最近の記事

2016年ベストアルバム

only in dreamsの真似をして、10枚選んでみた……と、言いたいところだけど大して聴いていないので5枚だけ。なんとなく2016年、なので厳密には2015年リリースの作品もあるかもしれないけど、そこは気にせずに。 Homecomings『SALE OF BROKEN DREAMS』 THE SCHOOL『WASTING AWAY AND WONDERING』 アーバンギャルド『昭和九十一年』 The Lemon Twigs『Do Hollywood』 浜崎容

    • その呆気なさを祝福するために/オタール・イオセリアーニ『群盗、第七章』(1993)

      感動的な音楽に煽られることなく、悲痛や苦悶に満ちた顔をクロースアップで捉えることもなく、そして役名もない一人の「死」をあまりに呆気なく撮ることが出来る監督を信頼したい。パッと思い付くのが『ノン、あるいは支配の虚しき栄光』を撮ったマノエル・ド・オリヴェイラ。旗を握りしめた兵士の手を何のためらいもなくスパッと切った鮮烈なロングショットは忘れ難い。 本作においてオタール・イオセリアーニは、オリヴェイラ同様呆気ないほど簡単に人を殺してみせる。それは玩具のような銃を子供がぶっぱなして大

      • ロバート・ロッセン『リリス』(1964)

        「見て 誰か水に映ってる かわいいわ 彼女は私のキスで死ぬの 愛は人を滅ばすわ」。とあるシーンで呟かれるこの台詞が、この映画の全てだと思った。 亡くなった母の生き写しのような存在である精神病患者のジーン・セバーグ。彼女の姿が度々水面に映し出される理由は、あまりにもはっきりとしている。官能的、艶やか……そんな言葉で表現したくなる"水"のイメージ。前述した水面は勿論のこと、役者たちに降り注ぐ雨や氷だってそうだろう。セックスシーンで太陽光で煌めく水面のショットとオーバーラップさせて

        • デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン『裸足の季節』(2015)

          「楽しかったあの頃」は、カメラの横移動と共に過ぎ去っていく。画面いっぱいに五人姉妹を詰め込んだショットが、彼女らが置かれている状況とは何の関係もなしにただただ幸福に満ちているのは、「あの頃」が時を経るにつれて美しい記憶として変換されるからだろうと思う。近所のおばさんが着ている服を「クソ色」と叫んだときは、将来自分が純白のドレスを身に纏うとは思っていない。あの暗い牢獄の中で見るドレスは、果たして「クソ色」じゃないと言えるのだろうか……。 ピンク色の蝿叩きでさえ可愛いアイテムとし

        2016年ベストアルバム

        • その呆気なさを祝福するために/オタール・イオセリアーニ『群盗、第七章』(1993)

        • ロバート・ロッセン『リリス』(1964)

        • デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン『裸足の季節』(2015)

          黒沢清『クリーピー 偽りの隣人』(2016)

          何年も前から、黒沢清は風を吹かずにはいられない。だからこの映画でカーテンや草木が揺れたからといっていちいち騒ぎ立てるのは最早「今更」なのではないかと思う。ジャック・ターナーやエドワード・ヤンといった監督たちの影響を少しも隠すことなく画面上に浮かび上がらせているこの監督は、例えば『リアル』で室内シーンにも関わらず中谷美紀の髪をそよがせることを、何の躊躇いもなく遂行してしまっている。 また、ビニールシートも黒沢清を語る上で外せない道具かもしれないが、それも同じく「今更」なのかもし

          黒沢清『クリーピー 偽りの隣人』(2016)