コルク栓を開ける

棚にお酒を何本か飾っている。


ラベルにスピリッツやモルトウイスキーと書かれた、少し強めのお酒の瓶を眺めるのが好みだ。瓶のサイズはなるべく小さい方がいい。掌に収まるくらいのものを、もう幾つか集めて、棚の隅に密やかに飾っては、時折眺めて暮らしたい。

そんなこんなで、最近、インターネットのオークションをチェックするようにもなった。気になる出品物を見つけては、お気に入りリストに入れて、入札の動きを見守る。例えば、50mlや80mlのモルトウイスキーの相場は幾らが順当なのだろうかとか、自分ならいくらまで出せるだろう、などと予測をたてつつ考えながら、眺めて、噛みしめる。
宝くじが当たったら何を買おうかと話すときの気持ちに、少し似ているかも知れない。

先日、棚に飾っていた瓶の栓を一つ開けた。

MOET miniというラベルがついている。モエ・エ・シャンドン・ブリュット・アンペリアルという名の辛口のシャンパンで、私が買ったのは、ピッコロサイズと呼ばれる200mlのミニボトルだった。日本酒でいうと一合升が溢れるくらいの量になる。

開栓するに当たって、コルクが天井まで吹っ飛ぶのを回避するために、上から布をかぶせた。それから、コルクを親指で押さえつつ、コルクをカバーするように掛かっている針金を少しずつねじって外した。針金がゆるむと、コルクがググッとせり上がって親指を押し上げてくる。瓶とコルクの先をやや傾けて、その勢いを逃がす。

キュポン。

小さな音を立てて、コルクが抜けた。

グラスに注ぐと、淡く緑がかった、澄んだ黄色をしていた。花のような香りがふっくらと漂う。口にするとサラリとした喉越しで、200mlならすぐに空になりそうだった。グラスに二三度注いで、なるべくゆっくりと口をつけた。

ショットバーや、シャンパンを飲むタイプのお店へ飲みに行く機会はめっきりなくなった。なのでこうして、ボトルのお酒を眺めたり、たまにシャンパンを買って飲んだりしている。そういう趣味なんだなと思いつつ、棚に追加されたばかりの、Moetと書かれたコルク栓を、今日も眺めている。

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