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ゴミはゴミだった話

1人目が赤ちゃんだった頃、おもちゃ作りにハマっていた。通っていた赤ちゃん向け支援センターに沢山の手作りおもちゃがあったからだ。少し検索すれば何でも出てくる時代、手作りおもちゃのまとめ記事はたくさんあった。その中で特に惹かれたのはペットボトルの蓋やアイスの棒などの廃材を使ったおもちゃ達だった。

まずはペットボトルの蓋を集めた。よく見ると可愛いデザインの物もある。次にドラッグストアのガチャガチャコーナーで回収箱にあった空のカプセルをいくつか貰ってきた。支援センターの保育士さんからR1の空ボトルが赤ちゃんが持つのにちょうどいいと聞くと、R1を買った。こうなってくると今まで捨てていた物が宝物に思えてきて廃材はどんどん増えていく。

ある日、娘がアンパンマンチョコを欲しがるようになった。チョコを食べさせるのに少し抵抗はあったが、持ってるだけでも満足しているようだったのでほとんど私が食べていた。アンパンマンチョコの棒にはアンパンマンのキャラクターの絵が掘ってある。
これは可愛い。
集めてペットボトルに入れるだけのおもちゃになりそうだ、と閃きアンパンマンチョコを買っては棒を溜めていた。5本ほど溜まったある日、娘はアンパンマンチョコを1人で開けて完食した。

あーあ。全部食べちゃった。

1人で開けれたことも衝撃だったし、チョコを完食させてしまったことに罪悪感が芽生えた。しかし食べてしまったものは仕方ない。娘は棒に掘ってあった絵を見て「ほらーまん。ほらーまん」と言っていた。

うんうん。ホラーマンだね……。

そう思いながら棒を受け取ろうと思った矢先、娘はトコトコと歩き台所のゴミ袋に棒をポイッと捨てた。

私がおもちゃにしようと熱心に集めていたアンパンマンチョコの棒は娘にとっては食べ終わったお菓子のゴミだったのだ。

その出来事から数ヶ月経たないうちに、娘はペットボトルやガチャガチャのカプセルで作ったマラカスのビニールテープを剥がし始め、ダンボールとペットボトルの蓋で作ったおもちゃを破壊した。赤ちゃんが持つのにちょうど良かったR1のペットボトルはベコベコになり、私は廃材で作ったおもちゃを与えることにいよいよ危険性を感じるようになって、手作りのおもちゃを全部捨てた。

で、あの時あっさりとアンパンマンチョコの棒を捨てた娘だが、今はお菓子の空き箱を「さいふにする」と言って、とても大事に持っている。最終的にはゴミになるが、ゴミになる前に一瞬だけ娘の宝物になるのだ。

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