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手駒と愛情と

わたしの心をかけぬけた
ドキリとした気持ちはきっと
気のせい

目配せして手繰り寄せた男は
1褒めれば9の命令を聞く
よく出来た犬だ、と
僕は思う

だがずっと同じ男は勘弁
褒める割合を減らし
うまいこと離れるように仕向ける
悪いやつだろう

しばらくこの生活をしていたが
1人の男だけがずっと粘り続けていた
命令が20を超える頃
僕は問う

なぜ、見返りもなくついてくるのか

男は悲しそうな顔をして
口を開いた

見返りがなければ
いてはいけないのですか?
わたしはこんなにもあなたを愛している

別になんてない言葉なのに
不覚にも不意打ちされた
だがあの冷や汗とこの鼓動は
気のせいだ

そう鞭を打ちながらも
わたしは久しぶりに微笑んだ

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