小説「歌麿、雪月花に誓う」⑩
最終第10話、
「ところで、これまでの身に余る援助にお返しがしたい。絵師として一本立ちできたのも善野家の皆様のおかげですから」
歌麿が神妙な面持ちで切り出すと、
「何を言っている、歌麿。これからは歌麿と呼ばせてもらうよ。お返しされるいわれはねえんだ。せめてもの罪滅ぼしなんだから」
喜兵衛が言下に押し戻した。
「そんなわけにはいかねえ。それじゃ、気持ちがおさまらねえ」
「父の遺言だ。歌麿の面倒を見てやってくれとな」
2人は一頻りやり合うと押し黙り、座敷は静まり返ってし