サンシャイン水族館再訪(二十数年ぶり)
帰り道、
「私は歳を取ったのに、サンシャイン水族館は若返ってた」
と、呟いた私に夫が、
「若返ったんじゃない。あれは『若作り』だ」
と、言ってなぐさめてくれた。
空飛ぶペンギン
昔来たときは無かった演出「空飛ぶペンギン」。
これほど写真映えする展示も珍しい。しかもペンギンも楽しそう。Win-Win。
回遊するペリカン(交代制)
ペンギンばかり見ていたけど、ふと別の角度の頭上を見ると真っ白いおなかがゆったりと回遊中。
水路が狭いからなのか、一羽ずつ交代でパトロールしていた。
真下から見ると誰ですか感がすごい。
「あんまりピンク色じゃないね」と、夫に呟いたら「んー? そうか?」と、ピンと来てなさそうな返事が返ってきたのだけれど、家に帰ってよく考えたら私は「ペリカン」と「フラミンゴ」をごっちゃにしてた。
カワウソ親子
子供カワウソ三兄弟は小さいのにもりもり食べて元気いっぱいだった。
動きが激しすぎるうえにガラスが水垢だらけ、かつ映り込みが激しくて、まともに撮れた写真はほとんど無いのが残念だけど、そのぶん目と心に焼き付けた。
子供カワウソの可愛さに見とれていたら、
「カワウソに襲われたわけではないので心配いりません」
と書かれた展示物が視界に入った。
ウツボ
怖いイメージがあるウツボだけど、この館のウツボは特別に穏やかな性格なのか、それともイメージ自体が間違ってるのか、妙に親しみの湧く顔つきだった。
逆に、エイの顔は意外に怖かった。
いろんな顔の魚がいるなー、と、観察してたら、ガラス越しに今度は私が観察された。
かなりじっくり観察された。
ナポレオンフィッシュは「投げた棒を取ってくる」という遊びが出来るくらいには人間に懐くらしい。知的。
そういえば時々思うのだけど、「知的生命体」というのはどのくらい知的だとそのカテゴリに入るんだろう。未知の惑星を探査してたらナポレオンフィッシュがいた場合、それは知的生命体との遭遇になるんだろうか。
ミズダコの寝顔
寝てるのか、それとも起きててもこの顔なのか分からないけど、安らかだった。
以前読んだ本(たぶん『タコの心身問題』)に、生物学者がダイビングしていたらタコが手を繋いできて、そのタコのテリトリーを手を繋いだまましばらく歩いて案内してくれた、というエピソードが紹介されていた。
以来、タコと手を繋いで海底を歩くのが私の密かな夢。ダイビングする予定は無いけど。
オオグソクムシ
「ダイオウグソクムシだ!」
と、大喜びしていたらすかさず夫が「違う。これはオオグソクムシだ」と。夫は私よりはグソクムシに詳しい様子。
「ダイオウグソクムシ」って、「大王グソクムシ」なの? それとも「大・オオグソクムシなの?」と、夫に訊いてみると「分からん」との答え。
海月空感
ところでこれもあとから気づいたのだけれど、私達は2020年に新設されたと言うクラゲの大水槽ゾーンをどうやら丸ごとスルーしてしまったらしい。
二人いてどちらも気づかないとは。これが老いか…。
イカ、爬虫類、そのほか
人間は足先をピシッと揃えてるとすぐに疲れて辛くなるけど、イカはそこのところどうなんだろう。
あまり人に懐かない、クールなイメージがある爬虫類。
でも目を見てみると、すごく深い表情をしている。きっと人間とは共有する気があまり無いだけで、さまざまな気持ちを抱えて生きているんだろう。
ゾウギンザメの鼻の部分は「ロレンチーニ器官」と呼ぶそう。「ゾウギンザメ器官」じゃないんだ。
サンシャイン水族館公式ガイドブックによると、“サメやエイの交接器官を「クラスパー」と呼びます”。“グッピーやプラティなどの交接器官は「ゴノポディウム」とよばれています。”
人間のよりも遥かにかっこいい名前。
エモい
サンシャイン水族館は特にそうなのか、それともよその水族館もそうなってきてるのか、十年以上水族館に行けてなかったから知らないのだけれど、水槽と水の綺麗さに驚いた。
昔の水族館はガラスの透明度があまり高くなくて、隅っこには苔も生えてるのが普通で、照明も薄暗くて裏寂れた雰囲気だった気がする。
アクリルガラスの品質が上がったとか、濾過装置が改良されたとか、いろいろ進歩してるんだろうか。
コンデジでパシャッと撮っただけでエモい写真が量産されるのは嬉しいけど、こうなると勝手なもので、昔の薄暗かった水族館の侘び寂びが懐かしくなる。
おみやげ
規模的にはこぢんまりとした水族館だけど(クラゲをスルーしてしまったとは知りもせず)、水槽ごとに違った個性が打ち出されているから目も心も大忙しで、1時間半ほど見て回ったら大満足できた。
おみやげに公式ガイドブック(550円)と、ステンドグラス調の栞(715円)、オオグソクムシ入りタイカレー(734円)を購入して退館。
片岡球子
帰り道、サンシャイン水族館を「若作り」だと言った夫の言葉を裏付けるようなモニュメントに出会った。
片岡球子原画の陶片レリーフ。
説明書きを読むと、作られたのは1978年。私よりも年上。
この絵はでも、すごくかっこよく歳を重ねている。
私も「かっこよく」は無理でも、せめて「私らしく」歳を重ねていきたいものだと思った。