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【超電磁マシーン ボルテスV】

 日本では1977年6月~78年3月までテレビ朝日系で放映された、いわゆるロボットアニメ。Vは「ファイブ」と読む。

 5人の若者たちがそれぞれ搭乗するマシンが合体してできる巨大ロボット「ボルテスV」を駆り、宇宙人侵略者を迎え撃つというストーリーである。
 日本では特段の規制やバッシングを受けた作品ではないが、フィリピンで放映された際に社会問題化し放映中止となった。

 国内では押しも押されぬ名作というわけでもない日本のアニメや特撮が、海外で単発的に放映されて、意外なほど絶大な人気を博することがしばしばある。フランスでの『UFOロボ グレンダイザー』、ブラジルでの『巨獣特捜ジャスピオン』などだ。
『ボルテスV』もそういった作品のひとつであり、1978年からのフィリピン放映時に熱狂的に愛好され、最高視聴率は58%に達した。当時のフィリピンではアメリカ産以外アニメーションの放映がほとんどなく、アメリカ以外の文化に根差したアニメが珍しかったことも一因と考えられている。
 しかし「暴力的である」「勉強の妨げになる」といった批判があがり、果てはロボットが剣で戦う姿が日本の侍、ひいては軍国主義を美化するもので「日本企業による文化侵略の先兵」であるなどといった反日的議論にまで発展していき、抗議団体が結成されたという。
 最終話の間近になった時期に、当時のフィリピン大統領マルコス直々の放映中止命令が下り、フィリピン中の子供たちを落胆させることとなった。
 この一連の事件については『NHKスペシャル・ドキュメンタリーアジア発』の第1回で「フィリピン『日本製アニメに何を見たか』ボルテスファイブを知っていますか?」と題して特集されている。

 ただし、同様に「戦いモノ」であるはずの他の日本産アニメ、たとえば『SF西遊記スタージンガー』などは問題なく放映が続行されたという。
 またボルテスVの闘う姿が侍のようだという意見についても、必殺武器「天空剣」はそもそも日本刀ではなく西洋風両刃剣である。さらにボルテスVそのものの容姿も日本のファンからは「烏天狗を思わせる」と評されているほどで、たとえば類似作品『無敵超人ザンボット3』などに比べて侍に酷似しているとは言い難く、フィリピンの人々が烏天狗を知っておりこれを日本文化の侵略と見做すということも考えにくい。

『無敵超人ザンボット3』より

 『ボルテスV』のみが放映中止の憂き目をみた理由については、上記『NHKスペシャル』では配給企業関係者が「政界へのパイプがなかった」ことを挙げている。

 しかし岡田斗司夫は著書『オタク学入門』の中で別の考えを述べている。実は放映中止以降の物語では、敵の本拠である「ボアザン星」で革命が起こりその独裁者を倒すという展開になっている。これが独裁政権であったマルコス政権にとって不都合だったのではないかという説である。

 フィリピンでの『ボルテスV』の伝説的人気は衰えず、2021年に遂に実写映画化が決定されている。


参考リンク・資料:

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