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華Doll『THINK OF ME:CHOOSE』感想

華Dollは『知的興奮型ドラマCDコンテンツ』で、表向きのカテゴリーとしてはアイドルものです。
なので、「アイドルもので面白そう」「キャラクターがカッコいい」「声優さんが好き」というところからこのコンテンツのMVやドラマを視聴し始める人は多いのではないかと思います。
私もそうだったので、まだ華Dollの世界に足を踏み入れていない人には、「今見えているもの」を大切にしてほしいです。
(最新のCDドラマ以外は、YouTubeやサブスクで無料で視聴できるので、興味のある方はぜひどうぞ)

ただ、彼らのドラマを追っていくうちに、このコンテンツが『SFディストピア作品』と銘打たれていることの意味を、やがて知っていくことになるでしょう。

※以下、2024年6月14日発売Louloudi ファイナルアルバム『THINK OF ME:CHOOSE』のネタバレを含みます。


今回、ファイナルアルバムの告知がされた時から、覚悟はしていたつもりでした。
そもそも、Louloudiが登場した当初から、みんなこのような『終焉』を予感していて、その退廃的な空気感から紡ぎ出される音楽と彼らの物語を愛してきたのだと思います。
そして、華Dollプロジェクトがこれまで何人も死者を出してきたことも、この3rdシーズンまでに明かされ、その死に様にまで言及されることもありました。

それでも、私はLoumielとして、彼らの未来に一筋の希望があると信じていたかったし、救われてほしかった。せめて、ヒトとして生き続けてほしかった。
その希望を今回のアルバムは、私の中で思い描いていた最悪のシナリオ以上の形で粉々にしてくれたと思っています。
死以上の絶望を、そこに見ました。

ミュージックアワードでLouloudiがダブル受賞することは、最近のシナリオの流れからしたら驚きでした。
昔の方が良かった、手の届くところに降りてきてほしくない、とファンの中で囁かれていたLouloudiのこれまでの行動が、思いがけず亜蝶さまの理想の形で結実したのかと思いました。そしてそれが彼にとっての最期のステージになることは、私にとって想定の範囲内でした。
亜蝶さまの足掻きが、ファンに酷評されて、報われないまま終わることが、私はずっと恐かった。
けれど、今回の『Bioagent』の劇中の展開は、それとは全然違うものでした。
ヒトとして藻掻き死にゆく姿すらも、美しい芸術として消費されてしまうこと。その絶望に加担する無邪気なファンの側に、気づけば自分も立っていたのだと痛感させられました。

私は鬨くんが最推しなので、亜蝶さまとルイさんは、このプロジェクトの裏側を知ったうえで自ら滅びの道を選んだのだから、このまま終わりまで突き進むとしても本望なのだろうと思っていました。
でも、彼らは結局、完璧なアイドルとしてステージの上で朽ちることを選びはしなかったし、自我をほとんど失ってしまった鬨くんも『完璧なアイドルとして生き続ける』ことではなく、『亜蝶さんとルイさんと3人でいる』ことを選びました。

彼らが本当に求めていたのは『完璧なアイドル』になることではなく、人として自分を認めてくれる存在や愛情、居場所で、それはどれだけ歪でときに酷く冷たくても、Louloudiとしての3人の絆の中にあったのだと思います。
人として自分たちを扱ってくれない世界の中に閉じ込められて、一番近くのかすかな温もりが最後に縋るものだったなら、私はそれを大切にしたい。

鬨くんもただの事情を知らないまま壊されてしまった被害者ではなく、亜蝶さまとルイさんが人として心を傾ける相手として最後まで傍にいられたなら、それは一種の救いではあるのかもしれません。
それでも私は、鬨くんが笑ったり泣いたり憤ったりしながら、スイーツに目をキラキラさせて喜ぶ姿をもう一度見たかったし、真実を知った陽汰や、あの夜に邂逅した薫と、この狂った世界から手を取りあって逃げてほしかったです。
幼いころから苦しみ続けた彼が、この世界でふつうの穏やかな幸せを手に入れられる未来の可能性が失われたことを、私は認めたくありません。


華Dollというコンテンツがファンをふるいにかける姿勢であることは、明確です。真実を知りたい者だけ、先に進め。
私はもちろんAnthosも大好きで、この先まで見届けたいです。夏のイベントもずっと楽しみにしてきました。
でも、私は、たとえAnthos全員が助かるシナリオがあるとしても、これまで数年間一緒に年を取ってきたLouloudiの3人が、もうこれ以上年を取らない現実を許したくないです。

Loumielとして3人を永遠に想い、これからもLouloudiの音楽とともに生きていきます。
せめてもの願いとして、彼らのたましいが安らかな眠りにつけますように。