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プライド

※今回はおむつやトイレの話が主ですので、ご了承の上お読みください。


次男がおむつを卒業したのは、4歳のときだったか。
グループ療育で、同い年の他の子たちが次々と布パンツに移行しているのを見て多少焦りはあったものの、なんとか4歳児クラスのうちにおむつマンからパンツマンに昇格。

ときどき失敗はあるものの、4歳の秋からは紙おむつを拒否するほどになっていた。

紙おむつ卒業から数か月たった3月11日。
今までに誰も経験したことがないような大きな地震があった。
家じゅうが音を立てて揺れはじめてすぐに、電気が消えた。
長時間にわたる停電。
懐中電灯とロウソクをかき集めて、その晩は家族そろって居間で寝た。

トイレに行くときは懐中電灯を一つ持って明かりにした。

次男は懐中電灯の明かりでトイレに入ることを嫌がった。
薄暗くて怖かったからだろう。
それなら…と、まだ捨てずにとってあったおやすみ用紙おむつを穿かせようとした。
「イヤ!」
布のパンツから紙おむつに穿きかえることを、次男は拒否した。

次男にしたら、「ボクはもうおむつ卒業したんだ!そんなもの穿かない!」という気持ちだったのだろう。

次男の驚異的な膀胱のおかげで(?)、その日は朝までトイレに行くことなく、おねしょもしないで済んだ。

考えてみれば、ガスは使えたものの断水も始まったので当日の夜はろくに食べず、また余計な水分も摂らなかったので、次男が一晩トイレに行かなくてもおかしいことではなかったのかもしれない。


おむつを卒業したものの、家や保育園など、決まった場所以外のトイレには入れなかった。入ろうとしなかった。
トイレの場所見知りのような状態だった。

家族旅行で東京ディズニーランドに行ったときは、途中のサービスエリアのトイレに入ることができず、空き袋にティッシュペーパーを詰めて作った簡易トイレに用を足した。
ホテルの部屋では便器に用を足すことができず、便器の前で即席簡易トイレに用を足した。

次男を連れてどこかに行くときは、100円ショップで簡易トイレを買い込んで用意してから出かけた。
もちろん、そこのトイレに誘ってみてダメだったら使う想定で。

特別支援学校の小学部に入学したときも、初めのうちは学校のトイレに入れなかった。
入学して1週間は午前で下校だったので、校内のトイレに入らずに済んだのだが、給食が始まり学校で過ごす時間が長くなるとそうもいかない。
給食開始後、初めの3日ぐらいは学校のトイレに行かず我慢していて、迎えに行くと自分で車の中で簡易トイレ(常備していた)を取り出して、そこにおしっこをしていた。

ようやく学校のトイレで用を足せたときは、担任の先生と一緒に喜び合った。


特別支援学校には、様々な理由でおむつを使用している児童・生徒もいる。
次男はそれを見たせいなのか、一緒に買い物に行くと紙おむつコーナーの前で興味深げに商品を見ていることが何度もあった。
わざと「次男君もおむつ穿く?」と聞くと、「イラナイ」と言ってその場を離れるのだが。


今回の入院で、一時的に点滴等で自由にトイレに行くことができなくなり、やむを得ずおむつを使うことになった。
次男からしたら、「ボクはずっと前におむつ卒業したのに、なんでまたおむつしなきゃいけないの?」という思いだったろう。

拘束の必要もなくなりトイレに自由に行けるようになって、失敗が何度かあったもののパンツに移行したら、おむつをするのを嫌がるようになったそうだ。
前回の面会の時に表情がイキイキしていたのは、そういう事情もあったのかもしれない。

おむつを使わずパンツを穿くこと。
それは次男のプライドなのかもしれない。

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