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寂寞

どうしようもない寂しさのせいでいてもたってもいられなくなって、最寄り駅からの帰り道、前を歩いてた黒いワンピースを纏ったひまわり畑が似合いそうな背の高い女性に声をかけてしまった。普段はそのような根性がないくせに、寂しさとは恐ろしいものだ。「今晩は、僕と一緒にいてくれませんか。」


こんばんは、っていう言葉は本来こういう風につかうのではないか、と喉から出る空気が共鳴し音を発する間に、脳裏にしょうもない屁理屈が浮かんだ。

その女性は立ちすくみ、何が起こったか状況がわからない様子でこちらを見た。迷子の5歳児に送るような視線で、一言も発さずに。


「どうしたの?」


拒否するでも、承諾するでもなく、私の内に秘めているケダモノを探ろうとするなんて、なんて余裕のある人間なのだろう。


「え、なんか、寂しくてどうしようもなくてやるせなくて、気づいたら声をかけてしまいました。ごめんなさい忘れてください。」
「あ、でも、本当に今日はあなたと一緒にいたいです。」


くさくて毛嫌いするほどのキザな言葉が、湧き水のように喉からするすると出てくるから自分でも驚いた。


「自分のことしか考えてないのね。けど別にいいですよ。」

そうだ。自分のことしか考えていない。考えることができないんだ。己の欲望に己で立ち向かうこともできず、誰でもいいからそばにいて欲しかった。

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