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ほろ酔い気分で。

お酒を飲むと顔が赤くなる。

多分体質的に、アルコールを分解する酵素が不足している。一杯目を飲んだだけで手まで赤くなるので、たまにお店の人が気を使って「お水要りますか?」と声を掛けてくれる。

見た目と同じくらい頭の中身も酒に酔いどれてくれれば心地良いのだけれど、酔っている自覚はあるもののどこか醒めている。もうちょっと酔いたいなと思い、ハイボールやカクテルやサワーやビールを続けて飲んでいると、色んな味を楽しめる反面、お腹のほうが先に一杯になってしまって、物足りない。しかしながら顔は真っ赤なので、見た目的には相当出来上がって見える。

その点、ウイスキーやウォッカは少量で酔えるので手軽でいい。流石、アルコール度数が40度近いだけある。焼酎をお湯で割って少しずつ口に含むのも、緩やかに酔っていけて悪くない。

そういえば、お酒を飲み始めた頃は赤くなりやすかったかもしれない。先輩たちがよく飲みに連れてくれるようになって、一、二年もするうちに強くなっていった。当時は飲み会ともなると、一次会が夜の九時頃にお開きになったあとに、二件目三件目と居酒屋やバーを当たり前のようにハシゴしたものだった。最近は外で人と会って深酒をする機会もなくなったので、体が慣れていなくて、たまに飲むとすぐに顔が赤くなる。

酒を飲んでいるときの外見と中身の酔いどれ具合が合致していないのが、しっくりこない。酒に弱いなら弱いで、顔が真っ赤になったら思考もグニャグニャになるくらいへべれけになればいいのにと思うのだけれど、酔いと弱さは少し違うものらしい。
昔はガンガン飲んでゲラゲラ笑い転げるくらい爽快に酔ったものだけれど、今はそういう力強い酔い方はしない。今の体質で当時と同じ飲み方をしたら、多分簡単に酔い潰れてしまうだろう。

お酒を飲んだ日は、真夜中に目を覚まして白湯を飲む事がよくある。今夜もやはり目が覚めた。明日の朝は味噌汁を飲もうなどと思いつつ、文字を並べている。

小さな記憶の羅列。書き留めなければ消えてしまうくらい些細な会話を、文字の間に敷き詰めて書いている。

二階の大きな窓越しに見えた夜の景色。膝にかけたコート。エアコンの温かな風。皿の上の創意工夫の施された料理。一年ぶりに語り合う近況。並ぶグラス。笑い声とその隙間にある憂いとを、深堀りするでもなおざりにするでもなく、同じ温度で語らう。

電車を待つ間に交わした会話の切れ端を、なくしてしまわないように行間に埋める。

ほのかに頭の片隅に酔いの余韻を漂わせながら、こうして文字を書きつつ、ウイスキーや焼酎でなくとも、もう少し強く酔えるといいのにと思う。今度また、家のソファーに腰掛けて昼間からコレクションの小瓶を開けてみようかなどと画策しているうちに、足元が冷えてきた。そろそろソファーから立ち上がって、もう一眠りする。

おやすみなさい。良い夢を。


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