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小説「歌麿、雪月花に誓う」

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江戸時代の浮世絵師・喜多川歌麿は栃木県栃木市と深い関りがあります。当時、 同市内の豪商・善野家を訪れ、大作「雪」「月」「花」の3部作を仕上げました。 3作とも畳2~3枚分と巨大で…
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#雪月花

小説「歌麿、雪月花に誓う」①

  第1話、  品川沖の雲間に満月がかかり、凪いだ波間には幾艘かの小舟が浮かぶ。長閑な遠…

小説「歌麿、雪月花に誓う」②

  第2話、  5年前に遡る。  どんよりとした雲が低く垂れこめ、陽光もぼんやり陰っている…

小説「歌麿、雪月花に誓う」⑤

  第5話、  いってえ、なんでえ。随分な人だかりじゃねえか。何かあったのかい、そんなに…

小説「歌麿、雪月花に誓う」⑥

  第6話、  歌麿は筆を止めては版下絵を睨み、時折、溜息をついている。隅田川を望む料亭…

小説「歌麿、雪月花に誓う」⑧

 第8話、 「でかした、歌麿。見事な挿絵だ」  蔦重は目を瞠った。  藤豆に絡みつく毛虫、…

小説「歌麿、雪月花に誓う」⑨

  第9話、 「どなたの墓をお探しかな」  歌麿が振り返ると、良恵和尚が柔和な笑顔で尋ねた…

小説「歌麿、雪月花に誓う」⑩

  最終第10話、 「ところで、これまでの身に余る援助にお返しがしたい。絵師として一本立ちできたのも善野家の皆様のおかげですから」  歌麿が神妙な面持ちで切り出すと、 「何を言っている、歌麿。これからは歌麿と呼ばせてもらうよ。お返しされるいわれはねえんだ。せめてもの罪滅ぼしなんだから」  喜兵衛が言下に押し戻した。 「そんなわけにはいかねえ。それじゃ、気持ちがおさまらねえ」 「父の遺言だ。歌麿の面倒を見てやってくれとな」  2人は一頻りやり合うと押し黙り、座敷は静まり返ってし