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不動産セミナーマニュアル(ワンルームマンションの売り方)

本日はヒヨコロ不動産セミナーにご参加いただきありがとうございます。今日の内容は、「誰でもできる、ワンルームマンションの売り方」ということで、誰でも簡単にワンルームマンションを売る方法をお教えします。

えっ、買う側じゃなくて売る側? そんなのできるわけないじゃん、なんて思っていませんか? でも大丈夫、世の中にはワンルームマンション業者って星の数ほどあって、それらすべてが判で押したようなワンパターンの販売手法をとっています。

免許がなくても大丈夫、これからとればいいですよ。それよりも実践的なたった1つのパターンを覚えるだけであなたにもきっと売れます。なんせ世の中の人はあなたが思うよりずっと「楽して儲けたい」と考えているからです。

そして「自分は頭がいい、他の人とは違う」とも考えています。だからこんなに簡単な三つの手順で、数千万円も支出をしてしまうのです。

  • 不動産投資セミナー(無料)を開催する

  • 将来の不安を煽る

  • 安心させる

不動産投資セミナー(無料)を開催する

まずはここから、無料の不動産セミナーを開催します。地元の公民館や市民ホールでもいいですけど、都心の一等地のオフィスビルで会議室を借りるのが「なんか信頼できそう」と思われます。

間違っても風俗街の雑居ビルなどで開催してはいけません。

服装は、地味だけど高級なスーツに高級時計をしてください、レンタルでもスーパーコピーでもOKです。

あと、ルックスは良いにこしたことはありませんが、最低限清潔感は醸し出してください。会場には必ず男性と女性を最低一人ずつ配置してください。男性は舐められないため、女性は安心を与えるためです。

参加費はもちろん「無料」に設定します。普通に考えて儲け話を無料で聞かせてくれるわけがなくて、払う側じゃないのかなと思うのですが、無料で、さらにアマギフとかクオカードさえ配ることが多いです。

つまりめちゃめちゃ客集めに撒き餌をまいていて、そうしないとお客さんが来ないからなのですが、そこが本気でわからない人は世の中にごまんといます。

世の中の90%の人に怪しいと思われても気にしないでいいのです、ターゲットはこのセミナーに参加するような甘い夢を見る人たちなのですから。

将来の不安を煽る

次にセミナーの内容です。まずは不動産投資とかなんだとか言う前にとにかく将来の不安を煽ります。老後2000万円問題は必ず取り入れてください。これは政府が作ったとても有名な煽り資料です。

そして、インフレ円安社会保険の増大と、将来は年金がもらえないかもという不安をとにかく煽ってください。

勤務時間と老後自由な時間を比較するのも一案です。「老後の時間って思ったより長いんですよ、お金がないと自由には暮らせない、好きなものも食べられないし好きなところにも遊びに行けない、何もできない暮らしが待っています」と、とにかく「お金がないと困る」という意識を植え付けてください。

良い資料の作り方

良い資料の作り方の例を示します。

上の図の左側は、22才から65才まで43年間、1日9時間として「勤務時間」を計算していて、右側は65才から90才まで25年間、1日16時間として「起きている時間」を計算したものです。何の比較にもなってなくても、要するに老後の時間は考えているよりもずっと長い、ということが伝われば良いのです。

資料を作る際のポイントは、公的な機関が作った資料や「法定」などの言葉付きで、こちらが狙った印象を与えるために都合の良い部分をつなぎ合わせることです。お客さんが「こんな数字おかしいよ」と言ってきたときに「公的な資料の数字ですよ」としれっとシンプルに答えるためです。

そんないいかげんな資料でも、納得して聞いてくれるお客さんは一定数います。なぜか?

それはお客さんが自分を納得させるために、無茶なデータをねじ曲げて勝手に解釈してくれるからです。お客さんは背中を押されたい、押されに来ているのだということを忘れないようにしてください。そして、この資料がおかしいという人は無理に相手にしなくていいのです。10人に1人で十分です。

安心させる

参加者に徹底的に不安を与えたあとは、安心を与えます。つまり、解決方法の提示です。

ワンルームマンション投資は、その不安を解消するための最良の方法だということを順に説明していきます。

  • 東京の単身者は今後も増大する

  • 条例による規制のためワンルームマンションの供給は増えない

  • つまり今買っても値下がりしない

というように、まずはお客さん自身の身を安全なところに置くところから始めます。それから妻や子などにもメリットがあることを伝える順序が大切です。

  • 万一の際にも、残された家族には保険代わりになる

  • お子様やお孫様に資産を残すことができる

人間は社会的な生き物なので、意外に利他的な面を持っています。自分のためだけでは踏み出せない額でも、「お子さんのため」「お孫さんのため」などと子や孫を引き合いに出すと意外とあっさり引き出すことができます。

最後の仕上げ

あとは仕上げです。この時点で目を輝かせているお客さんは、買うための材料を探しているところです、細かいところをつけ足していきます。

10万円から始められますよ

「自己資金ですか、あるに越したことはないのですが、無理なく10万円からでも始められますよ」この言葉で不動産投資はお金がかかるという概念を払拭します。

そもそも不動産投資に興味がある人は数百万の出費の覚悟をしているものです。それでも大きな出費だからとしり込みしているので、10万円と聞くと「えっ?」と精神的な敷居が下がります。

