夢に似た話。
なだらかな景色の中で、微睡んでいる。水面に浮かぶ、木の葉のように。
平坦で、風もない。風が揺らす梢もない。木漏れ日もみぞれも降らなくて、暑くも寒くもないけれど、適温というよりも、単に温度がない。地平線には抑揚もなく、似通った地面が淡々と続く。切り立った崖も小高い丘もない。
隣というには少し離れた左手側の、二メートルほどのところに、立っている人影が一つ。時に、笑い袋のようにケラケラと良く笑う。時に、見透かしたような余裕のある顔で素直に文句を言う。
ポケットの中のビスケットを分け合うように、怒ったり笑ったりする。そのように平均値を取る。上がり幅と下がり幅の差を狭くして、描かれるグラフの起伏がなだらかになるよう調整する。朝は平坦で、昼は低空飛行で、夜は跳ねて少し駆け足になってゆく、そういった気分の余剰分を、分けて散らして平均化する。
右手側にも同様に、少し離れたところに人影が一つ。概ね、静かに笑ってたたずんでいる。時に、ぽつりと囁いて、背を押すように問いかける。
平らな地面が不意に消えて、ストンとまっすぐに落ちる時は、静かに問いかけてきて、霧のように、または夜の内に水たまりに張った薄い氷が朝日に溶けるみたいにして、冷えたものを透明にする。するとふわりと軽くなる。そのようにして平均値を取る。
中心は、硬いものでできていて、いつもは温度が特にない。外側から温めれば暖かくなるし、何もしなければ、時々、冷える。素材は氷ではなくて、どちらかというと、焚き火の炎で熱すると熱くなり、雪の河原の空っ風で痛いほど凍てつく、石に似ている。
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