葬儀で可笑しかったこと②

通夜の夜、葬儀屋のスタッフからの思いがけない提案に笑うしかなかった①に続いて、翌日の葬儀でも笑うしかない事件がありました。

葬儀を終え出棺、火葬場に到着して、母を炉に入れた時のこと。

母の葬儀はごく内輪の身内だけで、お坊さんも呼ばずに無宗教で行いました。
通夜については父、私、私の夫、私の息子の四人だけ。なんとなく仏式の雰囲気で司会進行に則り焼香だけはしましたが、ものの5分とかからず通夜式終了。

翌日告別式にはこの4人に加えて、父の弟夫妻と、父と母の共通の友人がおひとりだけ来てくれました。

父は、母の生前入院中からずっと「誰も呼ばない。親戚にもツレ(=友達)にも葬式を済ませてから知らせる。」の一点張りでした。

別に親戚連中と仲違いをしているわけではありませんし、父は愛嬌もよく人好きするタイプなのですが、なんせ本人が冠婚葬祭など畏まった場を大の苦手としていて、喪主として弔問客の相手をするなんてことはとにかくやりたくない。

私は結婚して実家を出て以来、母の介護も入院も二人の決定を尊重する姿勢できました。

アドバイスや必要書類のチェックこそするけれども、何をどうするか決定権はすべて二人にあります。

母が認知症となり判断能力を無くした後も、私がよかれと思って意見したことを父がまったく聞かなくても、最終的には父の意向が優先と決めてきました。

私の両親は、小学校時代の同級生同士で、二人とも小学校・中学校の同級生がそっくりそのまま共通しています。

父の同級生たちは仲がよく、LINEグループを作ってあれこれ遊びの約束をしたりしていて元気です。

ちなみに父がLINEの操作をまるで覚えないので、同級生の皆さんから私に「あきちゃん!ミチ(父のニックネーム)にLINE教えてや!」とクレームが入りますが、私としては初孫の威力をもってしても父がLINEを覚えなかったものを今更教えようがないよ!と返しております。

話を戻して、母の葬儀となったその日あたり、実はもともと父と同級生2人の男ばかり3人で白浜へ一泊二日の旅行を計画していたのです。
しかし一人が白内障の手術が決まり外出はドクターストップ。
団塊のオジン二人で温泉旅行もどうなのかと旅行はキャンセルするように私から勧めて、旅行はそのとおりキャンセルしたところ、うちの母の葬儀が入るという巡り合わせ。

なので、誰にも知らせないと言っていた父も、さすがに一緒に旅行に行く予定だった友人には母の訃報を知らせました。

父の友人も父の性格をよく知っているので、LINEグループには「ミチからはみんなには内緒でと言われましたが、僕の独断でテルミの訃報をここにお知らせします。葬儀には僕が同級生代表で一人で行ってきます」と同級生たちがやたらに押しかけないよう、そしてどなたにも不満を感じさせないよう、巧みに話をまとめてくださいました。

通夜の日、親族にはまだ一切知らせていませんでした。
生前たびたび知らせた方がいいんじゃないの?と水を向けてきたものの「知らせない」一点張りだった父が突然「さすがに上六くらいは知らせたほうがええかな?」と手のひら返し。

上六とは上本町六丁目の地名の略称で、父の四人兄弟のうち三男夫妻のことを示します。長男はすでに他界、父が次男、四男である末弟は連絡先不明。

すぐに私から上六の叔母に電話して、どう急いでも通夜にはもう間に合わない時間でしたので通夜に来るのは不可能となりましたが、幸い翌日はちょうどたまたま叔父の仕事も休みと何の支障もなく、叔父叔母夫妻が葬儀に来てくれました。

このような顛末があって、葬儀でありがちな葬儀会場から火葬場まで移動するための親族用マイクロバスなどは手配してませんでした。

なので火葬場への移動は、父の車に叔父夫妻と友人が乗車、夫の車に私と息子が乗車して、霊柩車の後に続く形になりました。

お坊さん無しなので、炉に入れる段取りもごく短時間で済みます。

葬儀屋さんから、自家用車を駐車場にわざわざ停めに行かなくてもマイクロバス乗降用スペースに一時駐車しとけばいいとの指示があり、そのようにしました。

慌ただしく車を降り、母の棺が炉に入るのを見届け…ふと面子を確かめると父と友人と夫と息子はいるけれど、叔父と叔母がいないではありませんか。

え?叔父さんと叔母さんいないぞ?どこ消えた?と戸惑いながら車に戻ると、父の車の後部座席で叔父と叔母が窓を叩いて、口をパクパクさせている。

え?なんで乗ったままなの!?

後部座席のドアを外から開けた瞬間、いつも明るく賑やかな叔母が第一声「ドア開けへんやんか!めっちゃ叫んでんのにみんな行ってしもて!!えー!ほんでもう済んだんー!?ちょっとー!!」

…後部座席のドアにチャイルドロックが効いていたようです。この車に乗り始めて2年くらいでしょうか。母が入院して間もないころに買い替えたはず。母の入院以来父は一人暮らしになって後部座席にひとを乗せることが滅多になく、父、チャイルドロックの存在を理解してませんでした。

さらに父の車がなまじ高級車であったために防音性能が高く、叔母の大声も漏れず…

うちの軽四車なら叔母が騒げば声が聴こえただろうに…

そもそもマイクロバスなら葬儀屋の人が全員降りたか確認もしてくれるのに…

いやはや思いがけないアクシデントでした。

車の中で窓ガラスを叩きながら口をパクパクさせてる(声がこちらに聞こえてないだけで中で叫んでる)叔父と叔母の顔、だいぶおもしろかったです。

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