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自分たちの強みを生かし、地域に還元する。【Interview vol.8】

【Interview vol.7】に続き、今回も豊ヶ丘・貝取団地商店街にある、コミュニティ拠点「健幸つながるひろば とよよん(愛称:とよよん)」とオンラインでつなぎました。

介護サービスについて相談ができる「居宅介護支援事業所」

とよよんに併設されている白楽荘居宅介護支援事業所とよがおかを運営しているのが、社会福祉法人楽友会です。
楽友会の在宅サービスセンター所⻑である齋藤 誠さん(以下、さ)と白楽荘居宅介護支援事業所とよがおか管理者である岡村 奈央子さん(以下、お)に、開設までの経緯やそこに至るまでの想いを伺いました。

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介護・福祉の専門を生かした拠点運営

ー居宅介護支援事業所に、親睦を図る拠点を加えたのは、どのような狙いがありましたか?

さ)多摩市内で高齢者福祉事業を行う社会福祉法人として、以前から多摩市の高齢化率が高いことは課題でした。
このお話をいただいた時、団地の高齢化率が50%を超えている状況も含めて、問題点が多くなっていることを感じました。

そんな中、「専門的に相談できる」「立ち話で相談できる」など、親しい関係性が作りたいということが、そもそもの狙いであり、ポイントでした。

お)私自身の立場では、居宅介護支援という要介護の方がご自宅で生活できるようにプランをつくることが一番のお仕事です。

ここに事業所があるからということで、近隣の方たちとのご縁があって、実際にケアプランをつくっている方も数名いらっしゃいます。

基本的には、利用者さんに来てもらうわけではなく、ケアマネジャーが訪問するのですが、その方々に話を聞くと「近くにいるだけで安心するわ」と話してくれます。
そういう意味では、少しずつですが、そんな関係を築けていけているのかなと感じますね。

ー拠点を新たに設けたいという想いは予てからあったのでしょうか?

さ)法人の設立から50数年経過して、地域との信頼関係は築いてきたと思っています。法人として、これまでお世話になってきた地域に、どこかで還元しなくちゃいけないという想いが根底にあり、考えたのが、「専門職が地域に入ること」でした。

私たちが専門としている分野で、地域に対して安心感や必要な情報をお伝えできるという点が、今回関わらせていただいた決め手になったんです。

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商店街の一店主として

ー地域の商店街の中に入ることで生活に馴染みやすくなると思いますが、その中で、意識した点や地域の変化などはございますか?

さ)「入りやすい、見やすい、明るい」この3つは内装でお願いしたことです。

また、看板にも想いを込めました。「楽友会」と見せることで、住民さんに、楽友会が運営している場所、専門職がいる場所だと「安心感」をもってもらえるようにしました。

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さ)商店街の方の中には、ここのスタッフのことを「一店主」のように思ってくれている方もいたり。少しずつ、商店街の皆さんにも受け入れていただけてきたのかなと感じています。

とよよんができたことで、昼間の商店街に人の声がすることを、商店会会長さんも喜んでくれているみたいです。

お)休憩がてら商店街を歩いていると、「とよよんの方ですよね?」と声をかけられた職員もいますよ。

オンラインあじさい祭りのVTRにでた職員で、地域の方にも少しずつ知っていただけているんだなと思います。

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ーとよよんが地域に周知される中、コミュニティ拠点を活かしたい点はございますか?

お)私の専門は介護になってくるので、まずは気軽に相談できること。
いつか、とよよんで介護をテーマにしたイベントや勉強会を開催するといった協力もあるのかなと考えています。

開設前の企画段階では、そんな話もあったんですが…コロナの影響もあってね。

ーそうだったんですね。やはり介護をテーマにした取り組みは難しいのでしょうか?

