点は拡散して届かない

けれど私は確かに見たのです
彼方から送られた信号を
緩やかな眩暈のなかで

歌詞にならない詩を載せてい

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無題

無題

生きてるものはみな
死に向かって行進してる
足並みはバラバラに
でもたしかな道をひたすらに行進してる

死とはどこにあるのだろうか
わたしの死とみなの死は、
どこか違うところにあるのだろうか

道端に咲く花の枯れる様を見て
わたしは細くちいさく嘆く
わたしの人生の枯れる様を見て
心を痛めるものはあるだろうか

せめて夜は死への行進を彩る花束を

歌詞にならない詩をのせています。詩の供養。