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さよなら僕の街

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バブルが膨らむのと一緒に、何もないところから成長していった僕と僕の街。陽気で幸福な80年代から陰鬱な90年代へと入っていく頃のお話。
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記事一覧

なくした記憶と友情の終わり

 人間の記憶というのは、とてもあやふやなものだ。僕は身をもってそれを知っている。だから、…

一森 奥
8か月前

九九のできない僕のともだち

 リョウ君は九九ができなかった。  休み時間に教室に残ったまま先生と一緒に九九を練習して…

一森 奥
8か月前

喘息の夜と大出血する老婆とスピリチュアル

 僕は幼い頃から喘息だった。  今とは違い、自前の吸入器などない。発作が起こるのは基本的…

一森 奥
9か月前
8

小六のプライド

 いっ君が遊んでくれなくなった。  最後に遊んでくれたのは、いっ君とその同級生十人くらい…

一森 奥
9か月前

いっ君

 いっ君は僕たちみんなの憧れだった。四つ上のお兄さん。格好良くて、中井貴一に似ていた気が…

一森 奥
9か月前
2

さっちゃん

 僕は女の子のパンツが好きだった。たぶんマチコ先生とかカバ丸のせいだろう。かぼちゃワイン…

一森 奥
9か月前
1

草むらの向こう側

 ある程度育ってから知ったことだが、そこには元々何も無かったらしい。そこ、つまり僕が育ったその場所一帯には、十年と少し前までまともな地面が無かった。僕の育った街は全体的に完全に埋立地だった。  埋め立てられて以降、少しずつ人が移ってきてはいたものの、空き地はまだまだ多く残っていた。当初何もなかっただろう空き地も、数年を経て草が一帯を覆い、低木が育っていた。  僕の住んでいたブロックの隣のブロックの端っこに、ブランコとシーソーしかない、小さくて人気のない公園があった。どこか湿っ

最初の記憶

 記憶にある初めての光景。僕の人生の初めの一歩。最も古いであろう記憶の一つは空き地の光景…

一森 奥
9か月前

真っ直ぐな道と平らな街

 僕が生まれたのは、昭和も残すところ十年くらいという頃だった。  どこまでも人間の活動場…

一森 奥
9か月前