iDeCo完全に理解した!
おはようございます。🐤
iDeCoを完全に理解しました。
これから始めようと思っている方、すでに始めている方はぜひ見ていってください。iDeCoの制度は複雑で、どれくらいお得になるかは受け取り方によるところが大きいので、始め方よりも「受け取り方」を考えることがとても大事です。
受け取り方に影響を与えるのは退職金と年金の額です。たくさんもらえるサラリーマンの方は特に、何も考えないでいると受け取り時にまとまった額を課税されますので、よく考えてください。
特に次のような方は必見ですので、ぜひ最後までご覧ください。
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「小規模企業共済等なんとか」を年末調整で申告し、控除されることで満足しているサラリーマン⇒受け取り時に課税されること理解していますか?
どうやって受け取るか考えていない人⇒受け取り方が一番大事です
iDeCoの概要
iDeCoは、次の頭文字をとっています。
個人の(individual)
確定型の(Defined)
拠出(Contribution)
日本語では「個人型確定拠出年金」といいます。これに対して「確定給付型(DB)」というのもあるのですが、これは企業が運用し「将来受け取ることができる額を約束している」ので、企業がすごいリスクを負わないといけません。自分のことは自分でやろうよというのがiDeCoの考え方の根本にあります。
国民年金や厚生年金などの公的年金だけでは将来の収入が不足する、という考えから自分で積み立てて自分で運用先を決めて、老後に備えることを目標に政府が広めようとしている制度です。趣旨から考えると特に厚生年金のない自営業やフリーランスの人向けに勧めたい制度かもしれません。
iDeCoのメリット
iDeCoのメリットは税金が安くなることです。下の表のように「拠出時=積み立て時」には、所得から積立金の全額を控除することができるので所得税の軽減になり、運用時には非課税となり、給付時には退職所得控除もしくは年金控除を使うことができます。
NISAとよく比較されますが、NISAは利益に対して非課税というごく単純でわかりやすい制度です。それに対してiDeCoは、①まずNISAと同じで非課税、②それに加えて積み立て金の全額を所得控除に使うことができ、③その代わり給付時には受け取り額の全体に対して課税されるのですが、退職所得や年金の税制優遇を使えるので普通は②よりも小さく、②-③の差だけNISAよりもお得になります。
つまり、基本的にはiDeCoはNISAよりも強いのです。
でも複雑ですよね。わかりにくいですよね。難しいですよね。
国(厚生労働省)がiDeCoを勧める理由は次のようなものだと私は推測しています。
公的年金の不足の解消
証券市場の活性化
タンス預金の削減による経済の活性化
ちょっと文字だけではわかりにくいように思うので、私が一番わかりやすいと思うSBI証券のイラストを見てください。今日はiDeCoのメリットについてこの3つの順番で説明していきます。
1) 積立時に税金が軽減できる
iDeCoに積み立てるとき、その積立額の全額が「小規模企業共済等控除」という所得控除が適用されます。例えば給与所得500万円の私が毎月1万円、年12万円積み立てたとすると所得税率20%、住民税率10%でざっくり3.6万円(12万円×30%)が軽減されます。
これが「節税」だと言われている主な理由だと思うのですが、退職金と厚生年金をそこそこもらえるサラリーマンの場合は退職時に課税をされることがあります。iDeCoの制度は「課税を先送りしている」と理解した方がうまく使うことができます。後で詳しく説明します。
2) 運用収益が非課税になる
毎年の分配金には20%の税金がかかり、源泉徴収されたあと再投資されるのが普通ですが、iDeCoは非課税なので税金がかからず100%再投資されます。
という説明がされていることが多いと思いますが、これも退職金と厚生年金をけっこうもらえるサラリーマンの場合は結局課税の対象になってきます。こちらも後で詳しく説明します。
3) 受取時にも控除が使えてお得