借入金利のことは触れなくて大丈夫ですが、お客さんの方から借入金利を気にする言葉があった時だけ「大丈夫です、借入金利を含めても利益がでます、それは後ほど具体的な説明のときに」と自信をもって答えたらお客さんもいったんは安心します。

そして、今始めないとどんどんワンルームマンションの価値は上がっていくという焦燥感を強調します。正確には上がらないかもしれないし、むしろ人口減少とテレワークの傾向から考えると東京近郊の物件でも下がる可能性の方が高いかもしれませんが、これを嘘とは断言しにくいのです。なぜなら将来のことはわからないからです。

肝心なのは焦燥感(早く買わないと値段が上がるかも)を植え付けることで、その後具体的な物件を紹介するときには23区でなくても、多少郊外でも大丈夫です。もうお客さんは「買うモード」になっているので。

レバレッジ効果で利益を増幅できます

レバレッジ効果、数十万円で数千万円の物件が手に入りますということを「うまく、ウソじゃないギリギリのラインで」言うことがポイントです。

資料作成の際には、勝手にお客さんが勘違いするようにもっていくよう誘導してください。

  • マンション投資で……

  • 70万円が30年後……

  • 1,800万円

70万円が30年間で1,800万円に増えますとは言っていませんが、そんな印象を与えるのがポイントです。その間ローンの支払いがあって1,800万円+金利を支払っていることを感じさせない資料作りをし、絶対に明言は禁物です。

もちろんレバレッジ効果で増幅されるのはどちらも同じというか、金利を考えるとむしろ損失が大きいのですが、利益のみを強調します。

これも嘘とは言い切れないのがポイントで、利益がでる場合もあります。実際に2010年ごろに買った物件の価格は現在は上がっています。未来の価格はわからないので、過去10年に限定した推移の資料を与えて、あとは「絶対に上がる」とさえ言わなければお客さんの方で勝手に良いように解釈をしてくれます。

お客さんは利益に目がくらみ、背中を押してもらいたがっているのです。

節税になります

これは最後の最後でいいです。普通の会社員には税金のことは難しくてわからないし、なんとなくのダメ押しでいいでしょう。

「あれ? 節税になるということは損してるということ?」

というようなカンの良いガ…お客様がいたら「書類上そう見せるのです」とでも言えば大丈夫です。それでもまだ突っ込まれたら「設備分の減価償却は短期間なので節税効果を大きくできます」という言葉で乗り切ります。

ここでも、嘘にならないよう注意してください。

みんなやってます

そして最後には「みんなやってます」という言葉が一番の安心を与えます。だからこの言葉はセミナーのごく始めの方から何度となく言っておくといいでしょう。

「私どものお客様は年収500万円程度の会社員(公務員)の方がとても多いんですよ」
「職場でもたくさんいるでしょう?」

などと、みんなやってるという安心感を与えてあげてください。そして、最後の方には「だいたいみなさん3件~4件の物件をもたれています」と付け加えてください。

節税効果が薄れるまでの最初の数年が勝負です。その期間で売れるだけ売るのです。

あとは契約書で自分の身はしっかり守りましょう、サブリース契約の場合は保証額の引き下げは入っているのですが、口頭では「万一の場合です」とでも言っておきます。また、以下のリスクもしっかり明記しておくことです。

  • 家賃の引き下げリスク

  • 空室リスク

  • 金利上昇リスク

  • 売れないリスク

これまであなたが上手に「これまでの傾向からワンルーム人気は上昇していく、空室はあり得ない、売れないことはあり得ない」というような空気を醸し出していれば、ここの説明でも「万一の場合の定型的な文章ですよ、ハハハ」と濁しておけばいいでしょう。

ワンルームマンション業者の目的

最後にまとめます。

絶対忘れてはいけないのは、ワンルームマンション業者の立場です。そもそもなぜ業者はお客さんにマンションを売るのか? そこまで確実な利益が得られるとお客さんにお勧めする投資なのであれば業者が運用すればいいはずです。ではなぜお客さんに利益をもたらそうとするのでしょうか?

業者は「いい人」だから?
慈善事業?
お客さんに幸せになってほしいから?

先述したように、人間は意外と利他的な生き物です。でも、他人に幸せになって欲しいからといって汗水たらして働くわけではありません。

それは、このワンルームマンション投資が「儲からないリスク」があるからに他なりません。儲かるかもしれないし、儲からないかもしれないのです。

不動産のプロとして、利益のでる物件は死ぬ気で探し自社でおさえてそこはしっかり利益をあげます。そして、儲からない可能性の方が高そうな微妙な物件はリスクをお客さまに負担させて、仲介手数料や管理委託料をしっかりと確保するのが目的です。

これはクラウドファンディング型の不動産投資も似ています。お客さんに通常より高い金利を払うなら、できることなら業者としては銀行から安い金利を引き出したい。でもそこまでの見込みがないから借りることができない、だからクラウドファンディングで調達しているのです。

リスクはお客さんに負担させて、自社は堅実に手数料収入で利益を積み重ねるように、そしてお客さんにはそれと気づかれないように、言葉を濁して濁して、できるだけ長生きできるように嘘はつかないように、頑張っていきましょう。

というわけで、お客さん側には言えないワンルームマンション投資の売り方でした。これを絶対に表には出さないように、あくまでお客様目線という態度でセールスに望んでくださいね。

それではまた、FP~(@^^)/~~~

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