葬儀で可笑しかったこと①

六月半ば、母が身罷りまして通夜と葬儀をしました。享年74です。

非社交的な人間で友人つきあいもとても少なく三十代の若さでリウマチを発症した母は、人生の半分以上をリウマチ生活の中で過ごしました。持病を盾に親戚づきあいや近所つきあいも体良く放棄した母でしたので、なんの迷いもなく家族だけで昨今流行りの家族葬にしました。

家族葬とはいえ、お願いした葬儀屋さんの会場は50〜100人くらいのキャパシティがある葬儀専用会館でした。
間取りは1階に入口、霊安室、警備員室など、2階に斎壇を設置するホール部分とホールとは壁を区切って家族控室として使える宿泊部分の構成。
宿泊部分のドアを入るとまず6人掛けダイニングテーブルが置かれた居間があり、居間を挟んで両脇に六畳と八畳の和室。他にバス・トイレ・給湯室。布団も4組まで備えつけ。
夜間はスタッフは滞在せず帰るシステムで、私たちが夜中に外出したい場合は電子カードキーを使うようにと、まるでコテージの様相。

葬儀全体の手配をしてくれるメインの担当者と、会場内での細々としたお世話をしてくれるサブ担当者が付いてくれたのですが、サブのご年配女性が世話好きおばさんを絵に描いたよう。

大変気さくというか、態度や言葉遣いはちゃんと丁寧な方なのですが、全体の雰囲気が人懐こくて、会話の内容がぶっちゃけている。

「規則上、館内でのお食事はお断りとしてございますのでウーバーイーツなんか頼まれるのはちょっと困るんですけども、コンビニやテイクアウトで買ってきてこちらでお食べになるのは全然大丈夫ですよ。外食もできますよ♪」と、具体的に会館から徒歩圏内にあるお勧め飲食店まで教えてくれる。

基本的に明るい性格のようで、葬儀屋特有の大仰に作り上げた暗さは微塵もなく、ほんとに旅館のお部屋係みたいな雰囲気の方で、その自然な接客ぶりに好感を持ちました。

通夜式を終えて、スタッフが一旦お暇の挨拶に来たとき、おばさんが父に提案してきました。

「あの、もしよかったらなんですけどね?こちらのお部屋と祭壇と遠いでしょ(※直線距離にして15mくらい離れていた)?もし故人様とすぐそばで一緒にお休みになられたいのでしたら…」

と、何か秘策がある様子。

和室に布団を敷くのではなく、棺桶の近くにお布団を敷かれてもかまいませんよ…とか言い出すのかな?と思いきや。

「お棺の台座はキャスターが付いてて、あのままこっちまでコロコロ引っ張ってこれるんです!すぐお隣でご一緒にお休みになれますよ。そうなさいます?」とニコニコややドヤ顔。

…棺桶の台座がストレッチャーになっていてキャスターが付いているところまでは当然そうだろうと納得できた。

しかしだ。その続きだよ。斎壇の前から蓋開けたままの棺桶を和室真横までコロコロ移動…?

ダイニングテーブルと和室を分ける襖の間に棺桶を持ってくる…?

なんてシュールな光景だ。それはおもしろ過ぎるだろう。

父も「いや流石にそれはええわ」と苦笑気味に断った。

「えー?そうですか?簡単に運べますよ?寂しくありません?大丈夫?ほんとに?今夜でお別れですよ?」

と、おばさんは父がダメなら娘はどうだとばかり、私にファイナルアンサーを求めてくる。

私も断ると「そうですかあ」とここぞとばかり提案した秘策があえなく却下され残念そうなお顔。

そんな分かり易く残念がるなよwww

ソレ採用する遺族いるんか?というツッコミをぐっと堪えて、おばさんの話がこれ以上長くならないうちにさっさとお帰りいただいた。

おばさんが帰ったあと、父と私は顔を見合わせて「びっくりするアイデアやったな!」と大笑いしました。

可笑しかったこと①はここまで。

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