これが一番の誤解というかサラリーマンにはもっと知っておいてもらわないといけない、今回のブログのポイントの部分であります。
1の積み立て時に先送りした課税がここで一気にかかってきます。ただ課税所得も1/2だし、税率も分離課税だから普通は積み立て時よりも低いし、基本的には損まではしないはずです。お得度を増やすか減らすかは受け取り方次第です。
iDeCoのメリットみたいに言ってる一時金と年金の2つの「控除」ですが、これらの控除はべつにiDeCoだけが使えるわけではなく、一時金で受け取る場合は一つの退職所得控除枠を退職金と共用し、年金として受け取る場合は一つの年金控除枠を公的年金と共用します。
サラリーマンで一定の額の退職金が出る人は、この枠を退職金で使いきってしまうのでiDeCo分の控除はありません。
ただし退職所得の決まりをあてはめることができるので、収入の額を1/2にしたものを所得とすることができます。積み立て時は満額を総合課税の税率で控除されて、受け取り時は1/2でしかも分離課税だから税率も上がりにくいため、普通はお得になるはずです。
年金形式の給付でも同じです。一定の額の年金がもらえるサラリーマンは年金等控除が厚生年金の給付で埋まってしまうので、iDeCoには控除が使えません。
サラリーマンで一定の額の退職金と厚生年金がもらえる人は、受け取り時に課税されます。ただし普通は積み立て時の節税額を超えることはないはずです。
サラリーマンはiDeCoの受け取り時に課税される
メリット1について、積み立て時にどれくらいの軽減効果があるかと言いますと、積み立てた金額にかかるはずだった所得税分です。
これからiDeCoを始めるモデルケースを考えてみましょう。
【ケース1:新入社員Aさん】
す23才、独身、社会人2年目
年収:400万円(所得171万円)
所得税率5%+住民税率10%=15%
iDeCo掛金:毎月2万円=年24万円
AさんはYouTubeのマネーリテラシー動画を見てiDeCoに興味をもちました。よくわからないけど少しから始めようということで、おこづかいから頑張って2万円を毎月積み立てています。始めてみて、手数料の高さに驚き、1年で24万円貯まっているはずなのに手数料をひくと23万数千円しか残高がないことに少しショックを受けながらも、「長期投資」「将来のため」と頑張って続けるつもりです。
さてAさんのケースでは生涯にわたってどれくらいの税金の軽減につながるのでしょうか。まず現在の減税効果は所得税と住民税あわせて24万円の15%=3.6万円です。将来2%の割合で毎年昇給したとして60才までに207.6万円の税金の軽減が確実に受けられます。
積み立てた総額は912万円、年2%で複利運用できたとして利益(448万円)を含めた総額は1360万円になっています。非課税だからこんなに増えました。嬉しいですね。そして手数料は初回2,829円、そして毎月積み立てとして171円×12カ月×37年=75,924円(手数料は金融機関によって差があります。銀行よりもネット証券の方が安いです)ざっと10万円としておきます。
手数料をひいてiDeCoの収入は1350万円となります。
さて37年後には退職のことを考えます。退職金は2000万円、仮に60才で定年退職するとして今の税制のままだとしたら勤続年数37年=800+17*70=1990万円が退職所得控除になります。
退職金だけなら2000万円-1990万円で、退職所得はさらにそれの1/2なのでたったの5万円となります。つまり、退職控除は退職金でちょうど使い果たして、iDeCoには控除がほとんど適用されない計算になります。
ポイントはここです! 他の個人年金とか投資信託の積立とかは、利益の部分(受取額−支払額)に対して税金がかかるのですが、iDeCoだけは違っていて、受取額全体にかかってくるのです。
退職金2000万円+iDeCo1350万円=3350万円から控除の1990万円をひいて1360万円、この1/2である680万円に課税されます。(このうち退職金の分が5万円、iDeCoの分が675万円です)
(※2024年1月7日、住民税の足し忘れがあったので修正しました)
iDeCoの受け取りにかかる税金は
・675万円×20%−42.75万円=92.25万円(所得税)
