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動物の行動を深く理解する:飼育員の視点

今日は、動物の専門学校の学生たちが実習に来ている中で感じたことについてお話ししたいと思います。

〜以下文字起こし〜

学生の質問から見えてきたこと


最近、カピバラの歯の管理について学生から質問がありました。学校で飼育しているカピバラの歯が伸びているのに対し、うちのカピバラ(バナナちゃん)の歯があまり伸びていないことに気づいたようです。

この質問をきっかけに、学生たちと一緒にバナナちゃんの行動を観察することにしました。単に答えを教えるのではなく、自分たちで観察し、考える機会を設けたのです。

観察の重要性と考える力


観察を通じて、バナナちゃんが特定の場所の柵をよくかじっていることがわかりました。これは単なる偶然ではなく、そこには理由があります。例えば、お客さんと接する場所や餌がもらえる場所の柵が特に激しくかじられていました。

この現象から、動物の行動には必ず理由があることを学生たちに伝えようとしました。外に出たい欲求や餌が欲しいという気持ちが、この行動に現れているのです。

しかし、学生たちの反応を見ていると、そこまで深く考えられていない様子が見受けられました。木の質感や柔らかさなど、表面的な理由を挙げる傾向がありました。

環境を調べる学生と
それを観察するバナナちゃん


深い理解の必要性:かじり木の例


この観察を通じて、「かじり木」に対する一般的な認識の問題点も浮き彫りになりました。多くの飼育員や教科書では、動物の歯の管理のためにかじり木を与えることを推奨しています。しかし、これは動物の本来の行動を理解していないことの表れです。

例えば、カピバラは歯が伸びたからといって、意識的にかじり木を探して歯を削ろうとはしません。彼らは普段の食生活の中で自然と歯を削っているのです。実際、バナナちゃんに枝を与えると、歯を削るためではなく、食べ物として皮を食べていました。

このような観察と理解を通じて、学生たちの目に光が宿るのを見るのは非常に嬉しいものです。飼育の楽しさや奥深さを少しでも感じてもらえたのではないかと思います。

私たちが管理している飼育環境は、このような深い観察と理解を促すのに適していると感じています。「なぜ」という疑問を持ち、それを追求することの大切さを、これからも伝えていきたいと思っています。

最後に、皆さんへの宿題として、犬が強い相手に対してお腹を見せる行動の意味について考えてみてください。一般的には服従のサインと解釈されていますが、私はそれだけでは説明がつかないと感じています。もっと深い意味があるのではないでしょうか。

動物の行動を深く理解することは、飼育の醍醐味の一つです。これからも、なぜ?という疑問を大切にしながら、動物たちと向き合っていきたいと思います。

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