猛獣


夜闇に呑み込まれた
わたしは金色の光を纏う
艶やかな、ただの女
今宵移ろいゆく街灯よりも
輝きながら優雅に泳ぐ

雅や雅。
わたしに惚れた?腫れた?
当たり前でしょう
だって美しいもの

ぐいっと手を引かれ
呆気に取られた
目に映るは、ああ、猛獣。
貪ればいいわ。飽きるまで。

骨の髄までしゃぶられたように
艶かしい目線を浴びた
所詮、猛獣。
むさくるしくて、なんて人間臭い。

一夜明けた
わたしの脳裏には
猛獣と呼べる人はいない
残ったのは
目の奥の綺麗な瞳孔だけ

何が起きたのか
理解が出来ない
あれはたしかに猛獣だったのに

もう一度だけ…
もう一度確かめるだけ。
わたしはまた、彼の猛獣とやらを
探しに夜闇を彷徨う。

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