高濱虚子五句集を読む⑤
第五句集「七百五十句」は、昭和26年(1951)~昭和34年(1959)に発表された句をまとめた句集。虚子の没後に長男高濱年尾と次女星野立子によって選集されています。虚子本人による序文はなく、今までの句集同様、句の書かれた月日と読まれた場所などと共に編まれています。
感銘をうけた句を、以下に挙げます。
この句集は、虚子本人が選をしていないので、今までの句集とは毛色は異なるかなと思ったのですが、高濱年尾と星野立子が、おそらく父ならこういう句を採るだろうという意向をかなり意識した選になっているなと感じました。いままでの4作に比べても、あまり差異がないなと。(それを選べる年尾と立子が凄いとも言う)
この句集には
といった代表作が収められています。
感名句のうち、
この最後の「にこ/\」という言葉の斡旋が冬の日向ぼこを想像させて、意外性がありました。
ののほほんとした句もここからつながっているのかなと、すこしかんじたり。
また、
については、避暑地にきたときのなんにもすることがない感じがとても良く現れていて、こちらも
を思わず思い出しました。こういうどうでもよいことを切り取る句は個人的には好きです(ただ似たようにやると、説明的になってしまうのでさじ加減が難しい。)
今回の「五句集を読む」を読みながら感じたのは、虚子は、俳句という形式を通して、写生や花鳥諷詠を念頭に置きながら、トップランナーとして、常に新しい表現を模索していたのではないかということでした。
ときには、うーんこれはどうなのという句も混ざることもたくさんあって、それもそういう記録として残していったのではないかと。全ての句において、註がついていることから、ひとつの歴史書のように読むこともできる句集になっていて、その時の虚子の心の揺れが残っているなと。
客観写生と花鳥諷詠を標榜しながら、その背景にあった歴史を無視することができなかった。むしろそういった背景に客観写生や花鳥諷詠が影響してくるのだ、ということも暗に示しているように思いました。
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