・675万円×10%=67.5万円(住民税)
・合計:159.75万円
さっき軽減額はいくらでしたっけ、207.6万円でしたよね。207万円の軽減のために受け取り時に159万円支払います。確実に節税できているのですが、それでも受け取り時に159万円を支払うのは辛いと感じてしまうかもしれません。
積み立て時の税率と受け取り時の税率
Aさんのモデルケースの場合、積み立て時に207.6万円の税金が軽減されました。積立総額は912万円なので、平均で22.8%(所得税+住民税)、これが本来払うはずだった税金を軽減できた率ということができます。
対して受け取り時は1350万円の受け取りに対して、退職所得控除が使えなかった場合でも1/2にしていい決まりを使って675万円に対して課税されます。所得税と住民税の合計で159万円。積立額912万円に対する比は17.4%(所得税)になります。
この差 22.8%-17.4%=5.4%
額にすると912×5.4%=約49万円が「NISAよりもお得になる」のです。
ちょっとNISAと比較してみましょう、仮に毎月2万円、同じ条件でNISAに積み立てしていたとすると、37年後に1360万円になっています(手数料分10万円はNISAが得)、利益は1360-912=448万円です。
iDeCoは積み立て時に207.6万円の減税+1350万円の受け取り-912万円の支出-159.75万円の納税=485.85万円の利益です。
このとおり、控除が利用できなかったとしてもiDeCoはNISAよりもお得になりました。受け取り時に課税されるからなんだか損したような騙されたような気になってしまいますが、冷静に計算するとNISAよりもお得なのです。
iDeCoの方が損をする場合
と言っても、NISAに比べてiDeCoの方が損をする場合もあります。
積み立て時の税率が低い
受け取り時の税率が高い
普通のサラリーマンではあまり考えにくいかもしれません。
例えば、すごく低賃金でずっと働き続けているのに退職金がたくさんもらえたり、iDeCoの運用成績が良すぎて受け取り額が大きくなりすぎると税率は逆転する場合があります。
具体的には、所得税率5%(年収400万円くらい)で減税を受け続けて、退職所得が390万円以上(所得税率10%)になるとるとその逆転現象は起こります。
それでも目指したいのは非課税
数時間前の記事は盛大に計算間違いをしていました。退職所得は分離課税なので、税金がすごく安くてすむのです。iDeCoはとても優遇されていて有利な制度です。(ごめんなさい)
ですが、それでも目指したいのは非課税ですよね。そのためのテクニックがあるのです、それが退職所得控除の5年ルール。
5年ルール
5年ルール:iDeCoを一時金で受け取ってから、5年以上あけて会社の退職金を受け取ることで、それぞれの控除を最大限使うことができます。
順番を逆にして、先に退職金を受けとってしまうと、19年以上あけないと最大限の控除は受け取ることができません。
いくつか例をあげてみたいと思います。
【共通の条件】
・会社員
・勤続年数38年
・退職金2000万円
・iDeCoの加入期間10年
・iDeCoの一時金500万円
【例1:退職金とiDeCoを同時に受け取る】
一般的には退職金と同時にiDeCoも受け取る人が多いと思います。その場合、退職金とiDeCoの一時金が合算され、合計2500万円、退職所得控除は38年分で2060万円となります。
課税退職所得は、(2500−2060)✕1/2=220万円、それに対する税額は、220✕10%−9.75=12.25万円になります。
【例2:iDeCoを先に受け取り、5年後に退職金を受け取る】
次に、5年ルールを使った最大限有利な方法です。iDeCoの受取が早くても60歳からなので、必然的に65歳まで働かなければならないことと、そもそも会社が退職金の支払いを65歳にしてくれるのかという問題がありますが、それさえ解決できれば最強の方法です。
何が最強かと言うと、重複期間があっても退職所得控除がそれぞれフルで2回使えます。
まずiDeCo受取り時には、iDeCo加入期間の10年間に対する控除400万円が使えます(40万円✕10年)。
