見出し画像

【ひつじが週報】200111-200117

●200111

お店をやっていると日々様々な偶然が起こる。わかりやすいところで言うと、別々で来店した人たちが実は知り合い、とか。同時に沢山の来店があるわけでもない小さなお店でそれが起こること自体珍しいはずなのに、想像以上に発生していて福岡の街の狭さを度々実感する。

東京にある遊泳舎のMさんが遊びに来てくれた。

遊泳舎さんのことは一昨年ひつじがのオープン準備をしている時に知り、立ち上げの時期が近くて勝手に親近感を抱いていた。まだ世間的にも「ひつじがって何?」って頃(今もまだそう)から親切に販促用のポスターを送ってくださるなどの神対応で、夏に東京に行った際には仕事場まで見せて貰い、昨年末には新刊販売に伴うパネル展まで開催いただくなど個人としてもお店としても非常にお世話になっている大好きな出版社さん。

なのでわざわざ福岡に立ち寄っていただけるだけでも「はい優勝!」と脳内でパレードが開催されるほどには嬉しくて感慨深い。ひつじがノートにも全文引用したくなるような素敵な至言を残していただいた。ここには書かないが、ぜひ色んな方に読んでもらいたい。

あまり私的な感情を吐露しすぎるのもよくないので、冒頭に挙げた偶然の話に戻るが、来店後カウンター席に座ったMさんが一冊の漫画本を手に取られた。その本は京都にいる大学生の子からお勧めして貰って並べていたもので、なんとその時ちょうど偶然その漫画を勧めてくれた子が京都から来店していた。その子には少し前に遊泳舎さんの本をお勧めしていて、そのお礼と感想を直接聞いた矢先での遊泳舎さん来訪。まさかすぎる。普段はそれぞれ東京や京都にいて、福岡のひつじがにいること自体稀なのに、そのタイミングが重なるから事実は小説よりなんとやらは本当に起こりうる状況だと思う。

これに限らず遠方から誰かが来たときにはかなりの高確率でその人と話したら面白いだろうなと思っている人が偶然来店する。もしかしたら誰かが裏で仕込んでいるのかもしれないが、少なくとも自分で仕込んだ覚えはないのでその度に驚く。それもこれも来店してくれる方々のおかげで起こりうる偶然だし、日々有難さで頭が下がり猫背になる。

そんなこんなでこの日も猫背になりながら、Mさんと次は東京で飲みましょうと言って別れた。東京に行く理由がまた一つ増えた。

●200112

関東からこちらに転勤して働かれている方が、関東から遊びに来たご友人を連れてご来店。店主の体たらくもあり日頃は関東までリーチすることが滅多にないお店なので、そういう機会で少しずつ知ってもらえるのは有難い。遠方から遊びに来た人だけでなく、近くに住んでいてもすでに来たことのある方がご友人を連れて来てくれる機会も少なくなく、そうやって人づてで認知が広がっていく状況に甘えてはいけないと思うもののやっぱり嬉しい気持ちは隠せない。

●200113

書店で勤められている方と福岡の本屋事情について話す。話題の中心はやっぱりジュンク堂書店天神店のことで、福岡では最大級規模の書店が閉店した後の環境がどう変わるのかはまだ上手く想像できない。この一時閉店もあくまで天神ビックバン(再開発)の影響によるものだと思っていたけど、ジュンク堂京都店や名古屋店閉店のニュースを見ているとそう簡単に結論づけることもできない。当然楽観視もできない。大きな本屋のない田舎町で高校卒業まで過ごしたので、街に書店がないことが個人の教養育成や街の文化形成にどのぐらい良くない影響があるかは何と無く肌間でわかる。本を取り巻く環境が明るくない方に向かっている福岡で、本に関わるお店をやることの意味は今一度考えないとなとは思う。もちろん大型書店の代替機能にはなれないので、このお店で(あとは個人で)どこまでカバーできるか。あとは個人的に大型書店の代替機能をどこに見つけるか。悩ましい。

●200114

就活時期によく話を聞いていた大学四年生の子達が久々に揃って来店。就活が終わってもそれぞれ時折遊びに来てくれるけど、揃うとなんだか嬉しい。もうすぐ卒業なので大学生活最後に集めてひつじがで何かをしようと思う。という話から派生して日帰り旅行の計画を立てていた。あれもしたいこれもしたいと残り少ない学生生活を楽しもうとする彼ら彼女らに十年前の自分が重なってなんだか懐かしいきもちになる。当時はお世話になっていたお店で卒業祝いをしてもらって、そのお店にはその時に書いた色紙が今でも飾られている。今でもそこに行って色紙を眺めるたびに懐かしい気持ちになるので、福岡ひつじがでも模倣していきたい。素敵な取り組みは時代も地域も超えて広がっていけば良いと思う。

●200115

長崎福江から本処てるてる(古書店)の店主さんがふらっと遊びに来てくれた。ひつじがにもよく来てくれる作家さんがそこで個展を開催したのがきっかけでてるてるさんのことは知っていたけど、まさかお会いできるとは、しかもわざわざ足を運んでもらえるとは。旅程の中にひつじがを入れてもらえるのが有難いし、お店をやっててよかった。積読本消化会や読書会などの本に関するイベントについて話ができるのはやっぱり同業ならでは。あとは福江のお話(温泉が落雷で壊れているなど)を聞く。一緒に来られていた作家さんとの息のあった掛け合いもあって、あっという間に時間はすぎた。いつか福江にも行きたいし、行かなければなと思う。そこだけでなくいつか話してみたい人はたくさんいて、とはいえ有限なので隙を見て外にも出ないとなと手帳とにらめっこをする毎日。

●200116

よく来てくれる学生に連れられて、およそ一年前のオープン時からSNSを見ていてずっと気になっていたという大学生の子が初来店。ありがとうInstagram。めんどくさいとか言ってごめんね。来店されるずっと前からSNSで存在は知っていたと言ってくださる方は意外と多い。まだ来たことはないけどSNSで動向を確認してくれる方は他にもいるかもしれないし、いてほしい。あとお店は永遠にある訳ではないので、できれば存在している内に来てもらえたらという気持ちも正直ある。

オンライン上での発信ではお店の空気感を余すとこなく伝えている訳ではないし、現場のライブ感はどうやったって現場でしか味わえない。この週報もなんとなくの雰囲気は伝えつつも結局よくわからないぐらいの温度感で書いている。バーという空間の特性上あまり個人のことをベラベラ喋るのも野暮ったいし、とはいえ全部隠してしまうと伝わらないのでどこまで話そうかという葛藤は常にある。塩梅が難しい。ただ少なくともSNSを見てくださっている方もいるので、引き続き文章での発信も続けていこうと思っています。

●200117

凪営業。たまたま居合わせた方同士で意気投合することも少なくなく、この日も偶然一緒になった女性お二人が様々な話で盛り上がっていた。当然全てのジャンルに精通している訳ではないので、場合によっては話題に全くついていけなくなるときもある。深くなるに連れてただ聞くだけの状況になるが、そういう日も最近は増えて来て嬉しい。本に関するお店をやっているから本の話しかしてはいけないなんてことはない。話題は誰かが一方的に提示するものではなく、都度その場を構成している全員で自由に(でも全員が楽しめるように)決めるものだと思う。そこに店主とお客(そのほか年長者と年少者)などの立ち位置の差は生じない方がいいし、そのほうが会話は捗る。誰でも自由に話題を出せるような空間であってほしいし、それが場に関わる人たちの良心のおかげで少しずつ形になってきている。