さ)このような状況ですが、先月「介護予防体操」というイベントを開催しました。
(現在は、コロナの状況を鑑みて楽友会主催イベントの開催は中止している)

居宅はケアマネジャーの事務所ですが、私たちが運営する特別養護老人ホームなどには、すべての専門職種スタッフが揃っています。

以前から、職員から地域の中の皆さんのお役に立ちたいというお声をいただいていて。もちろん、居宅のスタッフも、住民の方の生活の手助けをしたいという気持ちを持っています。

来年以降も、こうした取り組みを続けていけたらと考えているところです。

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コロナ禍で左右された半年を乗り越え

ー本来であれば4月オープンだった予定が、コロナの影響で9月の延期を余儀なくされましたよね。その当時のお気持ちをお聞かせください。

さ)当時の気持ちを忘れるくらい、左右された半年でしたね。設備や内装に必要な備品もそろわない状況でした。

お)居宅介護支援事業所は、とよよんがオープンするより先に引っ越してきたんです。その時、ようやくここで始まるんだと思ったことは覚えていますね。

私たちの仕事は待ったなしで進んでいたので、取り組むべきことには取り組んできたなと。

さ)居宅のみが運営している時、シャッターを開けようか閉めておこうか、と迷っていました。半分なら開けてもいいかなと、考えたこともありましたが、とよよんの方はまだオープンしていないので悩みましたね。

結局、シャッターは開けたまま貼り紙を掲示したり、リーフレットやチラシを配架したり、できる形での情報発信をしました。

ー前を通る住民の方の反応はあったんじゃないですか?

お)有難いことにたくさん。「何ができるの?」と聞かれましたね。

ただ、その頃は具体的なスケジュールも決まっていなかったので、「世代問わず、誰でも立ち寄れるコミュニティスペースができるんです。オープンは未定です。」と答えていました。

さ)オープンが決まったのも8月頃で、本当に直前でしたね。

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ー待ちに待った9月のオープンは、週3日のスタートでしたね。

さ)当初は週5日の予定だったのですが、コロナの影響で、予定していたサポーターさん、ボランティアさんが集まらなかったんです。社協さんとも相談して、スタッフも無理できないので、週3日に。

お)今はまだ、10時~15時が開館時間なんです。そうなると、この時間帯に来れるのは高齢者が中心で。

小学生たちの下校時間と合わないことも多く、開館時間を広げることで多くの世代にご利用いただけるんだろうなとは感じています。


挑戦した先にみえた未来

ー設立当初に意識されていたことはございますか?

さ)一番は、受け入れられたい。この地域に受け入れてほしい。こんな気持ちでした。

よそ者じゃないんだよということを伝えたかったんです。今もそうですが、この地域や皆さんの仲間に入れてくださいという想いで。

「拠点をつくったから来てね、自由に使ってね。」だけではないと、当時から思っていましたね。

お)ケアマネジャーの事務所と地域のコミュニティ拠点が併設されている場所は、数少ないと思います。だからこそ、気軽に相談できる関係をつくることが、私たちがここにいる意義だと考えています。

そんな中で、気軽に相談してねと言いつつも、利用者さんを訪問することも多いので、事務所にいる時間が限られてしまって。
また、個人情報も取り扱うため、扉も閉めておかないといけないんです。

少しでもここにいるアピールをするために、「ひとことボード」をつくりました。「今日は事務所にいるので声をかけてくださいね。」などの一言を書いて、ドアにかけています。

現在コミュニティ拠点を利用してくださる住民さんは、サポートスタッフを介してお声がけいただいてますが、この積み重ねで馴染んでいければと思っています。

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ー拠点の将来について、お2人の想いやお考えをお聞かせください。

さ)この地域を歩いている中で、普通に声をかけてほしいなと思っています。

白楽荘・とよよんの職員だと気付いて声をかけていただくことや、あの職員さんがいるなら相談してみようと思っていただけることが理想ですね。

ご近所同士で挨拶をする関係をつくっていく、そんな拠点にしていきたいと思っています。

お)商店街に拠点を出すことは初めての取り組みでチャレンジなことでした。現状は、まだシャッターも多い商店街ではありますが、店舗が新しく入ったり、通りの行き来が高齢者だけでなく幅広い世代になるよう、商店街活性化のひとつのきっかけになりたいですね。

そのためにもこの拠点を少しでも知っていただくことが大事だと思います。

コロナのことが心配で、拠点に入ることを控えている人もいると思います。個々にお声がけしつつ、積み重ねていくことで、住民さんとさらにつながっていきたいと思っています。

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専門を活かした地域とのかかわり方。

これまで信頼関係を築いてこられた社会福祉法人楽友会さんが選んだ、新たな地域への恩返しは、「安心感」と「日常生活での繋がり」を届けることだったのだと思いました。

商店街を元気に、幅広い世代が暮らすまちを目指して。

気軽に挨拶ができる、あの人だから相談してみるといった関係性が、このとよよんで広まっていくことを期待しています。



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