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あの夕暮れの光を目指して

2013年秋、私が大学3年生の時
師匠(足立さん)に初めてこんなブランドをやってみたいと話したとき
「布を考えるひとも作るひとも、買うひともみんな幸せで、その幸せでションヘルが残っていけたらいいよねえ」
という話をしていた。(足立さんは覚えてるか分からない)

「そんなふうになったら最高だなあ」って2人で想像してとても幸せな気持ちになった。
でも「そうなるにはどうしたらいいのか分からないなあ」と2人して頭を抱えた。
ションヘルで織られた宝石のような布に埋もれた足立さんの事務所、秋の夕暮れの赤い光と共に私はよくその場面を思い出す

私は毎週通った足立さんのあの事務所が大好きだった。私はあの場所、あの時から人生が始まったんだと思う。


2021年、私は愛知県を離れた。2022年ライフワークとしていたNINOWもストップさせてもらった。

2023年、terihaeruとして3年ぶりの展示会をする予定なんだけど、その前に何があったのか最近言葉にできるようになったので残しておこうと思います。

「ションヘル織機」「日本の繊維産業」「企業のインハウステキスタイルデザイナーを守る」という3つの要素は、思った以上に自分で重く捉えていて、「私がなんとかしなければ」「私がやらないとだめになる」と思い込んでいた

そして背負い込んでいないと自分ではない、とまで思っていたと思う
あの時は背負っていることが自分のアイデンティティだった
たぶんそれがかっこいいと思っていたんだろう

背負っている重みには気づかずに、「もっと違うところにいきたいなあ」「もっと遠いところで楽しくやりたい」と漠然と思っていた。

オリジナルの布を作って商品を作り販売することにも何かモヤモヤしていた。なんだかやりたいことと違うとずっと思っていたけど、百貨店の催事のお誘いはあったしなんとなく続けてしまっていた。

そこでコロナがきた。

百貨店の催事で持っていたterihaeruは全然だめになった。NINOWも開催できない。

借りていた事務所が空っぽになって、毎日泣いていたけれど「自由だ」と心の隅で思った。

他で仕事を探さなくちゃいけなくなって、でも他の業種に就職しようとすると泣けてきてしょうがなかった。ハローワークにとめた車の中でずっと泣いた。だから適当に派遣のバイトをしていた。

日々体を使って働いて、ご飯を食べて、よく寝れば元気になる。体はうまくできていた。

私は背負っていたんじゃない、ただ好きなのだ、布が。布が産まれる現場が。

もちろんションヘルで作る布は大好きだけど、透ける布やインテリアの重厚な布も大好き。一生をションヘルとだけ過ごすのももったいないな、と思えた。日本にはションヘルには作れない、素晴らしい布、産地が他にもあるから。

ビジネス的にもいろんな布があったほうが仕事の幅も広がるだろうと思った。私がやりたかったのは布を通して様々な人が面白がってくれて布を使ってくれることだと気づいたのも大きかった。

私が作りたい未来は、「布を中心にみんなが幸せな循環を作ること、私が死んでもションヘル織機が残っていること、それはその時の若者がションヘル織機を残したいと思ってくれること、日本の繊維産地が未来へ繋がること」。

すごい大きな目標だとは思っている。でもあの西日の差す、もう今はない足立さんの事務所で2人で想像した景色はとっても素敵だったのだ。それを私はただただ見たいだけなのだ。背負うということではなく、叶えたい未来として。

私はいまだに「どうしたらあの景色に近づけるのだろう」という状態だ

10年間ずっと「どうしたら」と思っている。だからコロコロ変わってしまうんだろうな

今客観的に見るとそんなやつ全然信用ないし、「ションヘルがー!」と声高らかに叫んでたのに…と思われても仕方ない

たぶん今後も変わる

でもそれは「あの景色」があるからで、何かを捨てるとかそういうことでは全くないのだ

東京に来てからは「泥臭くてもいい、かっこわるくていい、こんなに布が好きなら、布を作るためになんでもやろう」と思って早朝から夜まで働いた

そうしてなんとか尾州を含め4つの産地で布を作れた。

布のことを考える時間、布が産まれる現場は本当に幸せで、生きている!という感じがする

こんなに好きなものに出会えて私は幸せものだ。布のせいで毎日泣いたりものすごくつらいこともあるけれど、自分の布が出来上がってくると全て消えてしまう

今季のテーマは「lights」とした

あんなに泣いた日々の中から出てきた光
大好きな友達からもらった希望の光
足立さんや岩田さんが背中を押してくれた光

今振り返ると家族にも様々な方にも本当に迷惑かけたし散々な2年間だったけど、しんどかったかいはあった

たくさんの振り返りと気づきがあった。「布」にすがらなくていい、ありのままの私でいい。私の好きを貫いてみせよう。そのさきに守れる未来を作ろう。


みなさん元気ですか?私は元気になったよ
早くみんなに会いたいな

私の布を見て喜ぶ顔が見たいな

そんな場面なんて数年前まで当たり前だったのに
当たり前じゃなかったんだな

みなさん遠くから心配してくれてありがとう
懐かしい方も新しい方もお会いできたら嬉しいです
恵比寿で待ってるよ

terihaeru / Hiyori Kojima
 Textile Exhibition
”lights”
2023 / 4/13(thu)〜4/16(sun)
東京都渋谷区恵比寿1-23-21
ヤマトハイツ1F HALO spece 03

for Business
4/13(木) 11:00〜19:00
4/14(金) 10:00〜19:00

for Friends(どなたでもお越しください。)
4/15(土) 10:00〜19:00
4/16(日) 10:00〜17:00

「デザイナー小島日和 トークイベント」
4/15(土)15:00~15:30












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