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わたしのなかにV6

コンサート終了を告げる、95Grooveのインストが流れ続ける画面には、固く結ばれた6人の手。解くことになるようで、なかなか消せなかった。2021年11月1日、結成から26回目の誕生日を迎えるこの日、V6は解散した。ラストを見届けようと気軽にチケットを買ったのだけど、予想しなかった感情がわたしの中に沸いてきて、ひとりティッシュ片手に泣いて歌って最後を惜しむことになった。いや、反則でしょ。なんだよV6兄さん、ちょーかっこいい。最後の最後にこんな大切なこと教えてくれるなんてずるいじゃないか。

アラフォーのわたしのそばにいたジャニーズと言えば、嵐、NEWS、そしてV6。どのグループも10代のころに結成されて、教室では休み時間の話題の中心だった。安室奈美恵が一斉を風靡していた1995年、V6はユーロビートに乗せた「MUSIC FOR THE PEOPLE」でデビュー。特にやんちゃなビジュアルの三宅健くんと森田剛くんの人気は凄まじく、同世代の女子を健派と剛派に二分した。「いっしー(わたしのニックネーム)はどっちなの??」とたびたび迫られても、当時は怪談トリオでJr.のタッキーの方が好きだったため、「うーん」とごまかしつつ「三宅くんかなー」と答えていた気がする。「学校へ行こう!」は欠かさず見てたな。

そんな程度でしかなかったわたしが、解散をきっかけに最初で最後のコンサートを覗いたら、突如として涙腺が決壊した。流れる「over」。頭に浮かんだ、ほこりっぽい教室、給食、友達と覗き込んだMyojo。思い出とともに「道に迷った時でも 逃げ出さない強さ 誇れる自分でいよう」の歌詞が飛び込んできた。

自分の中にこんなにもV6がいたなんて。いいね、いいね、いいね、いいね!がいくつあっても足りないぐらい、背中を押された気分になった。ああ、わたしは日々に疲れているのかなと思いつつ、そんな37歳の背中をふいに押してくれるのは、ジャニーズの曲の真骨頂だし、だから好きなのだ。

オープニングから数曲歌った後の冒頭のMCは、V6の人柄が滲み出ていて、こんなの好きにならないわけないだろ!!と逆ギレするレベルで感動した。いのっちが、子供連れできたファンに語りかけた言葉がもう、素晴らしくて、素晴らしくて。

「赤ちゃんが泣いても会場を出なくていいです。泣かせておきましょう。ファンのみなさんも優しいし、きっとあやしてくれる。それでもダメならステージに連れて来てください。僕たちが転がしますから」

グループの成長と大人の優しさを感じるこんなMC、最高すぎないか。V6はメンバーのうち4人が既婚者。結婚はアイドルの人気を削ぐと聞くけれど、経験や実感があるからこそ聞けた言葉なんだろうと思う。子育てに忙しいファンを思いやる姿を見られるなんて、こんな素晴らしいご褒美があるだろうか。いや、ない。感染対策をした、アクリル板がついたトロッコから、手をふり、ピストルを打つ姿も丁寧で、兄さんたちはさすがだった。

「TAKE ME HIGHER」に「MADE IN JAPAN」。ノリのいいダンスミュージックのイメージが強かったV6も、最近の曲はグルーヴが効いていてお洒落で、若いアイドルにない大人の魅力の詰まったグループになった。坂本くんはミュージカルに出たり、岡田くんは俳優として活動の幅を広げたり。愛嬌だけではない才能をそれぞれ発揮して、メンバーも言っていた通り、まだまだV6を続けられる可能性が彼らにはあった。それでもなのである。

コンサートの感動の一方で、「解散」という言葉はわたしを感傷的な気分にさせた。最近、ジャニーズはタレントの退所が相次いでいて、一推しのNEWSのメンバーはますます減っていたり、嵐がグループでの活動を休止していたり。とも生きてきたジャニーズグループが人生の岐路に立つ年齢に来ていて、いつ、自担がいなくなってもおかしくないからなのだと思う。

作家の宇佐見りんさんは「推し燃ゆ」の中で、推しは背骨であると表現していたけれど、支えにしていたものがすっと抜けると、ぐにゃぐにゃと気持ちが崩れる思いがするのはとてもよくわかる。とはいえ、自担たちの思いは何より大切だし、尊重したい。たかがアイドル、されどアイドル。思い出と幸せを運んできてくれたイケメンたちに感謝して、グループ活動の向こう側へ送り出す心の準備はしておかなきゃいけないなと思う今日この頃だ。

しんみりより、楽しそうに歌って、踊って。「僕らと出会ってくれてありがとう」。そんな言葉を残して、ステージから消えていったV6。いいえ、それはこちらの方です。にわかなわたしの心でさえ、撃ち抜いていったV6は最高にアイドル。

幸せをありがとう、お誕生日おめでとう。

解散しても心をつかむなんて、ずるいよ。

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