次に会社の退職金も38年間に対する控除2060万円が使えるので、退職金の税金はゼロになります。
つまり、支払う税金は(500−400)✕1/2✕5%の2.5万円のみです。
【例3:退職金を先に受け取り、5年後にiDeCoを受け取る】
最後に、順序が逆の例です。
60歳で退職しますが、iDeCoは継続し、5年後に受け取るとします。
前の例と似たようなことでも、順序が逆だと5年ルールは使えません。なので、重複期間はカウントはされません。
まず、会社の退職金の38年間に対する控除2060万円が使えるので、退職金の税金はゼロになります。
次にiDeCoの控除は、10年間の加入期間のうち5年間は重複している(退職金のときに使っている)ので、10年分の控除は受けられません。
ただし、この場合、退職金の控除額を使い切れていなくて、60万円分の残りがあります。その分が考慮されるので、6年✕40=240万円がiDeCoの受け取りから控除されます。
結果、税額は260✕1/2✕5%=6.5万円となります。
【例1-2:1年だけずらす】
「例1:同時に受け取る」の亜種として、1年だけずらすというのもあります。退職所得は分離課税ですが、超過累進税率がかかるので、複数年に分割するほうがオトクなはずという考えです。
最初は退職金、これは非課税です。控除枠が60万円余るので、翌年のiDeCoに1年分が加算されます。
iDeCoは期間2年分の控除となり、500−2年✕40=420万円、これの1/2で210万円が課税所得、ほんの少しだけ例1(220万円)よりも節約になりました。
iDeCoは本当に個別の事情で最適解が変わる、難しい制度だと思います。
年金控除の活用
あと、今思いつきましたが、60才で定年して収入がなくなり、70才まで年金の支給を繰り下げて10年間をほぼ無収入にすると良さそうです。
iDeCoの支給は10年の年金形式とすることができますから、その間非課税で運用をしながら1360万円を取り崩していけば良さそうです。
60才時点での1360万円を2%で複利運用しながら10年間一定額ずつ取り崩すためには、えーと…年金現価…ではなくて資本回収係数を使います。
1360万円×0.111=1,509,600円を毎年受け取ることができます。
その場合、65才未満の受け取りは年金控除が低くて、この場合85万円しか控除が受けられないので、他に収入がないとして基礎控除を合わせても年間133万円までしか控除になりません。
つまり65才までは毎年150−133=17万円に対して5%課税され、8,500円×5年=42,500円が税金でとられます。
65才以降は110+48=158万円が限度なので、満額控除され非課税になります。
その他いろいろなシミュレーションが大河内先生の本に書いています。とても参考になるのでおすすめです。
iDeCoの意味
退職金がそこそこあって厚生年金もけっこうもらえるサラリーマンはiDeCoの退職所得控除がないのですが、退職所得が分離課税であることと所得が1/2に減らすことができるので、それでも有利な制度だということができます。
ただ、受け取り時に非課税だと思っていたらけっこうまとまった額が税金としてとられるのでショックは大きいかもしれません。積み立て時に先延ばしにしていた分の一部を支払うだけなのですが、やっぱりショックです。だから受け取りの方法はよく考えた方がよいです。その考えにあたっては「iDeCoは今支払う必要のある税金を将来に先送りする制度」という考えにたった方がわかりやすいです。
節税じゃなくて先送りなら、それはそれで戦略のたてかたもあって、今払うべき税金の控除をより大きく、将来払う税金をどうすれば安くできるかを考えれば良いのです。
まとめ
とにかくiDeCoでなんでも非課税、と考えていたら課税されてびっくりとなるかもしれません。が、iDeCoはやはりお得な制度です。たいていの場合はNISAよりもだいぶお得なので、サラリーマンは使わないと損です。
あと、近い将来必ず退職金周りとかiDeCoまわりに改正があると思うので(厚生労働省、国税庁とも)それにも注目です。
それではまた、FP~(@^^)/~~~
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