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絵本で子育て〜『パンはころころ』繰り返すことの意味とは

繰り返すことで得られるのは一種の安心感なのではないでしょうか。繰り返すことで知っていることが増えてゆく。世界がはじめてだらけの子どもたちは、繰り返し少し変化し生きていきます。


歌うように読むことができる絵本

こねばちの そこ ひっかいて、
こなばこの そこ ひっかいて、
あまった こな、ふたつかみ。

そうして作ったパンが、ころころ逃げ出します。
のうさぎ、おおかみ、ひぐま、とすかし、
最後にきつねにであいます。

その こな こねて、
クリーム まぜて、
こんがり やいて、
まどの ところで さまして できた、
それが この ぼく パンさまだ。
ぼくは 4にんも だましたよ。
おばあさんから ひらりと にげて、
おじいさんから するりと にげて、
のうさぎさんから ちょろりと にげて、
おおかみさんから けろりと にげて、
ひぐまさんも ぼくを とめられなくて、
あんたにだって とめられないよ。
だめだめ、だめだよ、きつねさん

きつねは

ほれぼれするような うただなあ。

とパンくんをおだてて、用心するのをすっかり忘れ、
きつねの舌に飛び乗ってしまいます。

パクリ! でおはなしはおしまい。

リズミカルな台詞を歌のように読む、
そんな楽しさがあります。

繰り返すことの心地よさ

ロシアの民話がベースとなっています。
『パンはころころ』はマーシャ・ブラウンの作。

躍動感溢れるブラウンの絵が素晴らしいです。
ずる賢いきつねですが、
なぜか憎めないキャラクターになっていると思います。

この絵本に限らず、よく繰り返しがみられます。

大人は同じような繰り返しのどこに子どもたちがおもしろさを感じているのかしら、と思ったことがあるのではないでしょうか。

実は、繰り返すことが大好きなのは子どもたち!
飽きることなく同じ動作を繰り返します。

2歳半くらいから息子を見ていると、
同じ場所を行ったり来たり、積み木を積んでは崩し、水をためてまいて、階段を登っては降りまた登り、
すべり台は何度も何度も、昨日やったことを今日も明日も……

そんなふうにある一定期間ひたすら繰り返していた時期があったように思います。

繰り返すことで生きてゆく術を身につけているのではないかと思ういます。

絵本の中で同じことを繰り返すおはなしに、自分と同じだと感じて登場人物たちに親近感を持つことでしょう。

生活の中でも絵本の中でも繰り返すことは、その事象の確認となります。
そして自分なりの考えをめぐらす、時間を得ることになるのだと思うのです。

繰り返されることでそれは自分の知ることとなります。
知っていることは安心できるものになる、ということではないでしょうか。

大人は繰り返しにちょっとうんざり…なんて思ったりもしますが、
そうおっしゃらずに読み続けてみてください。きっとそのうち読みのが楽しくなってきますよ。

大人も好きなものは、延々と繰り返ししますね。好きな本、好きな映画やドラマ、好きな音楽…

ゆっくり、ゆっくりと。
子どもたちと一緒に、繰り返し繰り返し
絵本を読んでみてはいかがでしょう。

◉◉◉
パンはころころ
マーシャ・ブラウン 作
やぎたよしこ 訳
富山房  1994年


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