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北海道の水素利用の取り組み

今、クリーンなエネルギー源として注目されているのが水素だ。水素発電で排出されるのは水だけであり、二酸化炭素などの温室効果ガスは発生しない。また水素は大量かつ長期で貯蔵でき、長距離輸送が可能だ。再生可能エネルギー(以下、再エネ)で発生した余剰電力は、本来なら使用されずに廃棄されてしまうが、水素に転換することで有効利用できる。2050年のカーボンニュートラル実現に向け、水素は欠かせない存在となっている。

水素ガスの世界市場


株式会社富士経済の調査[1]によると、2040年度の水素ガスの世界市場は53兆8297億円(2021年度の2.1倍)、水素関連(水素ガス、関連機器)の世界市場は90兆7080億円(2021年度の3.5倍)、水素ステーション(燃料電池自動車などに水素を供給するための拠点)の国内市場は1,756億円(2021年度の76.3倍)となる見込みだ。さらに、2023年6月に見直された水素基本戦略[2]で政府は、今後15年間で官民で15兆円を超える投資を行うとしている。

北海道の水素利用の取り組み


水素は水の電気分解や化石燃料(天然ガス、ナフサ等)の改質から得ることができるが、いずれの場合も電力が必要である。環境負荷軽減のためには、水素を取り出すエネルギーも再エネであることが望ましい。北海道は再エネポテンシャルが高く、その有意性を活かした水素の利用が進んでいる。ここでは、エア・ウォーター株式会社が代表事業者となっている「移動式水素ステーション」と「しかおい水素ファーム」を紹介する。

移動式水素ステーション

画像引用:エア・ウォーター株式会社
水素エネルギー社会の実現に向けて 移動式水素ステーションの製作・運営


水素ステーションは、燃料電池自動車に水素を充填する施設で、ガソリン車で言うガソリンスタンドに該当する。札幌市と室蘭市の2カ所にある水素ステーションは移動可能で、1回あたり約3分で充電可能だ。ガソリンを入れる際にかかる時間とほとんど変わらない。

しかおい水素ファーム


帯広市・鹿追町にあるしかおい水素ファームでは、家畜ふん尿のメタン発酵により生成されたバイオガスから水素の供給を行っている。乳牛1頭が1年間に出すふん尿から製造する水素で燃料電池自動車が走れる距離は、自家用車の平均的な年間走行距離約10,000kmの燃料に相当する。乳牛の飼育頭数が全国の約6割を占める北海道では、家畜ふん尿が水素エネルギー源をして活躍する大きなポテンシャルがある。

他にも、小水力や風力による電力を用いた水素の製造や、水素の配送システムの事業など、北海道で水素利用に向けた動きが活発化している。

参考
[1]file.html (fuji-keizai.co.jp)
[2] 20230606_3.pdf (meti.go.jp)
[3] suisovisionkaiteiban.pdf (hokkaido.lg.jp)
[4] 次世代エネルギー「水素」、そもそもどうやってつくる?|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)
[5] index-89.pdf (maff.go.jp)
[6]水素エネルギー社会の実現に向けて移動式水素ステーションの製作・運営 | Meet with AW! | エア・ウォーター株式会社 (awi.co.jp)

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