「ほとけの国の美術」@府中市美術館
初めての府中市美術館。
駅からちょっと歩くとのことで、方向音痴で地図音痴な私が辿り着けるか不安だったけれど、駅からずっと途切れること無く分かりやすい看板が誘導してくれた。
都立府中の森公園
緑に囲まれた、気持ちの良い美術館。
開館より少し早く着いてしまい、噴水のそばのベンチで本を読んで待機。ものすごく「初夏の休日」感が満喫できた。
展示は、すごいのひとこと。
十年以上前に静岡県立美術館で見た「アニマルワールド」という展示と、出品作品の作者はけっこうかぶってた。蘆雪、応挙、狩野栄信、谷文晁、白隠、若冲。
それに加えて仙厓義梵、曽我蕭白も。まさにオールスター。
たっぷり1時間かけてじっくり味わい尽くしました。
以下、特にグッと来た作品のひとくち感想。
蕭白
「赤」が強烈だった。
動画とか音声とかCGとかARとか、そんな小細工無しに脳に直接叩き付けてくるような鮮紅。
仙厓
頭を竹にすりっとこすりつけている虎の絵が、もう最高。どう見ても猫。
若冲
白い象の絵の足が蓮華を模してる、というのは、解説文を読まなくちゃ分からなかった。この美術館は解説文がすごく仕事してる。
おたけ大日
死んだあとで大日如来になったことで有名になったという(どういう状況?)「おたけ」という女性の生前と死後を描いた連続ものの浮世絵。
キュートでお茶目な猫の絵で有名な歌川国芳が描いただけあって、絶対これ国芳本人は大日如来の化身とか信じてないよな...と思ってしまうくらい、描き方が「敬虔」から遠く離れてふざけ抜いてる。おたけさんがふわふわ纏ってるのは天衣じゃなくて手ぬぐいだし、死後にはおたけさんが生前使っていた台所用品たちが如来となったおたけさんを囲んで拝んでる。
私が死んで如来になったらパイプユニッシュとかズビズバとか稲城市指定ごみ袋とかがよってたかって拝んでくれるんだろうな、と想像するとちょっと死後が楽しみになる。
円空仏
「行ってみてのお楽しみ」というのが好きで、出品作品について予習せずに出かけたので、まさか円空仏に出会えるとは知らなくて心の中で(うわーっ!)と叫んで大喜びしてしまった。円空仏は個人蔵とか秘仏になってることが多いし、見られるようになってるところもアクセスが良くなかったりするから、生で見るのはあきらめていた。
立体だから、見下ろすのと見上げるのとで表情が違う。
円空仏は「角度美人」が多いという話を本で読んだことがあるけど、ここにいた作品たちはどれも角度ごとに違った表情を持っていた。
あざと犬
蘆雪の犬は、静岡県立美術館で見たときも思ったけど、どうしようもなく可愛い。あざとい。あざと犬(あざといぬ)と名付けたい。
図録
図録は「よっぽどでなければ買わない」、というのが私のここ最近の基本方針。
昔は見境無く買ってしまっていたけれど、最近は値上がりが激しいこともあり、図録一冊買うお金で美術館いくつ回れるか...と考えると、モノより体験を優先したいと思うようになった。
先日トーハクで見た特別展「中尊寺金色堂」も、熟考の末に我慢した。(でも北畠顕家の願文のクリアファイル(800円)を買ってしまって結局散財)
今月は出光美術館にも行く予定だから、今日も図録は我慢しようと思っていた。
のに。
鑑賞後、併設カフェで優雅にコーヒーを飲むという予定は図録(2800円+税)を買ってびんぼうになってしまったため断念。飲まず食わずで帰宅しました。でも心は満腹。